【インタビュー】舞台「醉いどれ天使」桐谷健太 12年ぶりに舞台に挑む「ライブ感を楽しんで演じたい」

2021年8月27日 / 08:00

 巨匠・黒澤明監督とその多くの作品に主演した三船敏郎が、初めてタッグを組んだ映画『醉いどれ天使』(48)が舞台化され、9月3日から上演される。本作は、先が見えない終戦直後の日本を舞台に、闇市を支配する若いやくざ・松永と、酒好きで毒舌な貧乏医師・真田がぶつかり合いながら、明日に向かって歩みを進めようとする姿を描く。松永を桐谷健太が、真田を高橋克典が演じ、演出は三池崇史が務める。三船が演じた松永に新たに息を吹き込む桐谷に、公演への意気込みを聞いた。

松永役の桐谷健太 (C)エンタメOVO

-本作の出演が決まった心境は?

 実は、三池さんが夢に出てきたことがあったんです。(夢の中で)「よろしく」と声を掛けられたので、僕も「どうも、よろしくお願いします」と返事をして、そこでそのときの夢は終わったんですが、すごく印象に残っていたので覚えていました。そうしたら、その1週間後ぐらいに、この作品のお話を頂いたんです。つながったなと僕の中では納得感がありましたし、ぜひやらせていただきたいと思いました。

-映画と舞台とでは、芝居も変わってくるとは思いますが、三船さんが演じた役を演じることにはプレッシャーはなかったですか。

 僕は誰が演じたからということはあまり考えないです。時代も違いますし、今回は脚本も蓬莱(竜太)さんが書いていて、映画とはまた違った素晴らしさのある脚本になっているので、自分は自分の松永を演じるという思いです。

-桐谷さんにとって、本作は約12年ぶりの舞台出演になりますが、久しぶりの舞台ということについてはどのような思いがありますか。

 意外と力みはないです。どう変わっていくんだろう、どうなっていくんだろうという楽しみの方が強いです。(取材当時)まだ稽古も始まってないので、どうなるのかは分かりませんが、今現在は、その時を生きて、ライブ感を大切に演じたいと思っています。もちろん、そのためにも稽古をして積み上げていくことが大事になりますが、例えば、公演中にその時々で感じるものを素直に出したいと思います。その瞬間、その公演でしか出せない松永があっていいと思うので、「その時」を大切に演じたいです。

-その瞬間を生きるためにも、根本となる役作りが大事になるかと思いますが、どのように役を作っていこうと考えていますか。

 もちろん、当時の資料を読んだり、戦争経験のある方のお話を読んだり聞いたりもしたいとは思っていますが、あまりこうだと決めつけ過ぎずに、挑戦的に挑みたいと思います。ビジュアル的なことも含めて、あまり決めつけてしまうと面白みが減ってしまうのではないかという思いもあるんです。舞台なので、自分の中で余白があって、それが時には埋まったり、普段と違うところが埋まったりとなったら面白いんだろうなと。今回は、演出が三池さんということもあって、決められたことを毎公演、同じようにやるというよりも、自分の中で新鮮な気持ちで楽しんで演じたいと思います。

-蓬莱さんの脚本を読んで、舞台版の魅力をどこに感じましたか。

 映画では、その時代を生きる人だからこそ分かることもすごくたくさんあったと思います。なので、現代を生きる僕たちが見たときに、これはなんだろうと思うところもあると思うのですが、蓬莱さんの脚本では、そういった現代の僕たちにはピンとこなかったところまでしっかりと描いているので、スッと染み込んできます。

-本作では、真田役の高橋さんと絡むシーンが多いと思いますが、高橋さんの役者としての印象は?

 不器用で口も悪くて酒好きな真田という役ですが、高橋さんの優しい笑顔が真田にもう一つの魅力を与えてくれると思います。僕は、高橋さんとお芝居で共演するのは初めてなので、まだまだ未知数だらけですが、だからこそ楽しみしかありません。

-今回はコロナ禍での上演になりますが、それについてはどんな思いがありますか。

 正直なところ、僕はコロナ禍ではないときにも、明治座のような劇場の舞台に立ったことがないので、どうなるのかは分からない部分もあります。ですが、いろいろな思いを抱えて来てくださるお客さまがたくさんいらっしゃると思うので、僕は役者として稽古に真摯(しんし)に臨んで、前向きに向き合っていきたいと思います。

-では、コロナ禍を通して、芝居や俳優という仕事に対する思いに変化はありましたか。

 俳優の仕事に対してということだけではありませんが、昨年の自粛期間は、自分のことを見つめられる期間にはなったと思います。その時間は自分を大きくしてくれたと思いますし、自分にとってはすごく必要だった時間でもあったとも思います。もちろん、大変な時期でしたし、いろいろな思いを抱えていらっしゃる方がいるので、一概に手放しでいい期間だったとも言えませんが。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

高橋一生、平山秀幸監督「アクションはもちろん、人間ドラマとしてもちゃんと娯楽性を持っている作品に仕上がっていると思います」「連続ドラマW 1972 渚の螢火」【インタビュー】

ドラマ2025年10月20日

 1972年、本土復帰を間近に控えた沖縄で、100万ドルの米ドル札を積んだ現金輸送車が襲われ行方を絶った。琉球警察は本土復帰特別対策室を編成。班長には、警視庁派遣から沖縄に戻って来た真栄田太一が任命される。班員は、同級生でありながら真栄田を … 続きを読む

オダギリジョー「麻生さんの魅力を最大限引き出そうと」麻生久美子「監督のオダギリさんは『キャラ変?』と思うほど(笑)」『THE オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ MOVIE』【インタビュー】

映画2025年10月17日

 伝説の警察犬を父に持つオリバーとそのハンドラーを務める鑑識課警察犬係の青葉一平(池松壮亮)のコンビ。だが、なぜか一平だけにはオリバーがだらしない着ぐるみのおじさん(オダギリジョー)に見えており…。  この奇想天外な設定と豪華キャストが繰り … 続きを読む

【映画コラム】初恋の切なさを描いた『秒速5センチメートル』と『ストロベリームーン 余命半年の恋』

映画2025年10月17日

『秒速5センチメートル』(10月10日公開)  1991年、春。東京の小学校で出会った遠野貴樹(上田悠斗)と転校生の篠原明里(白山乃愛)は、互いの孤独を癒やすかのように心を通わせていくが、卒業と同時に明里は栃木に引っ越してしまう。  中学1 … 続きを読む

大谷亮平「お芝居の原点に触れた気がした」北斎の娘の生きざまを描く映画の現場で過ごした貴重な時間『おーい、応為』【インタビュー】

映画2025年10月16日

 世界的に有名な天才浮世絵師・葛飾北斎。その北斎と長年生活を共にし、自らも絵師“葛飾応為”として名をはせた娘・お栄の生きざまを描いた『おーい、応為』が10月17日から全国公開となる。劇中、北斎(永瀬正敏)の弟子の絵師“魚屋北渓”として知られ … 続きを読む

黒崎煌代 遠藤憲一「新しいエネルギーが花開く寸前の作品だと思います」『見はらし世代』【インタビュー】

映画2025年10月15日

 再開発が進む東京・渋谷を舞台に、母の死と残された父と息子の関係性を描いた『見はらし世代』が10月10日から全国公開された。団塚唯我のオリジナル脚本による長編デビュー作となる本作で、主人公の蓮を演じた黒崎煌代と父の初を演じた遠藤憲一に話を聞 … 続きを読む

Willfriends

page top