【映画コラム】『Michael/マイケル』から、マイケル・ジャクソンのMVを振り返る
2026年6月26日

 “キング・オブ・ポップ”と呼ばれた伝説のアーティスト、マイケル・ジャクソンの半生を描く映画『Michael/マイケル』が大ヒット公開中だ。命日に当たる6月25日には、声出しやコスプレ、応援グッズの持ち込みが可能な応援上映も開催された。

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 この映画の見どころの一つとなっているのが、音楽映像の歴史を変えたとも言われる「スリラー」(83)のミュージックビデオ(MV)製作風景である。

 当時のMVは新曲の宣伝素材という位置付けが強く、数分間の演奏シーンを中心とした映像が一般的だった。だがマイケルは「短編映画のような作品を作りたい」という構想を抱き、映画『狼男アメリカン』(81)を手掛けたジョン・ランディスを監督に起用する。

 撮影は通常のMV製作を大きく上回る規模で行われた。特殊メーク界の第一人者リック・ベーカーが狼男への変身シーンやゾンビたちの腐敗した皮膚を表現し、マイケル率いるゾンビ軍団の革新的なダンスは、振付師マイケル・ピータースとの綿密なリハーサルによって完成した。

 恐怖とユーモア、そして正確無比なダンスが融合した約14分の作品は、もはやMVではなく一本のショートフィルムだった。当初は黒人アーティスト主演の長尺作品ということもあり放送局側も扱いに慎重だったが、MTVでの放映をきっかけに世界的な社会現象となった。アルバム『スリラー』の売り上げは再び急上昇し、史上最高のセールスを記録したアルバムとして音楽史に名を刻んだ。

 こうして「スリラー」のMVは、「ミュージシャンが映像で物語を語る」という発想を業界に定着させ、その後のMV制作の予算や演出手法を大きく変えることになる。

 ところで、「スリラー」の全編には1950年代のB級怪奇映画への愛情もあふれている。『Michael/マイケル』の中でも、マイケル(ジャファー・ジャクソン)が母親(ニア・ロング)と一緒に『肉の蝋人形』(53)や『ハエ男の恐怖』(58)を見る場面が登場するが、いずれも主演は怪奇映画の帝王ビンセント・プライスだった。

 プライスといえば、その美声と大仰な語り口で「スリラー」のナレーションを担当した人物。なるほど、このシーンはそこにつながるわけだ。

 また『雨に唄えば』(52)のジーン・ケリーや、『モダン・タイムス』(36)のチャールズ・チャップリンも映る。マイケルは、ケリーからはダンスとミュージカルの表現を、チャップリンからは独特の歩き方や身体表現を学んだと言われる。マイケルの創造力の根底には、常に映画への深い愛情があったのだ。

 
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