【インタビュー】エン*ゲキ#05「‐4D‐imetor」池田純矢 「どこまでも娯楽でありたい」

2021年8月2日 / 12:00

 俳優・脚本家・演出家として活躍する池田純矢が、作・演出を手掛けるエン*ゲキシリーズの第5作「‐4D‐imetor」(フォーディメーター)。コロナ禍の影響で昨年の上演は中止となっていた本作が、いよいよ8月5日から上演される。本作は、量子力学をテーマに、壮大なスケールで繰り広げられる謎解きミステリーで、四次元世界と超能力を“イリュージョンマジック”で表現する体験型の演劇。作・演出を務めながら、記憶を失った謎の少女ノアを演じる生駒里奈とのW主演で、超能力研究所の所長・渡来暦を演じる池田に、上演を間近に控えた心境と、見どころなどを聞いた。

池田純矢

-コロナ禍で上演中止となっていた本作ですが、これまでどのような心境でしたか。

 個人的にも世界的にもいろんなことがありましたけど、自分たちが表現者でエンターテイナーであるということ、エンターテインメントを欲しているお客さまがいるというのは、どんな世界になっても変わらないことだと思いますので、そのときにできる精いっぱいをやればいいんじゃないかと思っていました。今もコロナの影響で、上演に向けていろいろな制約がありますけど、それでパワーダウンしてしまうのではなく、それを逆手に取って最大限に面白いことをやるという気持ちです。

-稽古の手応えや稽古場の雰囲気はどうですか。

 手応えはあります。昨日も家に帰って稽古動画を見ながら「おもしれー」ってなっていました(笑)。稽古場は、もし演劇の教科書があるとしたら教科書に載せたいぐらいのいい稽古場です(笑)。役者陣もスタッフ陣も真面目でストイックだけど、和やかでもあります。出演者にマジシャンの新子(景視)さんがいるので、休憩中に急にテーブルマジックが始まって、みんなで盛り上がったりもしています(笑)。こういう情勢なので、稽古後に食事や飲み会などができないですけど、稽古場のコミュニケーションだけで十分過ぎるほど仲良くなれています。

-本作の見どころは?

 まず、イリュージョンマジックはすごく見どころです。量子力学をテーマに四次元世界と超能力というのがバトルフィールドになるわけですけど、「超能力を現実に見た」とお客さまに思っていただけるようなことをイリュージョンで実現しています。例えば、何の変哲もない壁から本当に人が出てくるんです。そういう不可思議な現象をたくさんちりばめているので、きっと飽きることなく物語に没頭できると思います。舞台演出でプロジェクションマッピングなどが流行していますが、そういうのを一切使わずに全てアナログでやっています。なので、登場人物が超能力者と信じるに値する説得力があると思っていて、そこは楽しんでいただきたいです。それから、アクションもふんだんにあって、たぶん誰も見たことがないアクションになっていると思います。

-演者としては、渡来暦をどのように演じようと考えていますか。

 できるかぎり力を抜いて演じようと考えています。難しいせりふがたくさんあるんですが、それを力と感情を込めて読んでしまうと、どうしてもお客さまが眠たくなると思うんです(笑)。学問テーマがあって、そういう小難しいと思われがちな理論が登場するんですけど、そういう要素があるからこそ最後のエモーショナルな部分がグッとくるという。なので、前半の部分はできるだけライトにお客さまに聞いていただいて、その記憶の隅っこに植え付けるみたいな、そういうことができたらいいなと思っています。

-作・演出の立場として、シリーズ全体で心掛けていることは?

