【インタビュー】映画『死刑にいたる病』白石和彌監督「阿部さんと岡田さんならゾクゾクする目線のやりとりになると」「自然を映し込むことは、映画の大きな醍醐味」

2022年5月4日 / 12:00

 連続殺人鬼から届いた一通の手紙。そこには、たった1件の冤罪(えんざい)を証明してほしいと書かれていた…。『凶悪』(13)『孤狼の血』(18)の鬼才・白石和彌監督の新作『死刑にいたる病』が5月6日(金)から公開される。話題の小説を原作に、阿部サダヲ×岡田健史がW主演を務める。白石監督らしさ全開! ゾクッとする怖さが尾を引くサイコサスペンスだ。

白石和彌監督

-今回、櫛木理宇さんの原作小説を扱った理由から教えてください。

 『彼女がその名を知らない鳥たち』で、ご一緒したプロデューサーから、「すごい原作を見つけたので、ぜひとも読んでほしいです」という連絡が来たことが、原作との出合いでした。ただ、僕は『凶悪』という映画を作っていて、死刑未決囚が「これを調べてくれ」と手紙を送ってくる構造が似ていたので、最初は迷いました。それでも榛村大和というキャラクターが圧倒的に面白くて、彼を見てみたかった。『凶悪』をやったからこそできることがあるなという思いもあり、チャレンジすることにしました。

-そうすると榛村役には、最初から阿部サダヲさんを念頭に?

 そうですね。脚本を作る段階では誰なんだろう? と思いながらでしたけど、『彼女がその名を知らない鳥たち』で阿部さんとご一緒したときに、阿部さんは時々ほの暗い目をカメラに向ける瞬間があって、その目の記憶が僕の中にこびり付いていたんです。榛村なら、ああいう目をするんじゃないかと。皆に相談してみたら、「ぜひお願いしてみましょう」とごく自然に阿部さんに決まりました。

-もう一人の主人公である雅也役の岡田健史さんは?

 青春映画にも出演されていますが、どこかで鬱屈した感じも似合うんではないかなと思い、会わせていただきました。そうしたら、真っすぐで曲がったことが嫌いで、恐らく頑固そう。「とにかく芝居がしたいんです」という一途さに好感を持ちました。それに、阿部さんの目は、見ている人を引き寄せていく、引き込まれそうになる目だけど、逆に話している人に向かって真っすぐさ故に突き刺さってくる目の印象があったので、この2人ならゾクゾクする目線のやりとりになるんじゃないかと。

-確かに、真逆のいいバランスですね。

 それに、阿部さんと初めて組むということにもこだわりました。共演済みの場合、関係性ができているということではプラスはありますけど、今回は緊張感があった方がいいだろうと。お互いが、どういう芝居をするのか探っている感じが醸し出す空気感も重要だったので。

-岩田剛典さんや中山美穂さんも含め、イメージを覆すキャスティングは、意図的ですよね。

 そうですね。僕自身が、イメージと異なる方が好きなんですけど、演じる方も「何でこの役が自分なの?」と思えた方が、テンションが上がるはず。この監督は、自分の他の人と違う部分を見てくれているんだと思うだろうし。

-脚本の高田亮さんとは初タッグになります。監督からリクエストしたことは?

 原作は榛村大和の過去や、両親の話にもページを割いているんですけど、そこはあまり深掘りせずに、現在軸で何が起きているかを中心に据えた方が、よりサスペンスが立ちますよねと。それに、24人も殺しているじゃないですか。実際の事件で、実録ものであれば、お客さんも「あっ、あの事件か」となりますけど、榛村大和は架空の人物。しかも24件をフォローするのは大変なので、「どうしたらうまくいきますかね」という相談は最初にしました。ニュース番組を使ったりして、情報が見ている人にスッと飲み込めるように工夫されている。さすがだなと。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

蓮佛美沙子&溝端淳平「カップルや夫婦が“愛の形”を見直すきっかけになれたら」 グアムで撮影した新ドラマ「私があなたといる理由」【インタビュー】

ドラマ2025年7月1日

 ドラマ「私があなたといる理由~グアムを訪れた3組の男女の1週間~」が、7月1日からテレ東系で放送がスタートする。本作は、グアムを訪れた世代が違う男女3組のとある1週間を描いた物語。30代の夫婦(蓮佛美沙子、溝端淳平)、20代の大学生カップ … 続きを読む

風間俊介「横浜流星くんと談笑する機会が増えてきたことがうれしい」蔦重と和解した鶴屋喜右衛門役への思い【大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」インタビュー】

ドラマ2025年6月29日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」。“江戸のメディア王”と呼ばれた“蔦重”こと蔦屋重三郎(横浜流星)の波乱万丈の生涯を描く物語は、快調に進行中。6月29日放送の第25回「灰の雨降る日本橋」では、浅間山の噴火によっ … 続きを読む

栗田貫一「今回はルパンたちが謎の世界に迷い込んで謎の敵と戦って、しかも前に倒した連中もよみがえってくるみたいな感じです」『LUPIN THE IIIRD THE MOVIE 不死身の血族』【インタビュー】

映画2025年6月27日

 あのルパン三世が、約30年ぶりに2Dの劇場アニメーションとして帰ってくる。舞台は地図に載っていない謎の島。お宝を狙って乗り込んだルパン一行を待ち受けていたのは正体不明の存在だった。前代未聞のスケールで描かれ、全ての「ルパン三世」につながる … 続きを読む

光石研、大倉孝二「ちょっと重いけれどちゃんとエンターテインメントになっていると思います」『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』【インタビュー】

映画2025年6月27日

 日本で初めて教師による児童へのいじめが認定された体罰事件を題材にした福田ますみのルポルタージュを三池崇史が映画化した『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』が6月27日から全国公開された 。本作の主人公・薮下誠一(綾野剛)が勤める小学校の校 … 続きを読む

【週末映画コラム】『トップガン マーヴェリック』と兄弟のような『F1(R)/エフワン』/過酷な救急医療現場にリアルに迫った『アスファルト・シティ』

映画2025年6月27日

『F1(R)/エフワン』(6月27日公開)  かつてF1ドライバーとして活躍したソニー・ヘイズ(ブラッド・ピット)は、今は身を持ち崩し、フリーのレーサーとしてさまざまなレースに出場していた。だが、最下位に沈むF1チーム「エイペックス」の代表 … 続きを読む

Willfriends

page top