【インタビュー】いのうえ歌舞伎「狐晴明九尾狩」向井理「挫折の連続だった」劇団☆新感線への思い「ここでしか見られない光景がある」

2021年8月26日 / 08:05

 2021年劇団☆新感線41周年興行 秋公演 いのうえ歌舞伎「狐晴明九尾狩」が、9月17日に開幕する。本作は、中島かずき書き下ろし、いのうえひでのり演出、中村倫也主演による伝奇時代劇。「キツネの子」を名乗る陰陽師・安倍晴明と、陰陽師に化けた九尾のキツネとの手練手管の頭脳戦を描く。陰陽師宗家の跡取りでありながら、九尾の妖ギツネに体を乗っ取られた賀茂利風を演じる向井理に、「髑髏城の七人 ~Season風~」(以下、「髑髏城」)に続いての出演となる劇団☆新感線への思いや、本作への意気込みを聞いた。

賀茂利風役の向井理

-脚本を読んで、本作についてどのような印象を持ちましたか。

 今回、(中島)かずきさんが、いわゆる“当て書”をしてくださったのですが、僕が「髑髏城」に出演したときに、「こういう悪役をやらせたい」と思っていただいたことから、このような役になったと聞いています。「髑髏城」のときも、途中からは悪役の要素の強い役でしたが、今回はまた違ったパターンの悪役です。アクションよりも頭脳戦がメインになっていて、(中村)倫也くんが演じる安倍晴明と僕が演じる九尾の化かし合いが描かれています。かずきさんのロジックな部分とネタの部分がしっかりと入った、頭を使う台本だと思いながら演じています。

-劇団☆新感線の作品には、今回が2度目の出演となりますが、それについてはどんな思いがありますか。

 僕はこれまで、同じ演出家さんとお芝居をしたことがなかったんです。なので、やはり再び呼んでいただけるということはすごく光栄なことだと思います。増してや、新感線ですし、断る理由はなかったです。呼んでいただけるのは、きっと何かしら面白がってくれたんだろうと思いますので、頑張りたいと思います。

-向井さんにとって新感線の舞台の魅力とは?

 舞台の緊張感は舞台でしか味わえないですし、終わった後の達成感というのもまた、舞台でしか味わえないものなので、僕にとってそれ自体が貴重なことですが、特に新感線の場合は、カーテンコールでのお客さまとの一体感が格別です。僕はこれまで(舞台では)エンターテインメント性の強い作品にあまり出演してこなかったので、「髑髏城」は初めての経験ばかりで、挫折の連続でした。これでいいのかずっと悩みながら、必死に食らいついて、ただ一生懸命に演じた作品でした。もちろん、今回もまた大変な稽古になるだろうと思いますが、ここでしか見られない光景があると思うので、そういう意味でも楽しみです。

-向井さんの演じる賀茂利風は、“九尾に体を乗っ取られた陰陽師”という複雑な役どころですが、現時点では、どんなところを意識して役を作っていこうと考えていますか。

 本当に難しい役です(笑)。利風として存在しているシーンもあり、完全に九尾に乗っ取られている状態のシーンもあって、さらに本当は九尾なのに利風だとだましているというシーンもあります。なので、僕は勝手に「ドラゴンボール」の魔神ブウをイメージして(笑)、第3形態ぐらいまであるキャラクターなんだと考えて、それをまずは使い分けすることからスタートしようと思っています。キャラクターの使い分けを整理していくと、膨大なせりふも入りやすくなるのかなと思います。

-ところで、昨年は新型コロナによって、出演予定だった舞台「リムジン」が公演中止となってしまいました。全公演中止は、役者としてもあまりない経験だと思いますが。

 コロナ禍では中止となってしまった公演はたくさんありましたが、僕自身も舞台だけでなく幾つか仕事がキャンセルになりましたし、いろいろと考えるところもありました。きっと(「リムジン」の演出家の)倉持(裕)さんは、僕の比でないほどショックだったと思いますが。

-そうした経験があったからこそ、今回の舞台への思いがより強くなるということはありますか。

 とにかく無事に完走したいという思いは、これまでとは違った重みを持ってあります。そのためにも、稽古場での感染対策もかなり気をつけてやっていますし、キャスト、スタッフを含めて徹底して対策をしていこうという意識は強く持っています。見に来てくださるお客さまのためというのはもちろんのこと、キャスト、スタッフの皆さんのためにも、千秋楽まで無事に乗り越えたいです。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

上白石萌歌「小さなお子さまから大人の方まで幅広く届いてほしいと思います」『トリツカレ男』【インタビュー】

映画2025年11月11日

 何かに夢中になると他のことが目に入らなくなってしまうジュゼッペ(声:佐野晶哉)は、街の人々から「トリツカレ男」と呼ばれている。ある日、ジュゼッペは、公園で風船売りをしているペチカに一目ぼれし、夢中になるが…。作家・いしいしんじの同名小説を … 続きを読む

八木莉可子「相反する二面性をどちらも大切にしたい」「終幕のロンド -もう二度と、会えないあなたに-」【インタビュー】

ドラマ2025年11月10日

 草なぎ剛主演の月10ドラマ「終幕のロンド -もう二度と、会えないあなたに-」(カンテレ・フジテレビ系/毎週月曜午後10時)。第3話で強烈なインパクトを残したゆずは(八木莉可子)の母(雛形あきこ)が、再びHeaven’s messenger … 続きを読む

目黒蓮が抱いた“継承への思い” 妻夫木聡、佐藤浩市から受け取った“優しさ”と俳優としての“居住い” 日曜劇場「ザ・ロイヤルファミリー」【インタビュー】

ドラマ2025年11月9日

 日曜劇場「ザ・ロイヤルファミリー」への出演発表時、“物語の鍵を握る重要な役どころ”という情報のみだった目黒蓮演じる謎の人物。そこから約2カ月、11月2日放送の第4話でようやくその正体の一端が解禁された。男の名は中条耕一、佐藤浩市演じる山王 … 続きを読む

堤真一、三宅唱監督「実はこういうことも奇跡なんじゃないのということを感じさせてくれる映画だと思います」『旅と日々』【インタビュー】

映画2025年11月6日

 三宅唱監督が脚本も手掛け、つげ義春の短編漫画『海辺の叙景』と『ほんやら洞のべんさん』を原作に撮り上げた『旅と日々』が11月7日(金)から全国公開される。創作に行き詰まった脚本家の李(シム・ウンギョン)が旅先での出会いをきっかけに人生と向き … 続きを読む

【映画コラム】俳優同士の演技合戦が見ものの3作『爆弾』『盤上の向日葵』『てっぺんの向こうにあなたがいる』

映画2025年11月1日

『爆弾』(10月31日公開)  酔った勢いで自販機を壊し店員にも暴行を働き、警察に連行された正体不明の中年男(佐藤二朗)。自らを「スズキタゴサク」と名乗る彼は、霊感が働くとうそぶいて都内に仕掛けられた爆弾の存在を予告する。  やがてその言葉 … 続きを読む

Willfriends

page top