「森山未來さんは、一度か二度の稽古で話を覚えてしまいました」古今亭菊之丞(落語指導)【「いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~」インタビュー】

2019年3月31日 / 20:50

 大きな期待を背負って出場したストックホルムオリンピックで、途中棄権という結果に終わった金栗四三(中村勘九郎)。同じ頃、日本では落語家となった美濃部孝蔵(若き日の古今亭志ん生/森山未來)が、酔っ払ったまま初高座に上がり、大失敗をやらかすことに…。本作では、主人公・金栗四三と同時代を生きた落語家・古今亭志ん生(ビートたけし)が物語のナビゲートを務め、その若い頃の破天荒な生きざまも見どころとなっている。落語指導を担当するのは、志ん生の孫弟子に当たる古今亭菊之丞。孝蔵役の森山未來の印象なども含め、落語指導の舞台裏を語ってくれた。

落語指導の古今亭菊之丞

-第13回では、若き日の志ん生=孝蔵が初高座に上がる場面がありました。森山さん演じる孝蔵の印象はいかがでしょうか。

 見事だと思います。実は撮影に入る前、森山さんから「関西出身の僕に、後にたけしさんになるような役ができるでしょうか」と相談を受けたんです。そこで、浅草の小料理屋さんへ行き、一流の歌舞伎役者の方々と付き合いのあった芸者さんと話をすることにしました。そうやって、いろいろ聞いた上で出た結論が、「深く考えるのはやめよう」(笑)。というのも、あまり“江戸っ子”を意識し過ぎると、かえってそう見えないだろうと。だから、「自然にやりゃあ、いいのよ」という話になり、森山さんも「分かりました」と。「どう頑張っても、たけしさんにかなうわけはないので、僕はそのようにやります」とおっしゃって、今は見事に演じていらっしゃいます。

-志ん生が全体の物語をナビゲートすることを知ったときの感想は?

 古今亭の人間としては、うれしいことだと思いました。明治から昭和にかけて物語を俯瞰する役割に、(三遊亭)圓生でもなく、(桂)文楽でもなく、(林家)正蔵でもなく、志ん生という人を選んでくれた。そのことにまず、感謝の念が湧きました。

-落語指導を依頼されたときのお気持ちは?

 とてもうれしかったです。志ん生が亡くなったのは昭和48年ですが、私は昭和47年生まれなので、実際の志ん生を知りません。本当は、志ん生を知っている先輩がいっぱいいるんです。ただ、私の師匠の古今亭円菊は、志ん生の教えを受けてきた人。ですから、師匠を通して志ん生を見るという形で、私もそのDNAは受け継いでいるわけです。そんなわけで、お話を頂いたときは、ものすごく光栄で有り難いことだなと。

-落語指導というのは、具体的にどんなことをするのでしょうか。

 まず、宮藤(官九郎)さんが書かれた原稿を頂き、落語の間違いがあれば直します。それが台本として出来上がるわけですが、書かれている部分だけでは落語としては足りません。その前後の部分が必要になります。そこで、私が前後を含めて演じて見せて、スタッフの方がビデオに撮り、それを文章に起こしたものを役者さんが覚える。だから、役者さんは大変です。覚える量が増えるわけですから(笑)。

-それから稽古をつけるのでしょうか。

 そうですね。私がまずやって見せて、次に役者さんにやっていただき、その都度直していく…。本職の落語家と同じような稽古になります。ただ、役者さんに対しては、より丁寧に指導するようにしています。「こういう目線でやってください」、「こんなつもりでやってください」、「ここは一息でしゃべっちゃってください」という感じで。本職の落語家に対しては、あまりそういうことは言いませんから。あとは、現場に張り付いて、高座でしゃべっているところを見て、間違っていればその場で直す…という感じです。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

【映画コラム】Netflix、悲願の作品賞初受賞なるか『Mank/マンク』

映画2021年4月16日

 日本時間の4月26日に授賞式が行われる今年のアカデミー賞では、動画配信サービスNetflix(ネットフリックス)製作の映画が大量にノミネートされた。その中の一本で、作品賞をはじめ、最多10部門で候補となった『Mank/マンク』を紹介しよう … 続きを読む

【インタビュー】「連続ドラマW 華麗なる一族」中井貴一「原作の万俵大介像を大切に」内田有紀「自分が生きてきた全てを高須相子という役にぶつけようと」山崎豊子の傑作に挑戦!

ドラマ2021年4月16日

 数々の名作を残した作家・山崎豊子の傑作が、令和の現代によみがえる。高度経済成長期の日本を舞台に、実業家一族の繁栄と崩壊を描いた小説『華麗なる一族』(新潮文庫刊)を、WOWOW開局30周年記念で連続ドラマ化。これまで繰り返し映像化されてきた … 続きを読む

【大河ドラマコラム】「青天を衝け」第九回「栄一と桜田門外の変」見事なバランス感覚で描かれた“桜田門外の変”

ドラマ2021年4月14日

 4月11日に放送された大河ドラマ「青天を衝け」第九回「栄一と桜田門外の変」では、タイトル通り、幕末の世を揺るがした大事件「桜田門外の変」が描かれた。  これまで、主人公・渋沢栄一(吉沢亮)や、後にその主君となる徳川慶喜(草なぎ剛)を中心に … 続きを読む

タイトルバック制作秘話「渋沢の人生の軌跡を描くため、最先端の映像技術のタブーを破りました」柿本ケンサク(タイトルバック映像)【「青天を衝け」インタビュー】

ドラマ2021年4月14日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「青天を衝け」。激動の幕末から昭和を生き、“日本資本主義の父”と呼ばれた実業家・渋沢栄一の生涯を描くダイナミックな物語の幕開けを毎回、華麗なテーマ曲とともに彩るのが、印象的なタイトルバックだ。水墨画風のタッチ … 続きを読む

【大河ドラマコラム】「青天を衝け」第八回「栄一の祝言」栄一や慶喜の姿に見る「思いやりと優しさ」

ドラマ2021年4月8日

 4月4日に放送された大河ドラマ「青天を衝け」第八回「栄一の祝言」は、その名の通り、親戚や友人、知人に囲まれた、栄一(吉沢亮)と千代(橋本愛)のにぎやかな結婚式でクライマックスを迎え、揺れる幕府内とは対照的に、和やかな幕切れとなった。  こ … 続きを読む

amazon

page top