【映画コラム】好きか嫌いか自分の目で確かめるべし『10クローバーフィールド・レーン』

2016年6月18日 / 19:03
(C) 2016 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.

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 『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(15)などのヒットメーカー、J・J・エイブラムスが製作を担当した異色スリラー『10クローバーフィールド・レーン』が公開された。監督は本作が長編デビューとなったダン・トラクテンバーグ。

 車の追突事故で意識を失ったミシェル(メアリー・エリザベス・ウィンステッド)は、気がつくとハワード(ジョン・グッドマン)という謎の男の地下シェルターに閉じ込められていた。ハワードによると地上は何者かの攻撃によって汚染されてしまったのだという。

 シェルターにはエメット(ジョン・ギャラガー・Jr.)という若い男もおり、三人の地下生活が始まるが、ハワードの態度に疑惑を抱いたミシェルはシェルターからの脱出を試みる。

 全編のほぼ8割がシェルター内で繰り広げられる密室劇。その閉塞感は、監禁された女性とその息子を描いた『ルーム』(15)をほうふつとさせるものがある。そして、果たしてハワードは一体何者なのか、本当に外の世界は危険なのかという“謎”で見る者を引っ張っていく。

 その点で本作は、人間と人工知能が繰り広げる駆け引きを、ほぼ外界から閉ざされた山荘内で描いた『エクス・マキナ』(15)同様、膨大な製作費を懸けずとも、いいアイデアをうまく生かすことができれば、SFスリラー的な面白さや怖さを持った映画が作れることを証明しているのだが、ラスト近くの変転で印象が大きく変わってしまう。

 トラクテンバーグ監督自身が「嫌悪する人もいるだろうし、めちゃくちゃ気に入る人もいると思う」と語るように、ある意味挑戦的とも言える映画。好きか嫌いか、ぜひ自分の目で確かめてほしい。(田中雄二)


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