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1938(昭和13)年、オリンピック招致の中心的存在だった嘉納治五郎(役所広司)を失った日本は、日中戦争の激化に伴い、既に決まっていた東京開催を返上する。周囲の状況を冷静に判断し、嘉納の遺志を受け継いだ田畑政治(阿部サダヲ)らの反対を押し切って返上を決断したのは、IOC委員でもある伯爵の副島道正。ここまで副島を演じてきた塚本晋也が、役に込めた思い、作品を通じて感じたことなどを語ってくれた。
副島さんのことは、僕も今回初めて知りました。ケンブリッジ大学を卒業し、帰国後、当時の宮内省に入省したという大変博学な方。家柄的にも伯爵家という地位で、知性と品位を併せ持ち、西洋の文化や語学にも精通する国際的なセンスを見込まれてIOC委員となったようです。
副島さんについて残されている資料を、少しですが読ませていただきました。そこから受けたのは、体は弱くても、かくしゃくとしてブレない人だったのでは…という印象。そういう部分は脚本にも生かされていたようです。また、副島さんの父親は、旧佐賀藩士から明治政府に登用された人物だと伺っています。そこから、江戸時代の武士の名残と、明治維新の気風みたいなものを受け継いでいる人では…と想像しました。イタリアの首相ムッソリーニから「サムライ」と声を掛けられたのも、副島の中ににじみ出る気迫があったためではないでしょうか。
副島は、ひ弱なようで信念の人。ただ、最初はどう演じようか、ほぼノープランでした(笑)。脚本を読んだ印象では、どちらかというとクールな人柄で、周囲とは一定の距離を取りながらも、次第にオリンピック招致の熱狂の渦に取り込まれていく感じなのかな…と。とはいえ今回は、現場で信頼できる監督さんたちの言葉を聞き漏らさないようにしながら、その期待に応えようと演技をしていくうちに、役どころが徐々に分かっていった部分も大きかったです。「オリンピック開催を譲ってほしい」とムッソリーニに直談判するシーン(第33回)では、「絞り出すような強さがほしい」と言われました。そんなふうに、撮影現場の熱い“うねり”の中で役をつかんでいったような気がします。
念願の宮藤作品に出演させていただくことができ、とてもうれしかったです。「あまちゃん」(13)も、たっぷり楽しんでいましたから。出演して分かったのですが、宮藤さんの脚本はどのキャラクターも立っている上に、それぞれが複雑に絡み合って物語が加速度的に面白くなっていく。そんなところが魅力だなと。だからこそ、演じる側は誰もがワクワクするし、生き生きと演じることができるんでしょうね。ただ、副島は英語やフランス語で話す場面も多いので、現場では緊張しっぱなしでした(笑)。
何事にも動じないはずの副島が、嘉納さんと田畑の熱狂的なオリンピック招致への思いに次第に取り込まれて行く…。この2人、すごいなと(笑)。演じている役所広司さんと阿部サダヲさんも素晴らしい。2人の演技をこんなに間近で見ることができて、ワクワクしました。
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