「第2部は競技が水泳に変わり、『前畑ガンバレ!』の名シーンが登場。僕と金栗さんが思いをぶつけ合う見せ場もあります」阿部サダヲ(田畑政治)【「いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~」インタビュー】

2019年6月30日 / 20:50

 いよいよ第2部がスタートした「いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~」。日本初のオリンピック選手・金栗四三(中村勘九郎)が主役を務めた第1部を受け、関東大震災後から1964年の東京オリンピック開催までの歴史が描かれていく。主人公は、新聞記者でありながら水泳日本チームの総監督を務め、東京オリンピック招致に尽力する田畑政治。演じる阿部サダヲが、主演への意気込み、第2部の見どころなどを語ってくれた。

田畑政治役の阿部サダヲ

-いよいよ第2部が始まりました。意気込みのほどを。

 第25回からガラッと雰囲気が変わりましたが、僕自身は思い切りやるしかないという気持ちでいます。田畑さんはえたいの知れない人で、何をするか分からないようなところがあるので、僕も何をするか分からないような感じでやりたいなと。でも、現場にはそれを受け止めてくれる役者の方々がたくさんいらっしゃるので、すごく楽にやっています。

-第2部の見どころは?

 第1部では陸上を中心に、体育教育や女子スポーツの普及といった知られざる歴史が描かれてきました。第2部では競技が水泳に変わってオリンピックの話題が中心です。選手の数も増えて、皆さんがよく知る「前畑ガンバレ!」の名シーンも登場するなど、メダルをたくさん取ってくるようになります。それと同時に、避けては通れない五・一五事件や二・二六事件など、戦争の歴史も描かれていきます。田畑としては、「オリンピックを招致したいが、本当にそれでいいのか、この国は」といった感じにもなってくるので、その辺の心情をどう演じればいいのか、難しさを感じているところです。

-田畑政治は、第1部の主人公・金栗四三と正反対のキャラクターで、一気にまくしたてるしゃべりに圧倒されます。演じる上で心掛けていることは?

 「彼は口が“いだてん”だな」という嘉納治五郎(役所広司)さんのせりふがあったので、そのイメージに合わせようと。実際のご本人も、何を言っているのか分からない人だったそうなので(笑)。ただ、その通りにして本当に何を言っているのか分からなくなると、視聴者の方に伝わらないので、ぎりぎりのところを狙いたいなと。撮影のときも、何を言っているか分からなくなると、スタッフによく注意されます(笑)。バランスが難しいところですが、なるべく「考えるよりも先に口に出る」といった雰囲気を出せたら…と思っています。

-動きに関してはいかがでしょうか。

 しゃべりながらマッチに火を付けて、たばこを逆に吸って、「熱っ!」…。こういう芝居をタイミングよくやるのは、なかなか大変です。火を付ける道具はライターではなくマッチだし、そのマッチも時代考証がきちんとされているから、点火のためのやすりが片側にしかついていない。芝居をしていると、やすりの向きが分からなくなるんです。せりふも決まった時間の中に収めなければいけませんし…。でも、その難しさに挑戦するのが楽しいですね。ある種、「このタイミングまでに火を付けなければいけない」という競技をしているみたいで、時々アスリートのような気持ちになります(笑)。

-ところで、第25回には田畑が金栗さんと初対面する場面もありましたが…。

 いきなりけんかを売っていましたね(笑)。初対面で「あの老いぼれ、まだ走ってるの?」みたいなことを言うので、勘九郎さんもびっくりしていました(笑)。

-今後、田畑と金栗さんは、どんなふうに関わっていくのでしょうか。

 主役が交代したといっても、金栗さんの出番が終わるわけではなく、まだまだ登場があります。少し先になりますが、金栗さんと田畑が正面から向き合い、オリンピックに対する思いを対等な立場でぶつけ合うシーンがあります。撮影はこれからですが、勘九郎さんがどんなお芝居をされるのかも含めて、僕も楽しみにしています。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

板垣李光人「最初から、戦争を考えて見るのではなく、実際に見て感じたことを広めていっていただければ、それが一番うれしいです」『ペリリュー ―楽園のゲルニカ―』【インタビュー】

映画2025年12月5日

 戦争がもたらす狂気を圧倒的なリアリティーで描き、第46回日本漫画家協会優秀賞を受賞した武田一義の戦争漫画をアニメーション映画化した『ペリリュー ―楽園のゲルニカ―』が12月5日から全国公開された。太平洋戦争末期、激戦が繰り広げられたペリリ … 続きを読む

【物語りの遺伝子 “忍者”を広めた講談・玉田家ストーリー】(8)百年ぶりの復活へ 四代目が掲げた三つの大願

舞台・ミュージカル2025年12月4日

 YouTubeもNetflixもない時代、人々を夢中にさせた“物語り”の芸があった——。“たまたま”講談界に入った四代目・玉田玉秀斎(たまだ・ぎょくしゅうさい)が、知られざる一門の歴史物語をたどります。    2016年に四代目・玉田玉秀 … 続きを読む

多部未華子「学びの多い現場でした」DV被害者役に挑んだヒューマンミステリー「連続ドラマW シャドウワーク」【インタビュー】

ドラマ2025年12月1日

 WOWOWで毎週(日)午後10時より放送・配信中の「連続ドラマW シャドウワーク」は、佐野広実の同名小説を原作にしたヒューマンミステリー。  主婦の紀子は、長年にわたる夫の暴力によって自己喪失し、すべて自分が悪いと考えるようになっていた。 … 続きを読む

森下佳子「写楽複数人説は、最初から決めていました」脚本家が明かす制作秘話【大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」インタビュー】

ドラマ2025年12月1日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」。“江戸のメディア王”と呼ばれた“蔦重”こと蔦屋重三郎(横浜流星)の波乱万丈の生涯を描く物語は、まもなくクライマックスを迎える。これまで、いくどとなく視聴者を驚かせてきたが、第4 … 続きを読む

富田望生「とにかく第一に愛を忘れないこと」 村上春樹の人気小説が世界初の舞台化【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年11月30日

 今期も三谷幸喜の「もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう」に出演するなどドラマや映画で注目を集め、舞台やさまざまなジャンルでも活躍する富田望生。その富田が、2026年1月10日から上演する舞台「世界の終りとハードボイルド・ワンダ … 続きを読む

Willfriends

page top