【週末映画コラム】パワーゲームを描いたミステリーとしても十分に面白い『教皇選挙』/幽霊の一人称視点で描いた新感覚のホラー『プレゼンス 存在』

2025年3月14日 / 08:00

『教皇選挙』(3月20日公開)

(C)2024 Conclave Distribution, LLC.

 全世界に14億人以上の信徒がいるとされるキリスト教最大の教派・カトリック教会。その最高指導者で、バチカン市国の元首であるローマ教皇が亡くなり、新教皇を決める教皇選挙「コンクラーベ」に世界中から100人を超える候補者たちが集まり、システィーナ礼拝堂の閉ざされた扉の向こうで極秘の投票が始まる。

 票が割れる中、選挙を執り仕切ることになったローレンス枢機卿(レイフ・ファインズ)は、何とか無事に選挙が終わることを願うが、水面下でさまざまな陰謀や差別が飛び交い、次々に候補者たちのスキャンダルが浮かび上がる。その対応に苦慮するローレンス。果たして選挙の行方は…。

 ロバート・ハリスの小説を、『西部戦線異状なし』(22)のエドワード・ベルガー監督が映画化し、ローマ教皇選挙の舞台裏と内幕に迫ったミステリー。スタンリー・トゥッチ、ジョン・リスゴー、イザベラ・ロッセリーニらが脇を固める。

 政治家を描いた映画は数多くあるが、選挙そのものを描いた映画はそれほど多くはない。その上、教皇の選挙となるとなおさら珍しい。この知られざる“イベント”を通して、聖職者と呼ばれる人たち、引いては男たちの権力や地位への欲望の実態を明らかにするという趣向が斬新だ。

 加えて、システィーナ礼拝堂という、外界から閉ざされた巨大な密室内で繰り広げられる権謀術数、何度も行われる投票、投票を重ねるたびに目まぐるしく変わる情勢という、まさに“根比べ”ならぬ「コンクラーベ」の様子を描いたピーター・ストローハンの脚本が優れているのでパワーゲームを描いたミステリーとして見ても十分に面白い。

 しかもラストには皮肉などんでん返しまで用意されている。先に行われたアカデミー賞で脚色賞を受賞したのも納得の出来。同じくアカデミー賞で主演男優賞にノミネートされたファインズをはじめ、トゥッチ、リスゴー、そしてロッセリーニというベテラン俳優たちによる丁々発止の演技合戦も見応えがある。

 
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