「杉村は数カ国語を使いこなす外交官。説得力のある話し方や振る舞い方を心掛けました」加藤雅也(杉村陽太郎)【「いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~」インタビュー】

2019年9月2日 / 14:38

 1940(昭和15)年のオリンピック開催地の座をローマと争う東京。だが、劣勢に追い込まれた東京は、嘉納治五郎(役所広司)発案による「ローマに譲ってもらう」という起死回生の策を実行するため、イタリアの首相ムッソリーニとの直談判に臨んだ。ここで一度は話がまとまったものの、IOC総会で思わぬ反撃を受け…。このとき、イタリア大使としてムッソリーニとの交渉の成立に尽力したのが、嘉納の弟子でもある外交官の杉村陽太郎だ。演じる加藤雅也が、撮影の舞台裏について語ってくれた。

杉村陽太郎役の加藤雅也

-1940年の東京オリンピック招致のため、イタリアの首相ムッソリーニと交渉するなど尽力した杉村ですが、苦戦しましたね。

 外交官である杉村は、日本の国益のため、オリンピック招致に尽力しました。政治の世界では、国家元首である首相や大統領が一言「OK」と言えば、全てがクリアされたことになる。それが、ムッソリーニと交渉した際に感じた手応えだったと思います。ただ、その通りにはいかなかった。田畑(政治/阿部サダヲ)のような「平和の祭典」という視点が欠けていたんでしょう。自分が得意としてきた政治的外交とは違う、という事実を突き付けられたのではないでしょうか。

-さらに、開催地決定の掛かったIOC総会では、療養中の嘉納治五郎の欠席が痛手となりました。杉村にとって、師である嘉納とはどんな存在だったのでしょうか。

 嘉納先生は柔道家として超一流なだけでなく、人間的にも周囲から慕われています。杉村はそういう嘉納先生の姿から、外交にも力だけでなく人柄が必要だと気付く。それと同時に、そこが嘉納先生と自分の差だということも理解したに違いありません。

-それは、具体的にどんなことでしょうか。

 実は今回、講道館まで行って柔道の稽古をつけていただきました。その際、改めて「押して駄目なら引く」ということを、身をもって学びました。組んだとき、力でねじ伏せるのが無理なら引くのも手である、というのは柔道家ならではの発想だな…と。柔道の「柔」は「やわら」とも読みますが、嘉納先生の発想も常に柔らかくて柔道的。そこは、杉村も柔道家として一番ふに落ちた部分ではないでしょうか。つまり、嘉納先生は柔軟な分、セオリーと違うことができる。でも、杉村はセオリー通りにしかできない。やっぱり、嘉納先生の方が一枚上手ですよね。

-改めて、杉村陽太郎という人をどんなふうに捉えていますか。

 今回、出演が決まって初めてその名を知ったのですが、杉村さんは大正から戦前の昭和にかけて外交官として活躍した人。当時、海外の要人と対等に渡り合える交渉能力を持ち、立ち振る舞いにおいてもインターナショナルなものを完璧に身につけていたわけですから、相当の人物だろうなと。杉村さんに関する資料はあまり残っていませんが、残っているものについては、参考として読ませていただきました。IOC委員に選ばれるだけあって、やはり文武両道に秀でた方だったようです。

-演じる上で心掛けたことは?

 この作品で描かれている杉村は、一流の社交家です。その上、ムッソリーニとも対等に渡り合うほどですから、ある意味、自信家とも言える。演じる際は、英語について「外交官的に話すように」と言われましたが、難しかったです。もちろん、指導は受けましたが、それがどのぐらいできているのかは分かりません(笑)。ただ、外交官として英語だけでなくフランス語やイタリア語など、数カ国語を使いこなす役柄なので、細かいアクセントよりも、説得力のある話し方や振る舞い方をするように心掛けました。

-田畑政治との関係は、初対面でいきなり投げ飛ばす(第32回)など、良好とはいえない雰囲気ですね。

 講道館で柔道を学んだ杉村にとって、嘉納先生に“タメ口”をきく田畑の姿は「日本男児として、礼を失したあるまじき行為」と映ったに違いありません。正直なところ、体育会系の感覚としては「なんだこいつ!?」といったあたりが本音だったのではないでしょうか。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

【インタビュー】『決算!忠臣蔵』中村義洋監督「お金がなくて困る大石内蔵助と、自分のお金を勝手に使われてしまう瑤泉院という構図を思いついたとき、『コメディーになる!』と」

映画2019年11月20日

 日本人なら誰もが知る時代劇「忠臣蔵」。亡き主君・浅野内匠頭に忠義を尽くし、あだ討ちを果たした赤穂浪士たちの物語は、これまで幾度となく映像化され、多くの人々の心を動かしてきた。ところが、その「忠臣蔵」を令和の時代によみがえらせた『決算!忠臣 … 続きを読む

【2.5次元】ミュージカル『テニスの王子様』3rdシーズン 全国大会 青学(せいがく)vs立海 後編 ついに完結へ 阿久津仁愛インタビュー 自信あふれるテニミュ愛「本当にこれが青春」

舞台・ミュージカル2019年11月15日

 ミュージカル『テニスの王子様』3rdシーズン 全国大会 青学(せいがく)vs立海 後編が、12月19日~24日の東京公演を皮切りにスタートする。青春学園中等部と立海大附属中学校による全国大会決勝戦の戦いを描く本作では、2勝2敗と混戦を極め … 続きを読む

【インタビュー】映画『影踏み』山崎まさよし “俳優”と見られることに「腹をくくった」 尾野真千子 “薄幸役”に自信「見せてやろうじゃない!」

映画2019年11月13日

 「半落ち」「64-ロクヨン-」などの横山秀夫の同名小説を実写映画化した、孤高の泥棒が事件を解き明かす異色の犯罪ミステリー『影踏み』で、プロの窃盗犯として生きる真壁修一役で主演を務めた山崎まさよしと、修一と恋仲の久子役で共演した尾野真千子。 … 続きを読む

【インタビュー】映画『いのちスケッチ』 佐藤寛太 一流俳優との共演を経て高みを目指す

映画2019年11月13日

 福岡県大牟田市に実在する、動物福祉に特化した世界的にも珍しい動物園を舞台に、「命」の物語をつむぐ映画『いのちスケッチ』。主演の佐藤寛太(劇団EXILE)は、これまで恋愛・青春映画に多数出演してきたが、今回は夢破れて故郷に帰るものの、家族や … 続きを読む

【2.5次元】「デスノート THE MUSICAL」高橋颯インタビュー、初ミュージカルに向けた思い「意地でも食らいついてやる」

舞台・ミュージカル2019年11月13日

 2020年1月20日から東京建物 Brillia HALLのこけら落としシリーズとして上演される「デスノートTHE MUSICAL」。夜神月役の村井良大&甲斐翔真に続き、エル役の高橋颯に、作品への思い、そして初ミュージカルへの意気込みを聞 … 続きを読む

page top