【映画コラム】セットで見ると理解が深まる『記者たち 衝撃と畏怖の真実』と『バイス』

2019年4月6日 / 18:03

 そのイラク戦争を始めたジョージ・W・ブッシュ政権で副大統領を務め、陰で戦争を推し進めたとされるディック・チェイニーの若き日から、ホワイトハウスでの暗躍、家族の問題などを描いた『バイス』も公開中。

 アダム・マッケイ監督は前作『マネー・ショート 華麗なる大逆転』(15)でもリーマンショックの裏で金に固執する男たちの姿を軽妙に描いたが、本作も、一見社会派映画のようでありながら、ユーモアや遊び心が随所に見られ、エンターテインメント作品としても楽しめる。『記者たち~』が真面目な姿勢で問題に迫ったのとは対照的だ。

 そんな本作では、クリスチャン・ベールがチェイニーの20代から70代までを一人で演じ切った。映画ごとの彼の変身ぶりは有名だが、今回も体重を20キロ増量し、髪を抜き、1日5時間近くもメークに費やしたという。

 そのほか、ラムズフェルド国防長官役のスティーブ・カレル、ブッシュ大統領役のサム・ロックウェル、パウエル国務長官役のタイラー・ペリーらがそっくりさんぶりを披露する。『記者たち~』の無名の登場人物たちと比べれば、彼らは超有名人だから、この場合はビジュアルが映画に説得力を与えるのである。本作はアカデミー賞でメイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞している。

 こうした、映画を使った告発、あるいは自己浄化はアメリカ映画の長所であるし、多方面から描くことで事件に対する理解も深まるのだが、実在の登場人物たちがまだ存命中であるにもかかわらず、このような映画が製作されることには毎度驚かされる。日本ではこうはいかない。(田中雄二)

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