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まひろと道長のやり取りは、強度のある長いシーンが多いのですが、吉高さんのお芝居には毎回、「こういう表情になるのか」と驚かされると共に「だったら道長はこういう表情になるな」と新たな発見をさせてもらっています。そんなふうに、2人のシーンでは、吉高さんに多くのものを引き出してもらっています。
内裏で「源氏物語」を執筆するまひろを撮影しているときの吉高さんは、“超”紫式部です(笑)。美しい立ち姿はもちろんですが、それ以上なのが執筆中の姿。スタジオで座って筆の練習をしている吉高さんを初めて見た時、有名な紫式部の像そっくりで、驚いたほどです。しかも、撮影が進むにつれ、それがどんどん奥行きを増している気がして。まひろが本気で「源氏物語」に取り組んでいるときのお芝居には、圧倒されっぱなしです。
まひろが内裏に上がってからは、距離が近づき、まひろの局を訪れる機会も増えるので、今まで築いてきたソウルメイトとしての信頼関係が、より強固になっている印象があります。
大石(静/脚本家)さんや制作統括の内田(ゆき)さんから、事前に「そうなるかも」と聞いてはいました。最終的に決定したと聞いたときは、非常に大きなポイントでもあることから、皆さんの覚悟を感じ、そういう決断をするこのチームがより好きになりました。
これまで言われてきたヒール的な人物像とは異なる人間味あふれる道長としてスタートし、巡り巡ってついに権力の頂点に立ちました。ただ、政治的な工作を引き受けてきた姉の詮子が亡くなり、さまざまな問題を1人で抱え込むようになった今、当初の政治に前のめりではないのんびり屋の“三郎”としての人間性が、より大事になってきたと感じています。
頂点には立ったものの、「民のためのよき政を行う」というまひろとの長年の約束を果たすには、彰子を入内させたときのような政治的な工作を自ら行わなければなりません。ただそうすると、本来の道長らしさとは乖離(かいり)した部分が、嫌でも出てこざるを得ない。それを僕自身、演じながら肌で感じているところですが、それは同時に、道長の悩みともリンクするような気がしています。とはいえ、頂点にいる今も、元々備わっている“三郎”としての人間性は変わらないはず。だからこそ、最近は“三郎”の部分をより意識するようになってきました。
道長が「父上と同じことはしたくない」と言う場面も何度か出てきますが、「結果的に同じようなことをしている」ということと「そうはなりたくない」ということの整合性をどう保つのか。その点は非常に根の深い問題です。僕自身は今、家のために政をしていた兼家に対して、自分は民のための良き政をする、という出発点の違いで整合性をとって演じているところです。ただ、それが最終的にどうなるのか、最終回まで終わってみないとわかりません。そのとき、何か見えてくるものがあるのか、僕自身も楽しみにしています。
(取材・文/井上健一)
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