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それまでは自分のやりたいことをやっていればいいんだという思いで生きてきましたが、今はお客さんが自分に対して何を望んでいるのかを考えながらやるようにはなりました。やっぱり客ありきの世界なので。今回の個展も、自分が客として2000円払うんだったら、たくさんの絵を見たいだろうとか、自分が客だったら?ということは、常に考えています。ひとり芝居をしたことで人前で表現することの厳しさは、身に染みたんですよ。(その後)シアターコクーンの芸術監督になって、自分の作品のことだけを考えていればいい状況ではなくなったことも、商業演劇をやっているんだという意識が自分の中で強くなったきっかけだったのだと思います。またいつか傲慢(ごうまん)な人間に戻るかもしれませんが、今はそういうモードになっています。
生きていくためのものとしか言いようがないですね。
何を書こうということではなかったです。自分がそのときに思いついたストーリーをみんなでやりましょうということでしたので。その後、笑いとテレビや映画では見られない重層的な話という2本柱でやっていくというのは、自然と定まっていったように思います。いずれにしろ、笑いというもので勝負していきたいという思いはあります。子どもの頃からお笑いが好きだったので、コメディアンになりたいという気持ちもどこかにあったんですよ。ただ、演劇が一番居心地がいい場所だったので、気が付いたらやっていたというような感覚でした。
浮かばなくて悩むということはあまりないかもしれません。何か一つに取り掛かっていると、次のアイデアが頭に浮かんできてしまって、携帯のメモに書きつけているので。あとで読むと何を書いているのか自分でも分からないことがありますが、浮かんでいることは確かなのだと思います(笑)。
映像に撮ったものは安定しているじゃないですか。動きようがないし、失敗しようがないものが展開されるわけですよね。でも、演劇は生身の人間がやるから、置きにいった演技をしているとすぐに退屈してしまうんです。練習のあとが見えると面白くない。なので、いかに今この場に新鮮でいられるのかが勝負どころなんだと思います。ただ、生なので、どうしても失敗する可能性が出てくる。その失敗する可能性があるものを見るというスリルが面白いんだ、と僕は思います。
稽古はふんだんにやるけれども、その上で、その舞台で今この瞬間を生きているということを見せられるかどうか。そこに生身の人間のスリルがあるんだと思います。稽古したことに安住して、置きにいく会話のやり取りを見ているとどうしても冷めてしまうので、そうならないものを僕は作ろうとしてるし、そういうものが面白い演劇だと思っています。
(取材・文・写真/嶋田真己)
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