「幻の東京オリンピックがあったことを初めて知りました」塚本晋也(副島道正)【「いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~」インタビュー】

2019年10月7日 / 14:33

 1938(昭和13)年、オリンピック招致の中心的存在だった嘉納治五郎(役所広司)を失った日本は、日中戦争の激化に伴い、既に決まっていた東京開催を返上する。周囲の状況を冷静に判断し、嘉納の遺志を受け継いだ田畑政治(阿部サダヲ)らの反対を押し切って返上を決断したのは、IOC委員でもある伯爵の副島道正。ここまで副島を演じてきた塚本晋也が、役に込めた思い、作品を通じて感じたことなどを語ってくれた。

副島道正役の塚本普也

-副島道正とはどんな人物でしょうか。

 副島さんのことは、僕も今回初めて知りました。ケンブリッジ大学を卒業し、帰国後、当時の宮内省に入省したという大変博学な方。家柄的にも伯爵家という地位で、知性と品位を併せ持ち、西洋の文化や語学にも精通する国際的なセンスを見込まれてIOC委員となったようです。

-事前にどんな準備を?

 副島さんについて残されている資料を、少しですが読ませていただきました。そこから受けたのは、体は弱くても、かくしゃくとしてブレない人だったのでは…という印象。そういう部分は脚本にも生かされていたようです。また、副島さんの父親は、旧佐賀藩士から明治政府に登用された人物だと伺っています。そこから、江戸時代の武士の名残と、明治維新の気風みたいなものを受け継いでいる人では…と想像しました。イタリアの首相ムッソリーニから「サムライ」と声を掛けられたのも、副島の中ににじみ出る気迫があったためではないでしょうか。

-役については、どんなふうに捉えて演じましたか?

 副島は、ひ弱なようで信念の人。ただ、最初はどう演じようか、ほぼノープランでした(笑)。脚本を読んだ印象では、どちらかというとクールな人柄で、周囲とは一定の距離を取りながらも、次第にオリンピック招致の熱狂の渦に取り込まれていく感じなのかな…と。とはいえ今回は、現場で信頼できる監督さんたちの言葉を聞き漏らさないようにしながら、その期待に応えようと演技をしていくうちに、役どころが徐々に分かっていった部分も大きかったです。「オリンピック開催を譲ってほしい」とムッソリーニに直談判するシーン(第33回)では、「絞り出すような強さがほしい」と言われました。そんなふうに、撮影現場の熱い“うねり”の中で役をつかんでいったような気がします。

-宮藤官九郎さんの脚本の印象は?

 念願の宮藤作品に出演させていただくことができ、とてもうれしかったです。「あまちゃん」(13)も、たっぷり楽しんでいましたから。出演して分かったのですが、宮藤さんの脚本はどのキャラクターも立っている上に、それぞれが複雑に絡み合って物語が加速度的に面白くなっていく。そんなところが魅力だなと。だからこそ、演じる側は誰もがワクワクするし、生き生きと演じることができるんでしょうね。ただ、副島は英語やフランス語で話す場面も多いので、現場では緊張しっぱなしでした(笑)。

-冷静な副島でしたが、徐々に嘉納治五郎と田畑政治に影響されていきましたね。

 何事にも動じないはずの副島が、嘉納さんと田畑の熱狂的なオリンピック招致への思いに次第に取り込まれて行く…。この2人、すごいなと(笑)。演じている役所広司さんと阿部サダヲさんも素晴らしい。2人の演技をこんなに間近で見ることができて、ワクワクしました。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

川口春奈、高杉真宙「自分や家族、周りの人たちを大事にしようと思うきっかけになったらうれしいです」『ママがもうこの世界にいなくても 私の命の日記』【インタビュー】

映画2026年10月1日

 大腸がんによって24歳で他界した遠藤和(のどか)さんが亡くなる10日前までつづり続けた手記を映画化した『ママがもうこの世界にいなくても 私の命の日記』が、10月2日から全国公開される。本作で、主人公の和と夫の将一を演じた、川口春奈と高杉真 … 続きを読む

木戸大聖「悲しいと思っていてもそれを表情に出せないのが難しかったです」『沖晴くんの涙を殺して』【インタビュー】

映画2026年10月1日

 余命1年の音楽教師・京香(広瀬アリス)と、喜び以外の感情を失った高校生・沖晴が織りなす、切なくも温かい感動の人生賛歌『沖晴くんの涙を殺して』が10月2日から全国公開される。本作で、訳あり高校生の沖晴を演じた木戸大聖に話を聞いた。 -沖晴の … 続きを読む

小瀧望「ファンの皆さまの声に応え続けたい」 舞台「ロックンロール」では「僕たちの芝居とともに、当時のロックミュージックも楽しんで」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2026年9月30日

 小瀧望が主演する舞台「ロックンロール」が、11月6日から上演される。本作は、世界的な劇作家トム・ストッパードが祖国チェコスロバキアを舞台に、20年以上にわたる歴史のうねりを描きながら、自由の尊さをうたう物語。愛するロックンロールと母親を守 … 続きを読む

佐津川愛美「酒井監督に惚れました(笑)」念願だった酒井麻衣監督との初タッグ『時給三〇〇円の死神』【インタビュー】

映画2026年9月30日

 10月2日から全国公開となる『時給三〇〇円の死神』は、累計発行部数36万部を突破した藤まるの同名小説を原作にしたファンタジーだ。生きる希望を失った大学生・佐倉真司(西畑大吾)が、謎めいた同級生・花森雪希(福本莉子)に誘われ、この世に未練を … 続きを読む

【K-POPもKドラマも深読みしたら韓国が見えた】#受験競争だけではない韓国の教育問題、「鉄槌教師」が問う教師の役割

2026年9月29日

 K-POPや韓国ドラマは、エンターテインメントであると同時に、韓国社会を映す鏡でもある。何気ない言葉やしぐさ、習慣の背景をたどると、その国ならではの価値観や歴史、人との関わり方が見えてくる。この連載では、韓国カルチャーを入り口に、知ってい … 続きを読む

page top