「役所広司さんは、中学生の頃から憧れていた俳優。こんなに長い間一緒にいられて幸せです」古舘寛治(可児徳)【「いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~」インタビュー】

2019年5月19日 / 20:50

 今や正月の風物詩となった箱根駅伝が、金栗四三(中村勘九郎)の発案でついに誕生。そんな四三の活動を見守るのが、恩師の一人でもある可児徳だ。嘉納治五郎(役所広司)を支え、日本のオリンピック参加に尽力したほどの人物でありながら、本作ではしばしば損な役回りを引き受ける人間味あふれるキャラクターとして描かれている。ユーモアたっぷりに可児を演じる古舘寛治が、役に込めた思いや「憧れの俳優」と語る役所広司との共演のエピソードなどを語ってくれた。

可児徳役の古舘寛治

-大日本体育協会内で、嘉納治五郎とほかの面々の板挟みになる中間管理職的な可児は、視聴者の共感を得やすいキャラクターだと思います。古舘さんご自身はどう感じていますか。

 とても共感しやすいです。組織の中で働き、時には愚痴を言ったり、酒を飲んで憂さ晴らしをしたり…。僕や視聴者の皆さんと一緒で、ごく普通の社会人として描かれているので、全面的に共感してしまいます。おかげで、楽しく演じることができます。

-穏やかな可児と厳格な永井道明(杉本哲太)は対照的な性格ですが、時には一緒に酒を飲んで愚痴を言い合うなど、2人のユーモアあふれるやりとりも見どころですね。

 永井さんとのやりとりは、可児の見せ場でもあります。宮藤官九郎さんが書かれた面白い脚本を、どれだけ面白く表現できるか。僕にとってはそこが勝負。できるだけいい芝居にしたいので、哲太さんと入念にせりふ合わせをして撮影に臨んでいます。

-SNSでも、「古館さんのお芝居が面白い」と好評です。

 俳優は見てくださる方がいて初めて完結する仕事なので、「面白い」と言っていただけるのは、とてもうれしいです。僕もSNSをやっていますが、そういう感想は、演じる上でものすごく力になります。

-可児は留学でダンスを学び、かなり印象が変わりました。演じる上では、そういう変化をどう考えていますか。

 俳優は一つ一つの場面をきちんと演じることが大事で、そういう変化を意識する必要はないのでは…というのが僕の考えです。大切なのは、「その役が何を欲して、どこへ向かっているのか」ということ。その意識さえきちんと持っていれば、どんなことをしてもその役でいることができます。それが可児の場合、よりよい体育教育を目指す、嘉納治五郎の理想のために尽くす、といったことになります。それさえ押さえておけば、たとえタイツを履いて踊っていても、可児でいることはできますから。宮藤さんの脚本も素晴らしいので、僕はそこに書かれていることをきちんと演じることだけを心掛けています。

-宮藤官九郎さんの脚本の魅力とは?

 宮藤さんの脚本は、一つ一つの場面が説明的でなく、とても面白く書かれているのが特徴です。同じようなシーンでも、せりふや細部に気を配って書かれていると、面白さは段違い。一見、気付きにくいところですが、簡単にできることではありません。それによって、芝居の良し悪しが変わってきますし、実力以上の芝居が生まれることもあります。ストーリー展開や全体の構成はもちろんですが、宮藤さんの脚本はその点がとても優れていると感じます。

-可児は嘉納治五郎と一緒の場面も多いですが、役所広司さんと共演した感想は?

 大河ドラマでこんなに長い間一緒にいられるなんて、自分はどれほど幸運なのか…と(笑)。実は、僕にとって役所さんは、中学生の頃から憧れの俳優でした。初めて役所さんを知ったのは、大河ドラマ「徳川家康」(83)。織田信長を演じる当時20代の役所さんの姿に、ものすごい衝撃を受けました。他の俳優とは明らかに違う存在感があって…。それ以来、日本の俳優の中で最も憧れてきた方です。そういう意味で、僕にとっての役所さんは、まさに可児徳にとっての嘉納治五郎。嘉納先生を尊敬し、その下で働く可児の姿には、役所さんに対する僕の気持ちがそのまま表れています(笑)。

-そのお話は、役所さんには?

 もちろんしました。この作品の前にも『キツツキと雨』(11)という映画でご一緒したことがあるので。そのおかげか、僕のことをかわいがってくれます。ありがたいですね(笑)。実は僕は、役所さんのなじみのすし屋で働いていたこともあるんです。その話をしたら、「今度一緒に」と誘ってくれたので、楽しみにしています(笑)。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

【Kカルチャーの視点】異領域を融合する舞台芸術、演出家イ・インボの挑戦

舞台・ミュージカル2025年7月3日

 グローバルな広がりを見せるKカルチャー。日韓国交正常化60周年を記念し、6月28日に大阪市内で上演された「職人の時間 光と風」は、数ある韓国公演の中でも異彩を放っていた。文化をただ“見せる”のではなく、伝統×現代、職人×芸人、工芸×舞台芸 … 続きを読む

毎熊克哉「桐島が最後に何で名乗ったのかも観客の皆さんが自由に想像してくれるんじゃないかと思いました」『「桐島です」』【インタビュー】 

映画2025年7月3日

 1970年代に起こった連続企業爆破事件の指名手配犯で、約半世紀におよぶ逃亡生活の末に病死した桐島聡の人生を、高橋伴明監督が映画化した『「桐島です」』が、7月4日から全国公開される。本作で主人公の桐島聡を演じた毎熊克哉に話を聞いた。 -桐島 … 続きを読む

磯村勇斗&堀田真由、ともにデビュー10年を迎え「挑戦の年になる」 ドラマ「僕達はまだその星の校則を知らない」【インタビュー】

ドラマ2025年7月2日

 磯村勇斗主演、堀田真由、稲垣吾郎が出演するカンテレ・フジテレビ系“月10ドラマ”「僕達はまだその星の校則を知らない」が7月14日から放送スタートする。本作は、独特の感性を持つがゆえに何事にも臆病で不器用な主人公・白鳥健治(磯村勇斗)が、少 … 続きを読む

蓮佛美沙子&溝端淳平「カップルや夫婦が“愛の形”を見直すきっかけになれたら」 グアムで撮影した新ドラマ「私があなたといる理由」【インタビュー】

ドラマ2025年7月1日

 ドラマ「私があなたといる理由~グアムを訪れた3組の男女の1週間~」が、7月1日からテレ東系で放送がスタートする。本作は、グアムを訪れた世代が違う男女3組のとある1週間を描いた物語。30代の夫婦(蓮佛美沙子、溝端淳平)、20代の大学生カップ … 続きを読む

風間俊介「横浜流星くんと談笑する機会が増えてきたことがうれしい」蔦重と和解した鶴屋喜右衛門役への思い【大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」インタビュー】

ドラマ2025年6月29日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」。“江戸のメディア王”と呼ばれた“蔦重”こと蔦屋重三郎(横浜流星)の波乱万丈の生涯を描く物語は、快調に進行中。6月29日放送の第25回「灰の雨降る日本橋」では、浅間山の噴火によっ … 続きを読む

Willfriends

page top