【インタビュー】映画『キネマの神様』永野芽郁「最初から最後まで、何て温かい映画なんだろうと思います」

2021年8月3日 / 07:20

 ギャンブル漬けで借金まみれのゴウ(沢田研二)は、妻の淑子(宮本信子)と娘の歩(寺島しのぶ)にも見放された駄目おやじ。そんなゴウにも、たった一つ愛してやまないものがあった。それは映画。行きつけの名画座の館主・テラシン(小林稔侍)とゴウは、かつて撮影所で働く仲間だった…。原田マハの小説を山田洋次監督が映画化した『キネマの神様』が8月6日(金)から全国公開される。本作で若き日の淑子を演じた永野芽郁が、映画への思いや、山田監督について語った。

淑子役の永野芽郁

-この映画に出演して、映画作りに対する思いに変化はありましたか。

 ありました。山田監督はワンカットをとても丁寧に撮られるので、本番に行くまでに結構時間が掛かります。そのときに、監督が、何回も「ここはこういうふうにしてみようか」と、とても的確で、私にも分かりやすい言葉で説明してくださったことも、自分にとってはすごく大事なことだと思いましたし、一つ一つのカットに懸ける思いが、これだけ大きくて熱くて…というのを目の当たりにしたときに、「一本の映画を作るときにはこれだけの熱量が必要なんだ」と思いました。もちろん、どの映画でも皆さんが熱い思いを懸けて作っていますけど、今回は、また違う体験をしたと思います。

-山田組の印象は、いかがでしたか。

 プロフェッショナルの集まり、という感じでした。どの部署の方も、すごく丁寧に、的確にお仕事をされていて、歴史を感じました。会話をしていなくても、監督が指示を出さなくても、それぞれの部署の方が何かを感じ取って動いていくんだろうなあ、今までも、こうして大きな作品を作ってきたんだろうなあ、と思いました。でも、いつもピリピリしているわけではなくて、常に穏やかな雰囲気があって、それは監督が持ってらっしゃるパワーからくるのかなと思いました。

-演じた淑子という役についてどう思いましたか。また、ダブルキャストの宮本信子さんのことも踏まえて、どのようにアプローチをしていきましたか。

 クランクインのときに、監督から「跳ねるような明るさでいてほしい」と言われました。なので、アップするまで、どのシーンも、心の中のリズムは、ずっと弾ける感じで言葉を発したり、お芝居ができたらいいなと考えていました。宮本さんとは本読みのときに初めてお会いしましたが、監督が「何か2人は似ているね」とおっしゃってくださったので、少しでも宮本さんの表情やしぐさをまねすることができればと思いました。それで、宮本さんがされていた手元を握られる動作? 動き?を、淑子が若いときから現在に至るまでずっとやっているしぐさ、ということにしてみました。あとは、朝、監督が必ず「おはよう。今日は元気? 体調はどうですか」と聞いてくださったので、監督と少しずつお話することが増えていくうれしさが確実に画面に出ていると思います(笑)。

-永野さんから見れば、”おじいちゃんたちの青春時代”を演じたことになりますが、あの時代をどう感じましたか。

 人と人との距離がとても近いと思いました。淑子が働いている食堂に、撮影を終えた皆さんがご飯を食べにくるシーンも、全く違う組の人同士が一緒に食べていたりして、現代と比べると、皆で一緒に生きているという感じが伝わってきて、温かいなと思いました。監督が若いときの撮影所の話をたくさんしてくださったので、できる限り、自分もそこに寄りたいと思って演じていました。同じ撮影所でも、今とは全く違うものだと思いました。

-淑子と同じ時代を生きる人物を演じた菅田将暉さんと野田洋次郎さんの印象は?

 菅田さんとご一緒するのは三度目なので、絶対的な安心感がありました。毎回、菅田さん自身は全く変わらないのに、役として全く違う姿を見せていただけるのがとても楽しみで、今回も、ゴウちゃんとして、現場で会ったときは、すごくうれしかったです。野田さんとは、初めましてだったのですが、どこか俯瞰でものを見ているような感じでお話されるところが、テラシンさんと通じるところがあって、声も透き通るような優しい声で…。現場で、違うお二人を見ながら、ゴウちゃんとテラシンさんと淑子っていい組み合わせだなと思いました。やっていて面白かったです。

-淡い三角関係のようなところもあり、淑子はゴウを選びますが、永野さんならどちらを選びますか。

 私自身も、きっとゴウちゃんを選びます。ただ、幸せになれるのはテラシンさんの方だと思います。多分、見ている人のほぼ全員が同じ意見だと思います(笑)。女性は結構そうなるような気がします。分かっているのに、何でゴウちゃんの方に行っちゃうんでしょうね。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

蓮佛美沙子&溝端淳平「カップルや夫婦が“愛の形”を見直すきっかけになれたら」 グアムで撮影した新ドラマ「私があなたといる理由」【インタビュー】

ドラマ2025年7月1日

 ドラマ「私があなたといる理由~グアムを訪れた3組の男女の1週間~」が、7月1日からテレ東系で放送がスタートする。本作は、グアムを訪れた世代が違う男女3組のとある1週間を描いた物語。30代の夫婦(蓮佛美沙子、溝端淳平)、20代の大学生カップ … 続きを読む

風間俊介「横浜流星くんと談笑する機会が増えてきたことがうれしい」蔦重と和解した鶴屋喜右衛門役への思い【大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」インタビュー】

ドラマ2025年6月29日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」。“江戸のメディア王”と呼ばれた“蔦重”こと蔦屋重三郎(横浜流星)の波乱万丈の生涯を描く物語は、快調に進行中。6月29日放送の第25回「灰の雨降る日本橋」では、浅間山の噴火によっ … 続きを読む

栗田貫一「今回はルパンたちが謎の世界に迷い込んで謎の敵と戦って、しかも前に倒した連中もよみがえってくるみたいな感じです」『LUPIN THE IIIRD THE MOVIE 不死身の血族』【インタビュー】

映画2025年6月27日

 あのルパン三世が、約30年ぶりに2Dの劇場アニメーションとして帰ってくる。舞台は地図に載っていない謎の島。お宝を狙って乗り込んだルパン一行を待ち受けていたのは正体不明の存在だった。前代未聞のスケールで描かれ、全ての「ルパン三世」につながる … 続きを読む

光石研、大倉孝二「ちょっと重いけれどちゃんとエンターテインメントになっていると思います」『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』【インタビュー】

映画2025年6月27日

 日本で初めて教師による児童へのいじめが認定された体罰事件を題材にした福田ますみのルポルタージュを三池崇史が映画化した『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』が6月27日から全国公開された 。本作の主人公・薮下誠一(綾野剛)が勤める小学校の校 … 続きを読む

【週末映画コラム】『トップガン マーヴェリック』と兄弟のような『F1(R)/エフワン』/過酷な救急医療現場にリアルに迫った『アスファルト・シティ』

映画2025年6月27日

『F1(R)/エフワン』(6月27日公開)  かつてF1ドライバーとして活躍したソニー・ヘイズ(ブラッド・ピット)は、今は身を持ち崩し、フリーのレーサーとしてさまざまなレースに出場していた。だが、最下位に沈むF1チーム「エイペックス」の代表 … 続きを読む

Willfriends

page top