山本耕史、舞台は「大変だからこそすばらしい」 「自分はいつまでやれるのかな」引き際を考えることも【インタビュー】

2023年10月1日 / 08:00

ー今作では深見と武の師弟関係が描かれていますが、弟子という存在に対してこの作品ではどのように向き合っていますか。

 「お前は俺の弟子だ」という師匠は、実はあまりいないんじゃないかなと僕は思います。弟子が「師匠」と呼ぶから、必然的に「弟子」と呼ばれているだけなんじゃないかなという気がします。ついてくるから、「じゃあ、もういいよ」って。それを言葉で言うなら「弟子」なのかなと。この作品の製作発表のときに、(本作で高山三太を演じる松下)優也くんが「師匠はコウジヤマモト」と言ってくれていましたが、僕は別に彼と師弟関係を結んだわけではないですよ(笑)。でも彼が僕を師匠と呼んでくれた時点で、形としては師弟という構図になっているのだとしたら、それはそれでいいのかなとも思います。

ー松下さんもそうですが、舞台の場合は、後輩の方と一緒の現場で長く過ごすことも多いと思います。弟子ではなくとも、後輩俳優と接するときに何か意識されていることはありますか。

 別に後輩の方だからということではないですが、感性が面白い子は探してます(笑)。ただ、だからといって無理に距離感を縮めようと考えることはないです。優也くんはすごく珍しいタイプなんです。(ミュージカル「太平洋序曲」で共演した際に)同じ役を演じるダブルキャストだったので、一緒に舞台に立ったことがないんですよ。でも、稽古場では一番交流を持っていて、お互いに役作りについてもたくさん話して。そういう意味でも、僕にとってはただの後輩ではないので、面白い関係だなとは思います。

ーほかの俳優からも、山本さんから稽古場で筋トレを教わった、彼が師匠だというエピソードを聞いたことがあります。筋トレも一つのコミュニケーションになっているのでは?

 別に筋トレでコミュニケーションをとっているつもりはないんですけどね(笑)。ただ、舞台に立っている人はみんな、体を気にしていますし、かっこよくありたいと思っていると思うので、聞かれることは多いですね。なんだかんだ、みんな筋トレが好きなんで(笑)、それが結果的にコミュニケーションになっているんだと思います。

ー山本さんは映像作品でも大活躍していますが、その中で、舞台作品に出演することへの思いも聞かせてください。

 舞台は、僕にとって俳優としての引き出しをたくさん発見できた場所なので、なんとなく自分の出発点だという感覚はあります。今の僕ができあがった基礎は舞台だなと。ただ、若い頃はいくらでも動けたし、エネルギーの出しどころでもあったけれど、僕はもう47歳になるのでやっぱりしんどいんですよ。だから、最近は、舞台の良さとしんどさを同時に痛感してます(苦笑)。大変だからこそすばらしいものなんですけどね。舞台に立つと、コントロールが効かなくなって、マックスの力以上に突き抜けてやってしまうんですよ。もちろん8割の力でやれれば回数もできるんだろうけど、8割でやったらバレるのも舞台。決して映像が楽だというわけではないけれども、やはり毎回毎回を生の人間が演じ続け、収録だったらNGで止められるようなことが起きても止まることはできない舞台は大変ですし、映像にはない怖さも喜びもあるものだなと思います。正直なところ、いつまでやれるんだろうなとも思っています。氷室京介さんが、多くの人から求められていて、歌も完璧に歌えるのに、ちょっとした耳の不調で、歌うことをやめる選択をしたのを見て、自分はいつまでやれるのかなと、ふと思うときはあります。

ー逆に、長く続けるという美徳もあるのでは?

 確かにそうですし、続けたいという方はいらっしゃると思います。ただ、僕はそこまでしてやらなくてもいいのかなと思う部分もあります。僕自身は役者として「長く続ける」ということが目標となっているのかと言われたら、それは少し違うかな? と思っています。とはいえ、今は目の前のことに真摯(しんし)に向き合っていき、まずはこの作品を無事にやり遂げられたらと思います。

(取材・文・写真/嶋田真己)

カンテレ開局65周年記念公演 音楽劇「浅草キッド」

 カンテレ開局65周年記念公演 音楽劇「浅草キッド」は、10月8日~22日に都内・明治座ほか、大阪、名古屋で上演。

  • 1
  • 2
 

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

天海祐希、田中哲司、小日向文世、でんでん、塚地武雅「12年の集大成を見届けてください!」大ヒットシリーズ、ついに完結! 劇場版「緊急取調室 THE FINAL」【インタビュー】

映画2025年12月23日

-12年という時間が、そういう皆さんの固い絆を作り上げたわけですね。そんな作品に出合える機会は、俳優人生の中でめったにないことだと思いますが、皆さんにとって「緊急取調室」シリーズとはどんな存在でしょうか。 天海 12年という時間とエネルギー … 続きを読む

【映画コラム】時空を超えた愛の行方は『楓』『ビューティフル・ジャーニー ふたりの時空旅行』『星と月は天の穴』

映画2025年12月20日

『ビューティフル・ジャーニー ふたりの時空旅行』(12月19日公開)  友人の結婚式で知り合ったデビッドとサラは、レンタカーのカーナビに導かれ奇妙なドアにたどり着く。そのドアの先は、それぞれの「人生で一番やり直したい日」につながっていた。“ … 続きを読む

北香那「ラーメンを7杯くらい食べたことも」天野はな「香那ちゃんのバレエシーンは見どころ」 「ラーメン」と「クラシック・バレエ」が題材のコメディーで共演 NHK夜ドラ「替え玉ブラヴォー!」完成会見

ドラマ2025年12月19日

 12月19日、東京都内のNHKで、1月5日からスタートする夜ドラ「替え玉ブラヴォー!」の完成会見が行われ、主人公・千本佳里奈(ちもと かりな)役の北香那、佳里奈の親友・二木優美(ふたぎ ゆみ)役の天野はながドラマの見どころを語ってくれた。 … 続きを読む

【物語りの遺伝子 “忍者”を広めた講談・玉田家ストーリー】(9)浅間神社で語る「厄よけの桃」

舞台・ミュージカル2025年12月18日

 YouTubeもNetflixもない時代、人々を夢中にさせた“物語り”の芸があった——。“たまたま”講談界に入った四代目・玉田玉秀斎(たまだ・ぎょくしゅうさい)が、知られざる一門の歴史物語をたどります。  前回は、玉田家再興にあたり「三つ … 続きを読む

石井杏奈「人肌恋しい冬の季節にすごく見たくなる映画になっています」『楓』【インタビュー】

映画2025年12月17日

-実際に福士さんと共演してみていかがでしたか。  とてもすてきな方で、待ち時間にちょっとお話できたんですけど、すごく温厚な方でした。お芝居に関してはすごく真面目でストイックで、「このせりふはこうやって言ってみるのもありかも」というような優し … 続きを読む

Willfriends

page top