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2024年に亡くなったアングラ演劇の旗手・唐十郎の初期作品『アリババ』『愛の乞食』が、全編関西弁で、8月31日から9月21日にかけて世田谷パブリックシアターで二作連続上演される。現実と幻想、現在と過去が溶け合うふたつの物語は、叙情的に紡がれる言葉の数々によって普遍的なロマンを呼び起こし、現代を生きる人々に活力と希望を与える作品としてよみがえる。両作品で主演を務めるのは、『少女都市からの呼び声』以来、2年ぶりの唐作品出演となるSUPER EIGHTの安田章大。本公演に懸ける思いや唐作品の魅力などを語ってくれた。

安田章大「スタイリスト:袴田能生(juice)
ヘアメイク:山崎陽子」(C)エンタメOVO
『少女都市からの呼び声』で初めて唐作品に挑戦した際、演出家の金守珍さんから、「『アリババ』と『愛の乞食』という素晴らしい戯曲がある」と伺ったんです。そこで、金さんから本をいただいて読んでみたら、「これはやらなければ!」という気持ちになり、僕が金さんとBunkamuraの方を口説きました。言ってみれば、今回の公演が実現したのはそんな僕の提案を、人生の先輩方が受け入れてくださったおかげです。
僕は普段から、台本をいただくとまず関西弁で読み、感情を整理するようにしています。一方で唐さんは、レコードを聴きながらリズムに乗せ、マス目のない紙に戯曲を書き上げていたそうなんです。マス目のある紙だと、言葉が萎縮してしまい、好きに暴れられないからだと。それを唐さんは「言葉を音符として書いている」とおっしゃっていましたが、僕も関西弁を音符のように捉えるところがあったので、似たようなことを考えていたんだなと。金さんにそんな話をしたら、打ち合わせのとき、「関西弁でやるのはどうだろう?」と振り切った提案をしてくださって。
時代そのものが血気盛んだった60年代、多感な20代の唐十郎さんが書かれた力強くエネルギッシュで、時代と戦ったような戯曲を関西弁で演じる。初めての挑戦なので、賛否両論あるとは思います。でも、「演劇には賛否両論がなければダメだ」とおっしゃっていた唐さんなら、きっと喜んでくださるはずです。
11年ほど前、友人の大鶴佐助(唐の息子)くんに誘われ、雑司ヶ谷の鬼子母神で行われた『紙芝居の絵の町で』という劇団唐組のテント公演を見に行ったのが、最初の出合いです。
テント公演は、見るものではなく、体験するものだと僕は思っています。その上で、言葉にするのはすごく難しいんですけど、初めて見たとき、今までの自分とは違うもう一人の自分が生まれたような感覚になりました。新しく生まれた自分が本来の自分で、今までの自分は一生懸命うそをつきながら人生を歩んできたような…。「自分がこれから生きていくのが、本当の世界なんだ」という、研ぎ澄まされた感覚に至りました。
『少女都市からの呼び声』で初めて唐作品に携わらせていただいたとき、自分の内にある命を大事にする感覚と、とても類似した感覚に至りました。僕の家族は、兄が死産だったこともあり、幼い頃から「命を大事に」と教えられて育ったんです。そういうテーマは、今回の作品にも通じるものがあります。ただ、唐さんの作品はおそらく、僕のファンの皆さんにとっては、今まであまり触れてこなかったタイプの作品だと思います。だから、この機会にぜひ触れてもらいたい。唐作品を体験したら、人生が変わることもあると思うので。
分からない部分は、分からないままでいいと思うんです。ただそのとき湧き上がった感情を持ち帰ってもらえれば。それから時間が経つ中で、人生観が少し変わったな…と振り返ったとき、その分岐点が、唐作品を見たときに芽生えた感情だったのかも、と気付けばいいと思っていて。それは次の日かもしれないし、あさってかもしれない。あるいは1年後かもしれない。そんなふうに、今すぐ必要なものを探さない方がいい、というのが僕の考えです。そういう意味で、体験したことのない、理解できない違和感を持ち帰ってくれたら…と。

(C)エンタメOVO
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