【インタビュー】『クリード 炎の宿敵』具志堅用高「僕もロッキーのようなトレーナーになりたい」

2019年5月6日 / 10:00

 「ロッキー」シリーズの最新作『クリード 炎の宿敵』のブルーレイ&DVDが5月10日に発売される。それを記念して、世界タイトルを13回防衛した不滅の王者で、現在はジムの会長として後進を指導する具志堅用高が、「ロッキー」シリーズと本作について熱く語った。

具志堅用高

-最初の『ロッキー』が製作されたのが1976年。くしくも同じ年に具志堅さんは世界チャンピオンになりました。何か縁を感じますが、当時映画は見ましたか。

 もちろん見ましたよ。それで、ロッキー(シルベスター・スタローン)がロードワークをするときに着ていたパーカーをまねして着てみたり、ロッキーみたいに牛乳に卵を入れてがーっと飲んだり、ゴーヤを入れてみたら苦かったのでハチミツを入れたりして(笑)。実は当時付き合い始めたばかりだった今の女房と、ジムの会長には内緒で、初めて一緒に見に行った映画が『ロッキー』だったの。それで「負けるときは俺もこういうふうになるよ」と言ったんです。それから、一生懸命に戦っている姿を通して、お客さんに感動を与えることができるということは、ロッキーから学んだところがあります。

-ロッキーやこの映画のクリード(マイケル・B・ジョーダン)は、何度もダウンし、敗れてはまた立ち上がるタイプのヘビー級のボクサー。具志堅さんは最後の試合が唯一の敗戦というジュニア(現ライト)・フライ級の選手でした。ボクサーとしてのタイプは異なりますが、ロッキーやクリードに共感するところはありますか。

 僕たちが現役の頃は、今と違って15ラウンド制で、僕にもノックアウトではなく判定で決まった苦しい試合が何回かありました。特に、目を切ったり、腫らしたりした試合はロッキーやクリードと同じような感じでした。そういう苦しい戦いもしてきたけれど、やっぱり最後まで諦めたらいけないと…。13、14、15ラウンドと戦った試合は、最後はもう勝ち負けは関係なくなって、自分が勝ったかどうかも分からなかった。だから、試合が終わって、自分の手が挙がって、お客さんの歓声と拍手が聞こえた瞬間は最高でした。だから僕は防衛を続けていけたんです。一度世界戦のリングを経験すると忘れられなくなります。
 この映画には、王座が空位になって、1年以内に試合をしろというところがあった。今は指名試合は1年に1回ぐらいだけど、僕らの頃は90日以内だったから、年に2、3回世界戦をしなければならなかったんです。間隔が短かった。それもあって、僕の場合は一度負けただけで、リターンマッチはしないで、後輩(渡嘉敷勝男)に後を託して引退しました。引退は女房と相談して決めました。ジムの会長には随分とめられたけど、「もう、やるだけやったから」と。

-ロッキーがクリードを育てたように、具志堅さんも今はジムの会長として後進に指導をしています。つまり選手とトレーナーの両方の立場からこの映画が見られるわけですが、そのあたりはいかがでしたか。

 僕はシルベスター・スタローンのロッキーが大好きで、現役の頃からこのシリーズを見てきたけど、今回はマネジャーとトレーナーの役。これがまたすごかった。クリードはもともと素質のある選手だし、練習をすればもっと強くなるという、ボクシングの技術的なアドバイスだけではなくて、家族のことなどボクシング以外のことも助言する。昔と違って今のボクサーには家族の存在が大きい。家族の協力がないとできないんです。周りのサポートがなければ、一人では何もできない。彼女もいなくちゃいけないしね(笑)。実は選手はこういうことの方が頭に入るんですよ。こうしたアドバイスの仕方は、今の時代には一番大事なことです。だから見ていてとても勉強になりました。僕もまねしたいと思った。でも、砂漠でのトレーニングなんかは僕にはまねができないけど(笑)。
 この映画のスタローンは大事なことを何げない感じで言ったりする。世界の一流トレーナーは選手の気持ちを読み取って冷静に対応するけど、日本人には、僕も含めてせっかちな人が多い。だから僕もあんなふうになりたい。大事な試合こそ冷静さが必要になるから。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

「今回は、極上のエンターテインメントを作ったつもりです」 『悪は存在しない』濱口竜介監督【インタビュー】

映画2024年4月19日

 長野県の自然豊かな高原を舞台に、代々つつましい生活を続けてきた住民の、レジャー施設の開発をめぐる生活の変化を描いた『悪は存在しない』が、4月26日から全国公開される。本作で第80回ベネチア国際映画祭のコンペティション部門で銀獅子賞に輝いた … 続きを読む

【週末映画コラム】気持ちのいい人情喜劇『あまろっく』/山田太一の小説をイギリス人監督が映画化『異人たち』

映画2024年4月19日

『あまろっく』(4月19日公開)  理不尽なリストラに遭い尼崎の実家に戻ってきた39歳の近松優子(江口のりこ)は、定職に就くことなくニートのような毎日を送っていた。  ある日、「人生に起こることはなんでも楽しまな」が信条の能天気な父・竜太郎 … 続きを読む

小関裕太&岡宮来夢、念願のロミオ役に「プレッシャーも力に変えて頑張りたい」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2024年4月19日

 上演の度に大きな話題を呼ぶミュージカル「ロミオ&ジュリエット」の3年ぶり6度目の上演が決定。5月16日に東京・新国立劇場 中劇場で幕を開ける。  本作は、2001年にフランスで生まれ、世界20カ国以上で600万人以上を動員したメガヒットミ … 続きを読む

「自由に映像を撮れることを楽しんでいる作品だと思います」 山本奈衣瑠『走れない人の走り方』【インタビュー】

映画2024年4月18日

 映画監督の小島桐子はロードムービーを撮りたいと思っているが、限られた予算や決まらないキャストなど、数々のトラブルに見舞われる。理想と現実がずれていく中で、彼女はある選択をする。台湾出身で日本に留学し、東京藝術大学大学院映像研究科で学んだ蘇 … 続きを読む

若手注目俳優の佐藤瑠雅&坂井翔、「どこにでもいる男の子たちの何気ない生活を描いた」“じれキュン”ラブストーリー「彼のいる生活」【インタビュー】

ドラマ2024年4月18日

 「仮面ライダーギーツ」の桜井景和/仮面ライダータイクーン役で注目された佐藤瑠雅と、ドラマ「ジャンヌの裁き」に出演し高い演技力が話題となった坂井翔がW主演するドラマ「彼のいる生活」がTOKYO MX、ABEMA、各配信サイトにて現在放送・配 … 続きを読む

Willfriends

page top