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大きな期待を背負って出場したストックホルムオリンピックで、途中棄権という結果に終わった金栗四三(中村勘九郎)。同じ頃、日本では落語家となった美濃部孝蔵(若き日の古今亭志ん生/森山未來)が、酔っ払ったまま初高座に上がり、大失敗をやらかすことに…。本作では、主人公・金栗四三と同時代を生きた落語家・古今亭志ん生(ビートたけし)が物語のナビゲートを務め、その若い頃の破天荒な生きざまも見どころとなっている。落語指導を担当するのは、志ん生の孫弟子に当たる古今亭菊之丞。孝蔵役の森山未來の印象なども含め、落語指導の舞台裏を語ってくれた。
見事だと思います。実は撮影に入る前、森山さんから「関西出身の僕に、後にたけしさんになるような役ができるでしょうか」と相談を受けたんです。そこで、浅草の小料理屋さんへ行き、一流の歌舞伎役者の方々と付き合いのあった芸者さんと話をすることにしました。そうやって、いろいろ聞いた上で出た結論が、「深く考えるのはやめよう」(笑)。というのも、あまり“江戸っ子”を意識し過ぎると、かえってそう見えないだろうと。だから、「自然にやりゃあ、いいのよ」という話になり、森山さんも「分かりました」と。「どう頑張っても、たけしさんにかなうわけはないので、僕はそのようにやります」とおっしゃって、今は見事に演じていらっしゃいます。
古今亭の人間としては、うれしいことだと思いました。明治から昭和にかけて物語を俯瞰する役割に、(三遊亭)圓生でもなく、(桂)文楽でもなく、(林家)正蔵でもなく、志ん生という人を選んでくれた。そのことにまず、感謝の念が湧きました。
とてもうれしかったです。志ん生が亡くなったのは昭和48年ですが、私は昭和47年生まれなので、実際の志ん生を知りません。本当は、志ん生を知っている先輩がいっぱいいるんです。ただ、私の師匠の古今亭円菊は、志ん生の教えを受けてきた人。ですから、師匠を通して志ん生を見るという形で、私もそのDNAは受け継いでいるわけです。そんなわけで、お話を頂いたときは、ものすごく光栄で有り難いことだなと。
まず、宮藤(官九郎)さんが書かれた原稿を頂き、落語の間違いがあれば直します。それが台本として出来上がるわけですが、書かれている部分だけでは落語としては足りません。その前後の部分が必要になります。そこで、私が前後を含めて演じて見せて、スタッフの方がビデオに撮り、それを文章に起こしたものを役者さんが覚える。だから、役者さんは大変です。覚える量が増えるわけですから(笑)。
そうですね。私がまずやって見せて、次に役者さんにやっていただき、その都度直していく…。本職の落語家と同じような稽古になります。ただ、役者さんに対しては、より丁寧に指導するようにしています。「こういう目線でやってください」、「こんなつもりでやってください」、「ここは一息でしゃべっちゃってください」という感じで。本職の落語家に対しては、あまりそういうことは言いませんから。あとは、現場に張り付いて、高座でしゃべっているところを見て、間違っていればその場で直す…という感じです。
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