「春画には人生の謳歌、生きとし生けるものへの謳歌みたいなところがある」内野聖陽、「弓子と一緒に覚醒していただけたらなと思います」北香那『春画先生』【インタビュー】

2023年10月10日 / 07:00

 江戸文化の裏の華である「春画」に魅せられた型破りな師弟コンビが織りなす春画愛を描いたコメディー『春画先生』が10月13日から全国公開される。本作で、春画の研究者で「春画先生」と呼ばれる芳賀一郎を演じた内野聖陽と、芳賀から春画鑑賞を学ぶ春野弓子を演じた北香那に話を聞いた。

(左から)内野聖陽〈ヘアメーク:佐藤 裕子 スタジオAD:スタイリスト中川原 寛CaNN〉と北香那〈ヘアメーク:南野景子/スタイリスト:橋爪里佳〉 (C)エンタメOVO

-最初にシナリオを読んだ時にどう思ったかということと、実際に演じてみて感じたことがあればお話しください。

内野 春画の研究者について、どんなものかのぞいてみたいというちょっとエッチな気持ちと、男女が出会うというお話自体にすごくロマンチックなものも感じました。ただ、最終的にはちょっと意表を突く作品だったので、戸惑いは隠せなかったというのが正直なところでした。でも、ほほ笑ましいおとぎ話のような感覚を持って、塩田(明彦)監督色に染め上げられてみたいという気持ちが強くなっていきました。

 芳賀一郎は自分の思いやくわだてを、全く表に出さずにいるキャラクターなので、その分、すごく心の声が多い人だなというふうに感じました。実際に演じてみると、監督から「もう少し、そぎ落とした感じでせりふを言ってほしい」とか、「もっと、ぶっきら棒に棒読みっぽく語ってほしい」とか、いろんな指示を受けました。

 それで、最初はちょっと難しくて、何度もテイクを重ねたところはあったんですけど、最終的には、なるほどこういう人なのね、というのは分かった感じはしました。本音の心の声が吹き出しのように現れたら、相当面白いキャラクターだなっていう気はしました。普通の男性が好みの女性に出会ったときに思う感覚と全く一緒なんだけど、それを押し殺しながら冒険をしている感じ。僕はこの映画は芳賀一郎先生の冒険譚だなというふうに捉えて演じていました。

 私はオーディションを受けて弓子役を頂いたのですが、脚本を読んだときに絶対にこの役を演じたいと、とても意気込んでいました。何も楽しいことなどないと思っていた24歳の女性の人生が、春画に出合い、先生に出会い、周りの人たちに出会い、ガラッと変わるというようなお話だったので、撮影に入る前からワクワク感がありましたし、すごく楽しみでした。でも、初めての挑戦だったので、私で大丈夫だろうか、私にできるのかなとちょっと不安もありました。

 それで撮影の初日に(芳賀家のお手伝いさん役の)白川和子さんとお会いしたときに、胸の内を少し話したんです。そうしたら「春画先生で演じているときの北香那は、北香那ではなく完全に弓子になる。その瞬間は北香那を捨て去る。弓子としてここにたどり着いて、自然な流れでこうなった。そう思ったら何も怖くないから」と言ってくださって。その力強いお言葉を頂いてふっと気持ちが楽になって、エンジンがかかりました。

内野 おお、すごい。白川さんにしか言えない言葉かもしれない。

-今回は、難役だったと思いますが、互いの演技を見て、どんな印象を持ちましたか。

 始めにリハーサルでお会いして、段階を踏む中で、内野さんの集中力や、監督のリクエストに応えたときの再現度、実現する力みたいなものを、目の当たりにした瞬間がありました。それを見て、どんどん先に行く内野さんに追いつかなければ、という焦りと憧れを感じました。でも、次は内野さんはどうくるのだろうという必死さもあり、刺激的な日々の撮影がすごく幸せでしたし、勉強にもなりました。

内野 映画を見てくだされば分かると思いますけど、一点の曇りもうそもなく、直情的な女性を気持ちよく演じる人だなというのをすごく感じたので、演じ手として、相手役として、とてもインスピレーションを頂いたというか、素晴らしい女優さんに、ただ共鳴させていただきました。

