「孝蔵のパートは『志ん生が落語を語っているかのように、ポップに』と監督たちと話し合いました」森山未來(美濃部孝蔵)【「いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~」インタビュー】

2019年4月28日 / 20:50

-志ん生となった後年の孝蔵を演じるビートたけしさんの印象は?

 撮影ではなかなか接点がありませんが、初めてご一緒させてもらったとき、とても気軽に接してくださいました。最初は物静かな印象でしたが、話し始めたら落語が大好きらしく、「古今亭の温かい雰囲気がいいよね」などと話をしてくれました。高座に上がる場面も見学させていただきましたが、客席のエキストラの方たちだけを撮る場合でも、そのためだけに小ばなしを披露するんです。自分は一切映らないのに。それを見て、これこそ本当の芸人だな…と。僕の場合、自分がやらなければいけない部分を覚えるのに精いっぱいで、とてもそんな余裕はありませんから。

-この作品には、演出家として森山さんの主演作「モテキ」(10)の大根仁監督が参加されています。その最初のきっかけは、森山さんが大根さんとチーフディレクターの井上剛さんを引き合わせたことだそうですが…。

 阪神淡路大震災を題材にした「未来は今 ~10years old, 14years after~」(09)や「その街のこども」(10)を作った井上さんと「モテキ」の大根さん、この2人との出会いは、僕の映像に関わる人生の中でとても大きなものです。いずれも一緒に作ったという手応えのある作品で、2人をとても信頼しています。さらに当時、大根さんがブログで井上さんの作品を高く評価していたので、「この2人なら合うはず」と思って、僕が「3人で食事をしましょう」と誘いました。

-それが年月を経て今回の出演につながったことになりますが、オファーを受けたときの感想は?

 ある日突然、井上さんと大根さんに呼び出されたんです。そこで、大根さんがNHKで大河ドラマのディレクターをやると聞いて驚き、さらにチーフディレクターは井上さんだと。実は、大河ドラマは撮影期間が長いことなどもあり、今まで避けてきたところがありました。でも今回は、この2人から「やらないか」と誘われた以上、断るわけにはいかないな…と。その時点で「やるしかない」と覚悟を決めました(笑)。

-ところで、志ん生といえば、見どころはやはり落語ですが…。

 先ほども言ったように、志ん生の映像は晩年のものが幾つか残っている程度で、戦前の評価は人によってまちまちです。「よかった」と言う人もいれば、「うまいけど、面白くない」と言う人もいる。真逆のカチッとした落語で同時代に人気を集めた桂文楽との対比で「文楽の落語は楷書、志ん生は草書」とも言われていました。でも本来、志ん生が憧れていたのは草書ではなく、文楽や師匠の円喬のような楷書の落語。そういうことまで考え合わせると、これからどう演じていけばいいのか、悩んでいるところです。今演じている若い頃は、下手でもまだ許されますが、年を経るごとにうまくなっていかなければいけませんから(笑)。

(取材・文/井上健一)

橘家円喬役の松尾スズキ(左)と美濃部孝蔵役の森山未來

  • 1
  • 2
 

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

倉悠貴 豊臣兄弟を支える軍師・黒田官兵衛を好演中「最後までしっかり演じ切りたい」【大河ドラマ「豊臣兄弟!」インタビュー】

ドラマ2026年9月13日

-本作では戦国時代の過酷さが描かれる一方で、ユーモアのあるシーンも多いですが、その辺もお二人が空気感を作っているのでしょうか。  その点は、お二人と一緒に現場を引っ張ってくださる蜂須賀正勝役の高橋努さんの存在も大きいです。この作品は、戦国時 … 続きを読む

安田章大、『髪結いの亭主』の初めての舞台化に「人間たちの退廃感がより響くのではないか」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2026年9月9日

 1990年に公開されたパトリス・ルコント監督の代表作『髪結いの亭主』が、安田章大主演で初めて舞台化される。原作となる映画は、一人の男の純粋で偏愛的な恋心を描いたフランス映画の傑作。今回の舞台化では、原作映画を大胆にアレンジし、物語を195 … 続きを読む

【映画コラム】8月の公開映画から

映画2026年9月4日

「ミニオンズ&モンスターズ」(8月7日公開)★★★ 映画のパロディーが満載  最強最悪のボスを求めて旅を続けるミニオンズがたどり着いたのは、1920年代のハリウッド。西部劇の撮影に乱入したことから映画スタジオに入り込み、人気スターと … 続きを読む

山口馬木也 柴田勝家の最期は「不思議な体験でした」【大河ドラマ「豊臣兄弟!」インタビュー】

ドラマ2026年8月30日

-劇中では、秀長と秀吉に対する「認めたくないが、認めざるを得ない」という勝家の複雑な心情が見事に表現されていました。秀吉役の池松壮亮さんとのお芝居はいかがでしたか。  仲野太賀さんと池松壮亮さんは、周囲に対する気配りを欠かさない素晴らしい俳 … 続きを読む

パク・ジョンミン「一人二役は想像以上に大変でした」韓国のヒットメーカーが「ガス人間」に続いて送り出すサスペンス・ミステリーで熱演『顔 -かお-』【インタビュー】

映画2026年8月28日

-劇中ではそんなご苦労を感じさせない名演でした。  実は、最初にオファーをいただいたのは、ドンファン役だけだったんです。でも、脚本が面白かったためについ欲が出てしまい、僕の方から「ぜひヨンギュもやらせてください!」とヨン監督にお願いしたんで … 続きを読む

page top