「関東大震災後、孝蔵や小梅と一緒に夜を過ごすシーンでは、自然に感情が湧き上がってきました」峯田和伸(清さん)【「いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~」インタビュー】

2019年6月23日 / 20:50

 第24回で「いだてん」第1部がついに完結。関東大震災に見舞われながらも、被災者を元気づけるために開催された復興運動会には、これまでの主な登場人物が勢ぞろい。希望を感じさせる結末に、第2部への期待を高めた視聴者も多いことだろう。その復興運動会開催に際して、外苑バラックの自治会長として活躍したのが清さん。ごく普通の庶民でありながら、主人公・金栗四三(中村勘九郎)と、語りを務める美濃部孝蔵(森山未來)をつなぐ役割を担い、明るく元気なキャラクターで物語を盛り上げてきた。演じるのは、ミュージシャンとしても活躍する峯田和伸。これまでの撮影を振り返ってくれた。

清さん役の峯田和伸

-ついに第1部が完結しました。ここまでで最も印象的だったシーンは?

 関東大震災の後、生き延びた清さんと小梅(橋本愛)が孝蔵を呼んで、バラックで夜、一緒に酒を飲むシーンです。とにかく、セットがすごかった。がれきの山とバラックが建っている中に、土煙まで上がって、ものすごくリアルな雰囲気。しかも、そこに暮らしている人たちのすすり泣きが聞こえたり、ハモニカを吹いていたりと、実際にこうだったんじゃないかと錯覚するほどで…。本当にその状況に置かれたような気持ちになり、ちょっと気を許すと泣いてしまいそうでした。だから、「どう演じよう…?」と考えるまでもなく、自然に感情が湧き上がってせりふを言うことができました。

-清さんが小梅と結婚したのは、意外な展開でした。

 台本を読んだときは、うれしかったですね。セットでは橋本愛さんと一緒にいることが多いので、よく世間話をしています。お互いの結婚観みたいな話もしました(笑)。ただ、現場では、橋本さんとしゃべっているというよりも、小梅としゃべっているような気がします。

-ここまで演じてきた感想は?

 放送を見て「こんな感じだったのか」と気付くことが多いですね。自分がどう映っているのかを見て、「もう少しこうした方がいいな」とよく考えています。その中でも大きいのが、音楽。「自分が出ているシーンには、こんな音楽がかかるから、そういう気分で演じてみよう…」と。関東大震災後の場面も、沈んだ雰囲気の中、清さんだけは逆境に負けず、明るく元気に演じてみましたが、それも音楽からインスピレーションを受けたもの。音楽を担当されている大友良英さんは、撮影現場にもよく来ているので、もしかしたら僕が演じているのを見て、そこからイメージして作曲しているのかもしれません。

-その大友さんの音楽に対する印象は?

 僕が初めて役者として出演した映画の音楽を担当していたのが大友さん。それ以来、何度か一緒に仕事をしていますが、音楽からイメージして演じている部分があるので、本当に助かっています。浅草の繁華街の場面では、大友さん自身がチンドン屋の格好をして、バンジョーを弾いていたことが何度かあるんです。そうすると、僕たちの気持ちもやっぱり盛り上がる。放送を見ると、エキストラの人たちもすごくいい顔をしている。それもきっと、音楽のおかげでしょうね。

-第24回にも大友さんたちが出演していましたね。

 大友さんたちが演奏していたのは、「復興節」という歌。震災の後ではやったそうです。ただそれは、「涙をこらえて、みんな頑張ろう」といった内容ではなく、震災自体を皮肉るような歌詞。そういうブラックな歌が生まれているところに、「ただじゃ終わんねえぞ!」という人間のたくましさを感じました。劇中でもその歌をみんなで歌いながら踊るシーンがありましたが、改めて音楽の力はすごいな…と。

-ところで、ご自身の役作りはどのように?

 僕は山形出身ですが、東京の人に比べて、東北の人はもっとしょっぱい感じです。でも、清さんはごく普通の東京の庶民。だから、僕のしょっぱい部分を薄味にして、庶民的な感じを出したいと思って、浅草の人をイメージしながら、(古今亭)志ん生や志ん朝など、昭和の落語家の落語を毎日聴いていました。

 
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