江口のりこ「主人公の桃子に共感する方も多いのでは」森ガキ侑大監督「桃子の姿が今の時代とリンクした」ベストセラー作家、吉田修一の小説を映画化『愛に乱暴』【インタビュー】

2024年8月28日 / 12:00

(C)2013 吉田修一/新潮社 (C)2024「愛に乱暴」製作委員会

-完成した映画からは、桃子の切実さがひしひしと伝わってきました。お2人の間で桃子をどのように作り上げていったのでしょうか。

江口 ほぼ順撮り(物語の展開通りの順番で撮影すること)で撮影を進めてくださったことは、すごくありがたかったです。

-というと?

江口 最初は、朝、お義母さんにあいさつしてゴミを出し、夫の真守さんを送り出す、という場面が3、4日くらい続きました。その時点では、誰にも会わないので「桃子ってどういう人なんだろう?」と手探りの状態なんですよね。そこから撮影が進み、いろんな人と出会うことで桃子が動き出し、「桃子のキャラクターなら、こういう感じかな?」とだんだん見えてくる。そうすると、それまでの撮影で桃子という人間を体験している分、「次はこんな反応をするかな?」とアイデアが出てくるんです。そうやって生まれたものについて、監督と相談しながら桃子が出来上がっていきました。

森ガキ 事前に準備はしていましたが、江口さんからもいろんなアイデアをいただいたおかげで、撮影に入ってからより具体的に桃子像が見えてきた気がします。

江口 そういう意味では、みんなで桃子を作っていった感じですね。私がお芝居にストレスを感じているときも、皆さんがすぐに察してくれましたし。しかも、今回はフィルム撮影で何度も撮り直しができないため、手持ちカメラで至近距離から撮影しているカメラマンさんの緊張が、手に取るように伝わるんです。それによって、私の方もいい具合に、体の中に桃子が1本通るような気持ちになって。そんないい緊張感がありました。

-スクリーンサイズが4:3のスタンダードという、最近では珍しいスタイルも特徴的です。

森ガキ 観客には桃子の視点で映画に没入してほしかったので、余計なものは見せず、桃子と周囲の俳優や美術だけで表現できるように、スタンダードサイズを採用しました。しかも、江口さんがおっしゃるように、フィルムだといい緊張感が生まれますし、肌の質感の奥深い部分まで映るのも効果的でした。

 

(C)2013 吉田修一/新潮社 (C)2024「愛に乱暴」製作委員会


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