JT・モルナー監督「この映画の実現は厳しいと言われた時に、『羅生門』を見れば分かると言いました」『ストレンジ・ダーリン』【インタビュー】

2025年7月11日 / 08:00

 シリアルキラーの恐怖に包まれた街を舞台に、とある男女の出会いが予測不能な展開へと突き進んでいく様子を、時系列を巧みに交錯させた全6章の構成で描いたスリラー映画『ストレンジ・ダーリン』が7月11日から全国公開される。米映画批評サイトのロッテントマトで高評価を獲得し、作家のスティーブン・キングが「巧妙な傑作」と絶賛した本作のJT・モルナー監督に話を聞いた。

JT・モルナー監督

-ネタバレになるので肝心な部分が話せないのはとても残念なのですが、このとんでもないストーリーのアイデアはどこから浮かんだのでしょうか。

 5歳ぐらいの頃から、紙をホチキスで止めて、そこに自分で絵を描いて物語を作っていました。でもそれが全部、誰かが殺されるようなホラーでした(笑)。とはいえ、自分自身は虫も殺せないタイプで、菜食主義者で平和主義者だし、誰かを傷つけるなんてもってのほかだと思っているし、人に対する思いやりもすごく持っていると自負しています。ところが自分の脳は、フィクションを描くとなると、なぜか居心地の悪いところに行ってしまうんです。それはエモーショナルな葛藤をはらんだ物語にとても引かれるからだと思います。強烈な、ダークなものを表現した本を読んだり映画を見ると何か得るものがあるし、自分がその体験をしなくてよかったという気持ちにもなりますよね。ストーリーに関しては、とにかく自然に降りてくる感じです。頭の中に常にいろんなアイデアが浮かんできて、中には何物にもならないものもありますが、自分はそういうタイプです。

-今回は、あえて時系列を崩してチャプターを入れ替えるという作り方をしていました。これは編集ができる映画ならではの表現だと思いますが。

 長年一緒に仕事をしているクリストファー・ロビン・ベルという編集者が、僕が撮った映像のニュアンスをくんでくれて、それをさらに高めてくれていますが、この映画に関しては、完成した映画の時系列のままに僕の頭の中に降りてきました。普段は結末が分からない状態では脚本は書き始めないのですが、今回は頭の中に浮かんだ時系列のままを脚本にしました。最初から時系列をバラバラにしようと考えていたわけではなくて、頭の中に降りてきた順番がそうだったというだけの話です。監督によっては、たくさん撮った映像を編集者のところにそのまま持っていって、編集室で物語を探す人もいますが、僕は自分が何を作りたいのかがはっきり見えていないとできないタイプです。クリスもそのことはよく分かっているので、脚本を渡した時も特にそれをいじろうとはしませんでした。ただスタジオ側が、これでは観客が分からないんじゃないかと、勝手に時系列の順番通りに編集をしてモニター試写に回したのですが不評だったそうです(笑)。

-確かに時系列通りだったらつまらない映画になったかもしれません。『ゴッドファーザーPARTⅡ』(74)や『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』(84)を時系列通りにしたバージョンを見たことがありますが面白くありませんでした。

 その通りです。僕もそう思います(笑)。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

舞台「キングダムII ―継承―」三浦宏規・高野洸・山本千尋・山口祐一郎、「死力を尽くさなければいけない」作品に再び挑む【インタビュー】

舞台・ミュージカル2026年6月12日

 累計発行部数1億2000万部を突破した、原泰久による大ヒット漫画を原作とした舞台の第2弾となる「キングダムII ―継承―」が、8月9日から上演される。本作は、苛烈な戦乱の中にある中国・春秋戦国時代を舞台に、戦災孤児の少年・信と、のちの始皇 … 続きを読む

「豊臣兄弟!」第22回「播磨大誤算」戦国の世の難しさを印象付けた播磨攻略戦【大河ドラマコラム】

ドラマ2026年6月11日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「豊臣兄弟!」。戦国時代、主人公・豊臣秀長(=小一郎/仲野太賀)が、兄・秀吉(池松壮亮)を支え、兄弟で天下統一を成し遂げるまでの軌跡を描く物語は快調に進行中。小一郎と秀吉が播磨攻略に難渋する様子を描いた6月7 … 続きを読む

山本耕史、「RENT」に続き全編英語上演に挑む「ゼロからのスタートだけどやるしかない」 日米合作ブロードウェイミュージカル「フル・モンティ」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2026年6月11日

 山本耕史が、ゆりやんレトリィバァとブロードウェイで活躍するキャストとともに挑む、日米合作ブロードウェイミュージカル「フル・モンティ」が、8月19日から上演される。本作は、1997年に映画をもとに誕生し、トニー賞作品賞を含む9部門にノミネー … 続きを読む

吹越満 俳優になった理由は「映画に出たかったから」昭和の文豪・谷崎潤一郎原作の『鍵』で主演【インタビュー】

映画2026年6月10日

 数々の映画やテレビドラマ、舞台まで幅広く活躍し、その顔を見ない日はないと言っても過言ではない名優・吹越満。その主演作『鍵』が、6月12日から公開となる。  吹越演じる主人公・剣持耕三は、医師から余命半年の宣告を受け、その恐怖を忘れるため、 … 続きを読む

【映画コラム】5月の公開映画から

映画2026年6月5日

『サンキュー、チャック』 (5月1日公開)★★★ チャックとは一体何者なのか  大規模な自然災害と人災が次々と地球を襲い、世界は終わりを迎えつつあった。すると、街頭やテレビ、ラジオに突如として、「チャールズ・クランツに感謝します。素晴らしい … 続きを読む

page top