【インタビュー】ドラマ「ペンションメッツァ」小林聡美「気持ちのいい場所で繰り広げられる物語を、ゆったりと楽しんでいただけたら」

2021年1月13日 / 10:00

 1月15日からWOWOWプライムで放送開始となるWOWOWオリジナルドラマ「ペンションメッツァ」(全6話)は、自然豊かな別荘地にあるペンションの主人テンコと、そこを訪れる客たちの交流を、温かなユーモアとのんびりとしたムードに包んで描いたドラマ。テンコを演じるのは、『かもめ食堂』(05)、「コートダジュールN゚10」(17)など、自然体の演技が独特の魅力を放つ小林聡美。毎回の多彩なゲストとの共演も見どころとなる本作の舞台裏を聞いた。

テンコ役の小林聡美

-全体に緩やかな時間が流れていて、ほっとするドラマですね。

 日常では、やらなければいけないことも多く、時間に追い立てられたりするのは仕方のないことかもしれません。でも、ちょっと目線を変えたり、見方を変えたりするだけで、目の前には緑があって、風が吹いていて、鳥が鳴いていて…。そういうことに気付くきっかけになる風景がいっぱいあるドラマだと思うんです。見てくれる方が、そういうふうに自分自身を緩めてあげられるような時間になればいいな…と思っています。

-今は、コロナ禍で日常が殺伐としがちですが、そういう点でも気持ちを癒やしてくれる気がします。

世界中で、人と距離を詰めるのが難しくなっている今、あんなふうに面と向かって、じっくり話をするのは現実的ではないかもしれません。でも逆に、このドラマを通して、そういう豊かな時間を一緒に体験していただけたらいいですよね。

-そんな物語の主人公・テンコさんの魅力は、どんなところだと思いますか。

 人をさりげなく迎え入れてあげられるところです。私は、人が家に来るとなったら「どうしよう…? これでいいの…?」と、おどおどしちゃいますけど、テンコさんは「いつ来ても大丈夫」といった感じで、初めて会ったお客さんにも安心感を与えて、いろんなことを話し合える。そういう“人間力”みたいなものは、すごいな…と。

-小林さんにも、テンコさんのように暮らしを楽しんでいるイメージがありますが。

 自分なりに暮らしは楽しんでいますけど、私はあんなに面倒見が良くないですし、部屋を整頓して、丁寧に食事を作って…みたいなことも全然。テンコさんとの共通点といったら、一人でいる、という境遇ぐらいで(笑)。

-テンコさんが小林さんそのものに見えたので、その答えは意外な気がします。

 私も子どもの頃に、お母さん女優として人気のあった方が、「私、おみそ汁なんか作ったことないわ」と言っているのを聞いて、「ええーっ!」と、すごいショックを受けたことがあります(笑)。きっと、そういうことなんでしょうね。

-第4話の、テンコさんが一人でご飯を食べるシーンも印象的でした。台本ではト書き2行だけの場面を、ものすごく長く時間をかけて撮っている上に、せりふもないのにテンコさんの心情がにじみ出ていて…。

 あれは私もびっくりしました。「長く撮っているけど、使うところは一部だけなんだろうな…」と思っていたのに、あんなに長く使われるとは(笑)。ただ、演じる上では「テンコさんだったらこう食べる」みたいな細かい分析をしたわけではないんです。それまでテンコという役をやってきたので、無意識に役として食べるようになっただけで。それが、あんな感じなんだろうな…と。

-すごく幸せそうに見えました。

 一人で気楽においしいものをたっぷり味わって「うれしいな」というときもあれば、「これ、誰かと一緒に食べられたらうれしいのにな」と思うときもありますよね。そんなふうに、常に一人で食べるご飯が楽しいわけじゃないですけど、一人で食べている人たちに、「一人で食べるのも、まんざら悪いものじゃないな」って寄り添うようなシーンになっていたらいいですね。

-舞台になるのは、静かな山奥にあるペンションですが、撮影の思い出は?

