田中真弓「70歳、新人のつもりで頑張っています」憧れだった朝ドラレギュラー出演 連続テレビ小説「虎に翼」【インタビュー】

2024年7月26日 / 15:00

-「女の幸せ」という稲の一連のせりふは、田中さんご自身の生き方と相反するようにも感じますが。

 友人たちから「真弓が絶対に言わない言葉だな。お前は絶対に反対側だな」という連絡がいくつもきましたし、自分でもそう思いました。女性は結婚や出産を機に、それまでの人生を諦めなければいけないというのは理不尽だと思いますし、私自身も自分の人生を大事にしてきましたから。「今は時代が違う」と言っても、まだまだ男性優位な部分は多いですし。それを正そうと第一歩を踏み出してくれたトラちゃん(のモデルになった三淵嘉子さん)たちの思いを私たちが受け継ぎ、男女の区別なく、誰もが公平に生きられる社会を、みんなで作っていけたらいいですね。

-花江や寅子と向き合う再登場後の稲の気持ちについて教えてください。

 劇中でも語られるように、稲に夫はいたものの、子どもはいなかったことを考えると、子どもの頃から世話してきた花江ちゃんが立派に成長したことは、心からうれしかったに違いありません。自分が育てたような気持ちでいたでしょうし。トラちゃんのことも心配していたので、母親になり、仕事を頑張っているトラちゃんの力になれることを、稲は喜んだはずです。優未ちゃんが慕ってくれることもうれしくて、本当の孫のように思っていたでしょうね。

-伊藤沙莉さんの印象は?

 ものすごく細やかな気遣いをされる方です。映像の演技に慣れていない私が、カメラ位置が変わるたびに「どうしたらいいのかな?」と戸惑っていると、「私もわかりませんけど、こうなると思います」と、とても自然に、私が負担に感じないような教え方をしてくださるんです。その上、一番大変なはずなのに、いつも明るく笑っていらっしゃって。沙莉ちゃんの笑顔には、いつも救われます。

-演じていて難しいと感じることはありますか。

 「間」の取り方が難しいですね。アニメでも洋画でも、声優は自分で間を作るのではなく、他人のしゃべる間に合わせて声を入れていくのが仕事です。でも、テレビドラマの場合、自分で間をとってせりふを言わなければなりません。私はそれに不慣れなため、うっかり沙莉ちゃんのせりふを食い気味にしゃべってしまったことがあるんです。「失敗した」と思って謝ったら、沙莉ちゃんは「いや、私が遅かったんです」と気遣ってくれて。とてもすてな座長です。

-そのほか、撮影時の印象的なエピソードがあれば教えてください。

 岡田将生(星航一役)くんが、私が声を当てているアニメのキャラが大好きだったらしいんです。初めて現場でご一緒したとき、そんなそぶりは全く見せなかったのに、次にメイクルームでお会いしたときにそれがわかって。有名なセリフを言ってあげたら、ものすごく感激してくれたので、私もうれしかったです。

-最後に視聴者の方に向けてメッセージを。

 私も毎朝放送を見て、勇気と元気をもらっています。男性、女性問わず、元気になれる作品だと思うので、皆さんにもご覧いただき、ぜひ日々の活力にしていただけたらうれしいです。

(取材・文/井上健一)

(C)NHK

  • 1
  • 2
 

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

生田斗真が驚きの一人二役!「最初から決まっていたわけではありません」制作統括・藤並英樹氏が明かす舞台裏【大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」インタビュー】

ドラマ2025年12月8日

-治済に対する仇討ちのため、対立関係にあった蔦重と松平定信(井上祐貴)がタッグを組む展開にも驚かされると同時に、思わず胸が熱くなりました。 藤並 白河藩に戻った後の定信は、それまでとは打って変わって、大田南畝や山東京伝に本を書かせているんで … 続きを読む

板垣李光人「最初から、戦争を考えて見るのではなく、実際に見て感じたことを広めていっていただければ、それが一番うれしいです」『ペリリュー ―楽園のゲルニカ―』【インタビュー】

映画2025年12月5日

-戦場で、田丸が絵や漫画を描くことにどのような意味があったと思いますか。  功績係に任命された田丸には、もちろん何かを書き記すという使命感もあったでしょうが、いつ自分や仲間が命を落とすか分からない状況の中で、自分の世界の中で向き合えるものが … 続きを読む

【物語りの遺伝子 “忍者”を広めた講談・玉田家ストーリー】(8)百年ぶりの復活へ 四代目が掲げた三つの大願

舞台・ミュージカル2025年12月4日

 YouTubeもNetflixもない時代、人々を夢中にさせた“物語り”の芸があった——。“たまたま”講談界に入った四代目・玉田玉秀斎(たまだ・ぎょくしゅうさい)が、知られざる一門の歴史物語をたどります。    2016年に四代目・玉田玉秀 … 続きを読む

多部未華子「学びの多い現場でした」DV被害者役に挑んだヒューマンミステリー「連続ドラマW シャドウワーク」【インタビュー】

ドラマ2025年12月1日

  -雰囲気のいい現場だったようですね。  中でもしのぶさんは、「これはこういうことなのかな?」といった感じで、積極的に質問をされるんです。その上、「私、緊張しちゃう」などと、ご自身の気持ちを織り交ぜながら現場にいてくださるので、私も質問が … 続きを読む

森下佳子「写楽複数人説は、最初から決めていました」脚本家が明かす制作秘話【大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」インタビュー】

ドラマ2025年12月1日

  ―確かにその通りですね(笑)。  ただ、大半は史実通りですが、(小田)新之助(井之脇海)とふく(=うつせみ/小野花梨)ととよ坊の一家、序盤に登場した蔦重の恩人の花魁・朝顔(愛希れいか)など、一部に私が創作したオリジナルキャラもいます。と … 続きを読む

Willfriends

page top