【インタビュー】ドラマ「少年寅次郎」脚本・岡田惠和「この父母の間で生きてきたから、あの寅さんになるんだなと思いました」

2019年10月18日 / 17:00

 映画『男はつらいよ』シリーズの主人公といえば、誰もが知っている車寅次郎。その生みの親である山田洋次監督が小説で描いた寅さんの少年時代をドラマ化した「少年寅次郎」が10月19日(土)からNHK総合で放送開始となる。寅次郎出生の秘密から、戦争をはさんだ悪ガキ時代、そして最愛の妹さくらに見送られて葛飾柴又の駅から旅立つまでの物語。今回、脚本を担当した岡田惠和に話を聞いた。

車光子役の井上真央(左)と車寅次郎役の(藤原颯音)

-脚本を担当することになった経緯を教えてください。

 『男はつらいよ』シリーズのDVDマガジンに連載されていた山田洋次監督のエッセー小説(「けっこう毛だらけ 小説・寅さんの少年時代」)を読んでいたときに、企画の一つとしてこれはどうだろうかと思いました。それで立候補した感じです。小説を読んだときは、恐らく山田さんはご自分で映画化するつもりなんだろうなと感じました。ただ、それから何年たっても映画化の話が出てこなかったので、では提案してみようかと。朝ドラの企画を考えるときに、半年間で描かなくてもいい企画がたくさんあって、このドラマも凝縮した形でできるのではないかと思いました。山田さんにも快諾していただきました。

-有名な寅さんの子ども時代を書くに当たって心掛けたことは?

 フィクションなのに、みんなが知っている人の少年時代、いわばエピソードゼロを書くわけですから、難しかったです。僕が考えていいのかなという思いもありましたが、『男はつらいよ』シリーズをあまり知らない世代が見ても面白くなければならない、というところが大事なのかなと考えました。

-では、どうすれば『男はつらいよ』をあまり知らない人たちにアピールできると考えましたか。

 基本的には、物語の強さを信じるしかないのですが、この子があの人=寅さんになるんだということを楽しむだけでなく、一人の男の子の誕生から家出するまでの話を、当時の家族の、特に母と息子の物語として描けば、『男はつらいよ』をよく知らない人にも興味を持ってもらえると思いました。それから、このドラマの最後で家出した寅ちゃんが、20数年ぶりに戻ってくるところから映画は始まるわけですから、全く知らない人が、このドラマとのつながりで映画を見てみたいと思ってくれれば、それはそれで幸せなことだと思います。

-逆に、『男はつらいよ』シリーズをよく知っている人たちに向けては?

 基本的には、世界観も含めてちゃんと映画とつながるように作っていると思いますし、映画が好きな人が見ればクスッと笑えるようなことがたくさんちりばめられています。ただ、それが内輪受けにならないように、普通の人が見ても面白いと思えるようにしたいと考えました。それから、このドラマの光子(井上真央)は映画には出てきませんから、そこは僕に任されている感じなので、ドラマを見て「あーそうだったんだ」と思ってもらえるとうれしいです。

-山田洋次監督とはお会いになりましたか。

 もちろんです。ほぼ一晩お話しました。あの頃の子どもたちの遊び方を教えていだだいたりもしました。脚本を書く前にお会いしたのですが、「岡田くんの中のファーストシーンは何?」と聞かれました。原作は映画監督の山田さんが、自分だったらこう撮ると思って書いたものでしょうから、その全てを僕が引き受けてしまったらやばいと思ったので、適度に聞いて適度に忘れるようにしました(笑)。

-『男はつらいよ』シリーズの魅力とは?

 日本の国宝級の名優たちのお芝居が見られます。また、劇中では毎度おなじみのことが起きるわけですが、そこを楽しむということだと思います。だから、今回も「くるまや」という団子屋の中での役者たちの芝居を見たいと思いました。そこにいる人間たちのいろいろな感情が、見る人の心を打つのだと思います。それから、みんな適度に駄目なところがあるし、本気でけんかをするところも含めて楽しいですね。

-『男はつらいよ』シリーズの中で特に印象に残っているものやエピソードは?

 好きなものはたくさんありますが、ベストとなるとやはり『~寅次郎 夕焼け小焼け』(76)かな。何度見てもマドンナの太地喜和子さんが好きです。もし寅さんが誰かと結ばれるとすれば、太地さんがいいなあと思うぐらい。シナリオ的にもパーフェクトな感じがします。逆に若尾文子さんがマドンナをやった『~純情篇』(71)は、寅さんに対して全く気持ちが動いていない、何とも思っていないところが、罪作りな感じがして面白かったです。脚本家仲間でよく話題になるのは『~寅次郎相合い傘』(76)のメロン騒動。コメディーの手本のようなシーンです。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

戸塚祥太&辰巳雄大、ビートルズの結成初期を描いた「BACKBEAT」がついにFINAL 「今回だけのビートがそこに生まれる」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2026年3月26日

 戸塚祥太と辰巳雄大が出演する「BACKBEAT」が、4月17日から開幕する(プレビュー公演は4月12日)。本作は、世界的ロックバンド・ビートルズの結成初期を描いた1994年公開の伝記映画『BACKBEAT(バックビート)』をイアン・ソフト … 続きを読む

木村佳乃「私が声優をやるなら小田急線のロマンスカーがいいです」『映画 きかんしゃトーマス いっしょに歌おう! ドレミファ♪ソドー島』【インタビュー】

映画2026年3月25日

 イギリス生まれの絵本を原作に、世界中の子どもたちに愛される児童向けアニメ「きかんしゃトーマス」の劇場版最新作『映画 きかんしゃトーマス いっしょに歌おう! ドレミファ♪ソドー島』が3月27日から全国公開される。ソドー島で開かれる音楽祭のリ … 続きを読む

【映画コラム】3月前半の公開映画から『私がビーバーになる時』『ウィキッド 永遠の約束』『スペシャルズ』

映画2026年3月24日

『私がビーバーになる時』(3月13日公開)  人間の意識を動物ロボットに転送し、本物の動物たちと話すことができる技術が開発された時代。 大切な森を守るため、ビーバー型ロボットに意識を転送した動物好きの女子大生メイベル・タナカは、動物たちが人 … 続きを読む

天宮沙恵子プロデューサー「最終話では、ようやく未来と颯太の間で明かされる真実があります」火曜ドラマ「未来のムスコ」【インタビュー】

ドラマ2026年3月24日

 TBS系で毎週火曜日の午後10時から放送中の火曜ドラマ「未来のムスコ」が、24日に最終話を迎える。本作は、夢も仕事も崖っぷちのアラサー女性・汐川未来(志田未来)のもとに、“未来のムスコ”だと名乗る颯太(天野優)が現れたことから始まる、時を … 続きを読む

佐々木大光「新たな気持ちで、フラットに見ていただけるとうれしい」 悔しい気持ちを乗り越えて挑む「ダッドシューズ 2026」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2026年3月24日

 KEY TO LITの佐々木大光が主演する「ダッドシューズ 2026」が4月16日から上演される。2025年、惜しくも完走できなかった本作がさらにパワーアップして復活。“ダッドシューズ”と呼ばれる古臭いデザインのシューズを手に入れた主人公 … 続きを読む

page top