 シリーズ全体を通して大切にしていることは、“どこまでも娯楽でありたい”ということです。作り手のメッセージや思いの強さというものは作り手が勝手に考えればいいわけで、お客さまに押しつけるべきものではないと考えていて、単に娯楽でありたい、“楽しかった”をお客さまに提供できる場でありたいと思っています。

-生駒さんが、以前のインタビューで「池田さんに期待以上だったと思っていただけるように頑張らなきゃ」とおっしゃっていたのですが、期待以上でしたか。

 期待していた以上です。彼女が出演した舞台をいくつも見ていますけど、今までで一番輝いていると思っています。それと、ガッツリと本格的なアクションもやっているので、お客さまもすごくびっくりするんじゃないでしょうか。「この作品が終わったら、プロフィールの特技に“アクション”って書いた方がいい」と彼女に言っているぐらいです(笑)。

-エン*ゲキシリーズとは、池田さんにとってどのような存在ですか。

 “その時、面白いと思ったことをやる場所”です。役者として映像、舞台、アニメといろいろと出演させてもらったり、脚本家として、よその公演に本を提供させていただいたりというときに、守らなきゃいけないルールとかセオリーがありますけど、このシリーズにおいては、ルールやセオリーは「僕がやる」ということでしかないので、好き勝手にできる(笑)。なので、自分の中でこれが面白いと思ったものを表現できる場所です。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

【映画コラム】俳優同士の演技合戦が見ものの3作『爆弾』『盤上の向日葵』『てっぺんの向こうにあなたがいる』

映画2025年11月1日

『爆弾』(10月31日公開)  酔った勢いで自販機を壊し店員にも暴行を働き、警察に連行された正体不明の中年男(佐藤二朗)。自らを「スズキタゴサク」と名乗る彼は、霊感が働くとうそぶいて都内に仕掛けられた爆弾の存在を予告する。  やがてその言葉 … 続きを読む

福本莉⼦「図書館で勉強を教え合うシーンが好き」 なにわ男⼦・⾼橋恭平「僕もあざとかわいいことをしてみたかった」 WOWOW連ドラ「ストロボ・エッジ」【インタビュー】

ドラマ2025年10月31日

 福本莉⼦と⾼橋恭平(なにわ男⼦)がW主演するドラマW-30「ストロボ・エッジ  Season1」が31日午後11時から、WOWOWで放送・配信がスタートする。本作は、咲坂伊緒氏の⼤ヒット⻘春恋愛漫画を初の連続ドラマ化。主人公の2人を軸に、 … 続きを読む

吉沢亮「英語のせりふに苦戦中です(笑)」主人公夫婦と関係を深める英語教師・錦織友一役で出演 連続テレビ小説「ばけばけ」【インタビュー】

ドラマ2025年10月31日

 NHKで好評放送中の連続テレビ小説「ばけばけ」。明治初期、松江の没落士族の娘・小泉セツと著書『怪談』で知られるラフカディオ・ハーン(=小泉八雲)夫妻をモデルに、怪談を愛する夫婦、松野トキ(髙石あかり)とレフカダ・ヘブン(トミー・バストウ) … 続きを読む

阿部サダヲ&松たか子、「本気でののしり合って、バトルをしないといけない」離婚調停中の夫婦役で再び共演 大パルコ人⑤オカタイロックオペラ「雨の傍聴席、おんなは裸足・・・」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年10月31日

 宮藤官九郎が作・演出を手掛ける「大パルコ人」シリーズの第5弾となるオカタイロックオペラ「雨の傍聴席、おんなは裸足・・・」が11月6日から上演される。本作は、「親バカ」をテーマに、離婚を決意しているミュージカル俳優と演歌歌手の夫婦が、親権を … 続きを読む

高杉真宙「見どころは、何よりも坂口健太郎さんと渡辺謙さんの演技だと思います」『盤上の向日葵』【インタビュー】

映画2025年10月30日

 『孤狼の血』で知られる柚月裕子の同名小説を映画化。昭和から平成へと続く激動の時代を背景に、謎に包まれた天才棋士・上条桂介(坂口健太郎)の光と闇を描いたヒューマンミステリー『盤上の向日葵』(配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント/松 … 続きを読む

Willfriends

page top