「いい意味で、宮藤さんに裏切られました」阿部サダヲ(田畑政治)「最終章はニトロのエンジンを積んでアクセル全開」中村勘九郎(金栗四三)【「いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~」インタビュー】

2019年10月27日 / 07:00

 10月27日放送の第40回から、いよいよ1964年の東京オリンピックに向けた最終章へ突入する大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~」。1年にわたる物語を引っ張ってきたのは、田畑政治と金栗四三という2人の主人公を演じる阿部サダヲと中村勘九郎だ。長期間にわたる撮影を終えた2人が、作品を振り返りつつ、最終章の見どころを語ってくれた。

金栗四三役の中村勘九郎(左)と田畑政治役の阿部サダヲ

-この作品を通して、オリンピックとはどんなものだと感じましたか。

阿部 田畑さんのせりふに「2週間かけてやる盛大な運動会」という言葉がありましたが、それでいいんじゃないかなと。閉会式で各国の選手たちが一つになって入場するのも、64年の東京オリンピックから始まったそうですが、さまざまな国の選手たちが和気あいあいと写真を撮り合う姿を見て、文句を言う人は誰もいませんよね。だから、「世界中の人たちが集まる運動会」というのは、すごくいいな…と。最初はあれほど「メダルを取れ!」と言っていた田畑さんも、最終的には「予選で落ちる選手たちにも、一生の思い出になるような大会にしたい」と言うようになりますから。成長してくれてよかったな…と(笑)。

勘九郎 「一番面白いこと」ではないでしょうか。アスリートである金栗さんはもともと、勝つことだけを考えていたはずです。でも、ストックホルムは途中で棄権し、リベンジを誓ったベルリンは中止、アントワープでは16位に終わるなど、結局、オリンピックでは勝てませんでした。それでも、三島さんと2人で初めてオリンピックに参加したときのことや、アントワープで選手団の人数が増えたことなど、最終的には喜びの方が大きかったと思うんです。僕も、やっていてすごく楽しかったですし。だから、第40回以降の台本を読むと、純粋に「面白いことをやりたい」という田畑さんのストレートな言葉が心に突き刺さってきました。

-この作品を通して感じた宮藤官九郎さんの脚本の魅力は?

阿部 毎回、ものすごく内容が詰まっているんですよね。2回分ぐらいあるんじゃないかと思うほど、ものすごい量を1話に詰め込んでいる。それでも書き終わった後、宮藤さんは「まだ書き足りない」と言っているんです。それはすごいな…と。また、僕は宮藤さんがそれほどスポーツ好きだとは思っていなかったので、アスリートを応援するような気持ちになり、泣けることにも驚きました。周りの感想を聞いても、「泣けた」という人が多くて…。笑いのイメージが強かったので、始まる前に僕は「日曜夜8時に笑いが起こる」と言っていましたが、間違っていましたね(笑)。いい意味で、宮藤さんに裏切られました。

勘九郎 悲劇的なことや、感動的な場面で、「このままずっと泣いていたら、疲れちゃうな…」と思っていると、最後に笑いでふっと和らげてくれるんです。そこに、宮藤さんの優しさを感じました。そんなふうに感情をいろいろな方向に揺さぶってくれるので、やっていても楽しいですし、見ていても毎回面白くて「もう終わっちゃった…」という感じです。

-第2部ではお二人が共演するシーンも何度かありましたが、感想は?

勘九郎 田畑さんと一緒のシーンは、どれも濃密でした。初めて会ったパリ五輪の報告会では、田畑さんが嘉納(治五郎)先生(役所広司)に背負い投げされ(第25回)、東京オリンピック返上の話が持ち上がった際には、金栗さんが新聞社に乗り込んでいって、互いの思いをぶつけ合い…(第37回)。立場は異なりますが、「オリンピックが好き」という気持ちでは通じ合っている2人なので、やっていてすごく楽しかったです。

阿部 第27回で、田畑さんが金栗さんを認めるシーンがありましたよね。「替り目」という落語に合わせて「元祖オリンピックは、三千世界広しと言えども、金栗四三ただ一人だ」と語る場面。これについて勘九郎さんのクランクアップのとき、(生田)斗真くん(三島弥彦役)が、「一人じゃなくて、僕も行ってるんだけど…」と悲しそうに語っていたのが印象的でした。「家で見ていて、びっくりした」って(笑)。

勘九郎 ものすごく悲しそうでしたね(笑)。最終回でも金栗さんと田畑さんが顔を合わせる場面がありますが、それも面白かったです。

阿部 おじいさんになった金栗さんとのやり取りが面白いので、ぜひ楽しみにしてください。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

「今回は、極上のエンターテインメントを作ったつもりです」 『悪は存在しない』濱口竜介監督【インタビュー】

映画2024年4月19日

 長野県の自然豊かな高原を舞台に、代々つつましい生活を続けてきた住民の、レジャー施設の開発をめぐる生活の変化を描いた『悪は存在しない』が、4月26日から全国公開される。本作で第80回ベネチア国際映画祭のコンペティション部門で銀獅子賞に輝いた … 続きを読む

【週末映画コラム】気持ちのいい人情喜劇『あまろっく』/山田太一の小説をイギリス人監督が映画化『異人たち』

映画2024年4月19日

『あまろっく』(4月19日公開)  理不尽なリストラに遭い尼崎の実家に戻ってきた39歳の近松優子(江口のりこ)は、定職に就くことなくニートのような毎日を送っていた。  ある日、「人生に起こることはなんでも楽しまな」が信条の能天気な父・竜太郎 … 続きを読む

小関裕太&岡宮来夢、念願のロミオ役に「プレッシャーも力に変えて頑張りたい」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2024年4月19日

 上演の度に大きな話題を呼ぶミュージカル「ロミオ&ジュリエット」の3年ぶり6度目の上演が決定。5月16日に東京・新国立劇場 中劇場で幕を開ける。  本作は、2001年にフランスで生まれ、世界20カ国以上で600万人以上を動員したメガヒットミ … 続きを読む

「自由に映像を撮れることを楽しんでいる作品だと思います」 山本奈衣瑠『走れない人の走り方』【インタビュー】

映画2024年4月18日

 映画監督の小島桐子はロードムービーを撮りたいと思っているが、限られた予算や決まらないキャストなど、数々のトラブルに見舞われる。理想と現実がずれていく中で、彼女はある選択をする。台湾出身で日本に留学し、東京藝術大学大学院映像研究科で学んだ蘇 … 続きを読む

若手注目俳優の佐藤瑠雅&坂井翔、「どこにでもいる男の子たちの何気ない生活を描いた」“じれキュン”ラブストーリー「彼のいる生活」【インタビュー】

ドラマ2024年4月18日

 「仮面ライダーギーツ」の桜井景和/仮面ライダータイクーン役で注目された佐藤瑠雅と、ドラマ「ジャンヌの裁き」に出演し高い演技力が話題となった坂井翔がW主演するドラマ「彼のいる生活」がTOKYO MX、ABEMA、各配信サイトにて現在放送・配 … 続きを読む

Willfriends

page top