【インタビュー】『新聞記者』シム・ウンギョン「松坂さんとの芝居のキャッチボールが楽しかった」松坂桃李「もっとこういう社会派の作品があってもいいのでは」

2019年6月25日 / 12:00

 ある日、新聞社に政府の極秘文書が届く。差出人は不明。記者の吉岡エリカは、真相の調査に乗り出すが、その過程で行き当たった一人の政府職員が自殺する。一方、その職員の後輩であり、内閣情報調査室に勤務する杉原拓海は、尊敬する元上司の死に衝撃を受けていた。やがて知り合った吉岡と杉原は、協力して事件の真相を調べ始めるが…。6月28日から新宿ピカデリー、イオンシネマほか全国ロードショーとなる『新聞記者』は、東京新聞の記者・望月衣塑子の同名ベストセラーを原案にした社会派サスペンスだ。新聞記者・吉岡エリカを演じたシム・ウンギョンと、内閣情報調査室職員・杉原拓海を演じた松坂桃李が、撮影の舞台裏を語ってくれた。

シム・ウンギョン(ヘアメイク:遠山美和子/スタイリスト:Babymix)(左)と松坂桃李(ヘアメイク:AZUMA(M−rep by MONDO-artist)/スタイリスト:丸山晃)

-新聞記者、内閣情報調査室という職業を演じるに当たって、どんな準備をしましたか。

シム 一度、新聞社を見学させていただきました。実際に記者の方々と話をして、日々新聞を発行するのがいかに大変なことか実感できました。また、新聞記者を主人公にした『スポットライト 世紀のスクープ』(15)というハリウッド映画も参考にしています。この映画には大きな影響を受けましたが、中でも印象的だったのが、マーク・ラファロさんのお芝居。自由でありながら、本物の記者に見えるところが素晴らしかった。私もそんなふうに演じたいと思い、いろいろとトライしました。

松坂 内閣情報調査室という職場は、リサーチしても分からないんです。調べれば調べるほど、分からないということが分かってくる(笑)。藤井(道人)監督もいろいろな方にインタビューをするなど、入念な準備をしてくれましたが、やっぱりこの仕事はベールに包まれた部分が大きい。だから僕は、台本に描かれている杉原の揺れ動く感情の一つ一つを、しっかり表現することを心掛けました。

-お互いに共演した感想は?

シム 松坂さんは、メークをして衣装を着て、現場に立った姿が杉原そのもの。非常に真面目で、熱量も高い。そういう部分に驚き、私自身もものすごく影響を受けました。松坂さんは普段は笑顔の優しい方ですが、現場に立つと目が変わる。だから、目を合わせるだけでも、きちんとした芝居ができました。私が出す感情を受けて、自分の感情を作る。そういう芝居のキャッチボールが、とても楽しかったです。

松坂 僕も全く同感です(笑)。ワンシーンの中で、カットごとに緊張感が高まる感じがありました。いい意味で空気が変わっていくんです。みんなでそういう空気を作り上げていく中で、ウンギョンさんから受け取る感情や言葉、表情によって、僕の熱量も変わってくる。だから、一瞬も気が抜けませんでした。

-藤井道人監督とはどんなやり取りをしたのですか。

シム 自由に芝居ができるように、俳優に委ねてくれる部分が多かったです。私は気になると相談したくなるタイプですが、監督は私の話をきちんと聞いてくれたし、私が考える吉岡のキャラクターを表現できるように、そういう場を作ってくださいました。私は吉岡を演じる上で、誰もが抱くオーソドックスな記者のイメージをなぞるようなことはしたくありませんでした。ただ、監督自身の考えもあったので、実際の記者の方に聞いたお話を参考にしつつ、2人で相談して吉岡の性格や癖を一つ一つ決めていきました。悩んだときに吉岡が消毒液を手に塗るしぐさなどは、その一つです。

松坂 現場でディスカッションすることが多かったです。一度お芝居をやってみて、監督がそれを見て、「ここはこういう動きで、もっと強い気持ちで」というふうに指示をくださる。とはいえ、厳しい雰囲気ではなく、ニコニコと笑顔で接してくれましたが妥協はしない方なので、要求は決して優しくなかったですね(笑)。

-最近の日本映画では珍しい社会派の作品ですが、お2人は社会派と呼ばれる作品については、どんな思いを持っていますか。

シム 映画やさまざまなメディアには表現の自由があると思います。映画だからこそ伝えられるものがあると思うので、その表現の自由を頂いてきた作品はとても大切。でも、まずはお客さんに映画を楽しんでほしいです。

松坂 映画は、いろいろなことに興味を持つ入り口にもなります。こういう社会派と呼ばれる作品をきっかけに視野が広がると、自分の物差しが少しだけ広がったり、心のゆとりができたりする。そういう意味で、日本にももっとこういう作品があってもいいのではないかと思います。その一方で、この作品には現実の社会を連想させる部分もあるので、こうして取材を受ける中で、プレッシャーや責任をものすごく感じています。この作品を伝えていくに当たり、どういう文言がベストなのか。その答えは、自分の中でもまだ出ていません。監督や製作サイドの意図しない形で伝わってしまうのは、僕にとっても不本意なので…。撮影が終わってからこんなに考えた作品は、初めてです。とても難しく、今も考え続けているところです。

 
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