 去年の夏、長野で半月ぐらいかけて撮影したんですけど、スケジュール的にはすごくタイトだったんです。その日の芝居を終えたらすぐ、次の日のせりふを覚える…みたいな状況で。頭がパンパンで、同じ分量の仕事を東京でやっていたら、ものすごいストレスで病んでいただろうな…と思ったぐらいです。でも、あの場所には、いるだけで自然と癒やされる雰囲気があったんですよね。おかげで、物理的には大変でしたが、気持ち的には安心して仕事することができました。

-毎回の多彩なゲストの顔ぶれも見どころですが、印象的なエピソードは?

 役所(広司)さんが第1話のゲストなんですけど、撮影は一番最後だったんです。そうしたら、それまでは座って話をするようなシーンが多かったのに、役所さんがいらっしゃった途端、急に派手なアクションシーンになって。「これ、こういうドラマだったっけ?」と思うぐらい、テストのときから全開で走り回ってくださって、すごく楽しかったです(笑)。

-第5話の光石研さんとのミュージカルシーンも楽しいですね。

 あれも「これは大丈夫?」と思ったんですけど、松本(佳奈)監督のセンスを信頼して。照れたりして変に中途半端になると、せっかくのシーンが台無しですから、振り切ってやりました(笑)。でも、監督も面白がってくださったみたいで、笑っていたので「よかったな…」と。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

【週末映画コラム】気持ちのいい人情喜劇『あまろっく』/山田太一の小説をイギリス人監督が映画化『異人たち』

映画2024年4月19日

『あまろっく』(4月19日公開)  理不尽なリストラに遭い尼崎の実家に戻ってきた39歳の近松優子(江口のりこ)は、定職に就くことなくニートのような毎日を送っていた。  ある日、「人生に起こることはなんでも楽しまな」が信条の能天気な父・竜太郎 … 続きを読む

小関裕太&岡宮来夢、念願のロミオ役に「プレッシャーも力に変えて頑張りたい」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2024年4月19日

 上演の度に大きな話題を呼ぶミュージカル「ロミオ&ジュリエット」の3年ぶり6度目の上演が決定。5月16日に東京・新国立劇場 中劇場で幕を開ける。  本作は、2001年にフランスで生まれ、世界20カ国以上で600万人以上を動員したメガヒットミ … 続きを読む

「自由に映像を撮れることを楽しんでいる作品だと思います」 山本奈衣瑠『走れない人の走り方』【インタビュー】

映画2024年4月18日

 映画監督の小島桐子はロードムービーを撮りたいと思っているが、限られた予算や決まらないキャストなど、数々のトラブルに見舞われる。理想と現実がずれていく中で、彼女はある選択をする。台湾出身で日本に留学し、東京藝術大学大学院映像研究科で学んだ蘇 … 続きを読む

若手注目俳優の佐藤瑠雅&坂井翔、「どこにでもいる男の子たちの何気ない生活を描いた」“じれキュン”ラブストーリー「彼のいる生活」【インタビュー】

ドラマ2024年4月18日

 「仮面ライダーギーツ」の桜井景和/仮面ライダータイクーン役で注目された佐藤瑠雅と、ドラマ「ジャンヌの裁き」に出演し高い演技力が話題となった坂井翔がW主演するドラマ「彼のいる生活」がTOKYO MX、ABEMA、各配信サイトにて現在放送・配 … 続きを読む

「トーマスの世界に、SDGsやリサイクルという概念が出てきた驚きがある」ディーン・フジオカ、やす子『映画 きかんしゃトーマス 大冒険!ルックアウトマウンテンとひみつのトンネル』【インタビュー】

映画2024年4月17日

 アニメーション『映画 きかんしゃトーマス 大冒険!ルックアウトマウンテンとひみつのトンネル』が4月19日から全国公開される。本作で、ゲスト声優として、リサイクル工場で発明をしている機関車のウィフを演じたディーン・フジオカと、トンネルを掘る … 続きを読む

Willfriends

page top