-この映画の主役は、ある意味春画だと思いますが、春画の魅力について、どんなふうに感じましたか。

内野 春画の歴史をかじったのは今回が初めてだったので、春画の見方が変わりました。男女の結合をあられもなく見せてしまうということで、表立って見てはいけないものとされていますが、春画の歴史をひもとくと、生命の謳歌(おうか)を表現したものなんだということを感じました。

 1人で淫靡(いんび)に、ムフムフしながら見るものではなくて、笑いながら見るもの。例えば、勉強が進まないときに、ふっと見て、心を緩やかにしてまた勉強に戻るとか、そういう使い方もできてしまうぐらい、その効用はすごいものだというふうに見直しました。それぐらい人をおおらかにさせる世界。一郎先生がせりふの中で言っているように、春画には人生の謳歌、生きとし生けるものへの謳歌みたいなところがあることがすごくふに落ちたし。決して目を背けるようなものではないと思いました。

 むしろ、縁起物としてお嫁に行くときに持たせるとか、戦争に行く人の懐に持たせるとか。戦地で弱気になったり、傷ついたりして弱気になったときに、春画を見て、頑張るぞってなれる。そういう前向きなもののシンボルみたいなところがあるというのが意外な発見でした。技術面から見ても、彫り師の技巧、版画の印刷など、ものすごい粋を集めた、日本の裏芸術だったということを、改めて勉強させてもらって、見方が変わりました。

 私も内野さんがおっしゃる通り、わいせつとか、そういうマイナスのイメージでは全くなくて、芸術作品として本当に素晴らしいものですし、もっと気軽に皆さんが見て楽しんでくれたらいいのかなと思います。春画はぱっと目を引くので、お店の壁紙とかにしてもいいですよね。

内野 年末の「第九」みたいに、年末に一度は春画を見なくちゃいけないとかね。そうするとおおらかになって、平和な日本になるとか(笑)。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

加藤シゲアキ「絶対に調べないで」 ネタバレ厳禁の主演舞台「2時22分ゴーストストーリー」に挑む【インタビュー】

舞台・ミュージカル2026年1月5日

 加藤シゲアキが主演する舞台「2時22分ゴーストストーリー」が2026年2月6日から上演される。本作は、2021年にロンドンで初演されて以来、斬新なストーリーが話題を呼び、世界各地で上演されているヒット作。日本ではオリジナル演出により初上演 … 続きを読む

白石聖「主人公の小一郎を形作るピースの一つとして存在できたら」大河ドラマ初出演で主人公の初恋の相手役【大河ドラマ「豊臣兄弟!」インタビュー】

ドラマ2026年1月4日

 NHKで1月4日からスタートした大河ドラマ「豊臣兄弟!」(NHK総合 毎週日曜 夜8時~ほか)。戦国時代ど真ん中、強い絆で天下統一の偉業を成し遂げた豊臣兄弟の奇跡を描く夢と希望の下剋上サクセスストーリーだ。主人公は豊臣秀長(=小一郎/仲野 … 続きを読む

平祐奈「こういう人間味のある役がやりたかった」 大西流星&原嘉孝との撮影は「ボケとツッコミのアドリブが楽しい」

ドラマ2026年1月2日

 なにわ男子の大西流星と、timeleszの原嘉孝がW主演する「東海テレビ×WOWOW 共同製作連続ドラマ 横浜ネイバーズ Season1」が、2026年1月から放送される。  本作は、令和版『池袋ウエストゲートパーク』として注目を集める岩 … 続きを読む

仲野太賀 念願だった大河ドラマ主演「頭の片隅にあった大きな夢が目の前に」1月4日スタート!【大河ドラマ「豊臣兄弟!」インタビュー】

ドラマ2026年1月1日

 1月4日からスタートする2026年の大河ドラマ「豊臣兄弟!」。(NHK総合 夜8:00~ほか ※初回15分拡大版)。主人公は豊臣秀長。戦国時代ど真ん中、強い絆で天下統一の偉業を成し遂げた豊臣兄弟の奇跡を描く夢と希望の下剋上サクセスストーリ … 続きを読む

ジェイソン・ステイサム ~絶滅危惧種のアクションスター~

映画2025年12月31日

自然体の魅力で今年もお正月の主役  もはや新年早々の風物詩になりつつある。ジェイソン・ステイサム主演のアクション映画のことだ。24年は『エクスペンダブルズ ニューブラッド』、2025年は『ビーキーパー』、そして今年26年は1月2日から『ワー … 続きを読む

Willfriends

page top