エンターテインメント・ウェブマガジン
映画『男はつらいよ』シリーズの主人公といえば、誰もが知っている車寅次郎。その生みの親である山田洋次監督が小説で描いた寅さんの少年時代をドラマ化した「少年寅次郎」が10月19日(土)からNHK総合で放送開始となる。寅次郎出生の秘密から、戦争をはさんだ悪ガキ時代、そして最愛の妹さくらに見送られて葛飾柴又の駅から旅立つまでの物語。今回、脚本を担当した岡田惠和に話を聞いた。
『男はつらいよ』シリーズのDVDマガジンに連載されていた山田洋次監督のエッセー小説(「けっこう毛だらけ 小説・寅さんの少年時代」)を読んでいたときに、企画の一つとしてこれはどうだろうかと思いました。それで立候補した感じです。小説を読んだときは、恐らく山田さんはご自分で映画化するつもりなんだろうなと感じました。ただ、それから何年たっても映画化の話が出てこなかったので、では提案してみようかと。朝ドラの企画を考えるときに、半年間で描かなくてもいい企画がたくさんあって、このドラマも凝縮した形でできるのではないかと思いました。山田さんにも快諾していただきました。
フィクションなのに、みんなが知っている人の少年時代、いわばエピソードゼロを書くわけですから、難しかったです。僕が考えていいのかなという思いもありましたが、『男はつらいよ』シリーズをあまり知らない世代が見ても面白くなければならない、というところが大事なのかなと考えました。
基本的には、物語の強さを信じるしかないのですが、この子があの人=寅さんになるんだということを楽しむだけでなく、一人の男の子の誕生から家出するまでの話を、当時の家族の、特に母と息子の物語として描けば、『男はつらいよ』をよく知らない人にも興味を持ってもらえると思いました。それから、このドラマの最後で家出した寅ちゃんが、20数年ぶりに戻ってくるところから映画は始まるわけですから、全く知らない人が、このドラマとのつながりで映画を見てみたいと思ってくれれば、それはそれで幸せなことだと思います。
基本的には、世界観も含めてちゃんと映画とつながるように作っていると思いますし、映画が好きな人が見ればクスッと笑えるようなことがたくさんちりばめられています。ただ、それが内輪受けにならないように、普通の人が見ても面白いと思えるようにしたいと考えました。それから、このドラマの光子(井上真央)は映画には出てきませんから、そこは僕に任されている感じなので、ドラマを見て「あーそうだったんだ」と思ってもらえるとうれしいです。
もちろんです。ほぼ一晩お話しました。あの頃の子どもたちの遊び方を教えていだだいたりもしました。脚本を書く前にお会いしたのですが、「岡田くんの中のファーストシーンは何?」と聞かれました。原作は映画監督の山田さんが、自分だったらこう撮ると思って書いたものでしょうから、その全てを僕が引き受けてしまったらやばいと思ったので、適度に聞いて適度に忘れるようにしました(笑)。
日本の国宝級の名優たちのお芝居が見られます。また、劇中では毎度おなじみのことが起きるわけですが、そこを楽しむということだと思います。だから、今回も「くるまや」という団子屋の中での役者たちの芝居を見たいと思いました。そこにいる人間たちのいろいろな感情が、見る人の心を打つのだと思います。それから、みんな適度に駄目なところがあるし、本気でけんかをするところも含めて楽しいですね。
好きなものはたくさんありますが、ベストとなるとやはり『~寅次郎 夕焼け小焼け』(76)かな。何度見てもマドンナの太地喜和子さんが好きです。もし寅さんが誰かと結ばれるとすれば、太地さんがいいなあと思うぐらい。シナリオ的にもパーフェクトな感じがします。逆に若尾文子さんがマドンナをやった『~純情篇』(71)は、寅さんに対して全く気持ちが動いていない、何とも思っていないところが、罪作りな感じがして面白かったです。脚本家仲間でよく話題になるのは『~寅次郎相合い傘』(76)のメロン騒動。コメディーの手本のようなシーンです。
映画2025年6月12日
広島を訪れた謎のアメリカ人観光客と地元の若者たちが出会い、過去と現在が交錯していく様子を描いた、時川英之監督による愛と平和のファンタジー『惑星ラブソング』が6月13日から全国公開される。本作で、主人公のモッチを演じた曽田陵介と、ヒロインの … 続きを読む
ドラマ2025年6月6日
毎週金曜深夜24時12分からテレ東系で放送中の「ディアマイベイビー~私があなたを支配するまで~」は、芸能界を舞台に、自らが発掘した新人俳優・森山拓人(野村康太)にのめり込んでいくベテランマネジャー、吉川恵子(松下由樹)の狂気的な愛を描いた … 続きを読む
映画2025年6月6日
『国宝』(6月6日公開) 九州の任侠の家に生まれた喜久雄(黒川想矢/吉沢亮)は、15歳の時に抗争で父を亡くし天涯孤独の身となるが、彼の天性の才能を見抜いた上方歌舞伎の名門の当主・花井半二郎(渡辺謙)が家に引き取る。 喜久雄は半二郎の跡取 … 続きを読む
映画2025年6月5日
古都・京都を舞台に、老舗扇子店の長男と結婚し、東京から引っ越してきたフリーライターの澁澤まどかが引き起こす大騒動を描いたシニカルコメディー『ぶぶ漬けどうどす』が6月6日から全国公開される。本作で京都を愛するあまり暴走してしまう主人公のまど … 続きを読む
映画2025年6月4日
ジューン・スキッブが93歳で映画初主演を果たし、オレオレ詐欺師に立ち向かうテルマおばあちゃんの奮闘を描いたコメディー映画『テルマがゆく! 93歳のやさしいリベンジ』が、6月6日から全国公開される。本作でテルマと仲がいい孫のダニエルを演じた … 続きを読む