「『こいつは何をするのか?』と皆さんに悩みながらご覧いただけたら」尾野真千子(伊呂波太夫)【「麒麟がくる」インタビュー】

2020年3月22日 / 20:50

 好評放送中の大河ドラマ「麒麟がくる」に、また一人、個性的な登場人物が加わった。派手な衣装とメークが一際目を引く旅芸人一座の女座長・伊呂波太夫だ。戦災孤児だった幼い頃の駒(門脇麦)を育てた縁があり、各地の有力者に顔が利くことから今後、主人公・明智光秀(長谷川博己)とも関わっていくことになる。演じるのは、連続テレビ小説「カーネーション」(11)のヒロインとして知られ、多数の作品で活躍する尾野真千子。撮影の舞台裏や本作に懸ける意気込みなどを語ってくれた。

伊呂波太夫役の尾野真千子

-第十回で、京の街を練り歩く形で登場しましたが、初登場の感想を。

 芸をするために京の街へ来るのですが、誰にもまねできないような異様な格好をしているんですよね。天狗さんのような10センチ以上もある高さの下駄を履いて。駒ちゃんや東庵先生(堺正章)とお芝居をしたのですが、早く走れなかったりして、一度下駄を壊してしまいました(笑)。衣装も、普段はシンプルな着物一枚ですが、旅芸人のときは着物を3枚ぐらい着ていますし。髪形もちょっと独特な感じなので、伊呂波太夫のユニークさを最大限表現するようにして、楽しみながら演じています。

-伊呂波太夫をどんなふうに演じていこうと思っていますか。

 伊呂波太夫は、諸国の有力者や京の公家にも顔が利く不思議な人です。ただ、内心では「この人たちからどれぐらいお金を取れるか」、敵と見られず「こいつは使える」と見てもらうために、いかにその状況をくぐり抜けていくかを常に考えている。どこへ行っても、誰に会っても、そういうふうに探りながら接している。だから、いろいろなことに役立つ“何でも屋”みたいな存在でいたいなと。私自身も、まだ役自体を探っている途中なので、そういう探るような芝居がちょうどいい感じになっているのではないでしょうか。ただ、そういう謎めいた部分だけでなく、人間らしさも少しずつ出していきたいと思っています。

-旅芸人という点で意識していることは?

 架空の人物の利点を最大限生かそうと思いました。歴史上の人物ではないし、旅芸人ということもあって、面白おかしく、思いきりやってしまおうと。色や着るもの、持つものなど、細かいことにあまりこだわらず、スタッフの皆さんが、面白くなるように作ってくれました。メークも、歌舞伎の方の眉毛を参考に、芸をしているときはきちんと描いて、普段は薄めにするなど、シーンによって使い分けています。旅芸人ということで、この時代にも華やかなもの、私たちがやっている芸能のような世界があったと、皆さんに知ってもらえたらいいですね。

-伊呂波太夫の個性的な衣装の感想は?

 色があまりに鮮やか過ぎるので、「追い掛けられたらすぐ見つかるだろう!」と突っ込みたくなりました(笑)。他の皆さんはそれぞれ決まったイメージカラーがありますが、伊呂波太夫は一つの着物に2、3色の色が入っています。それは、「どこにも染まらない」ということを表現するため、あえてさまざまな色を使っているんだそうです。だから、見ているととても楽しいです。そこには、色気や妖艶な雰囲気で人をどうにかするという部分だけでなく、伊呂波太夫のたくましさや、その他、いろいろなものが表現されているんだろうな…と。気持ちは衣装次第で変わっていくので、今は男でもなく、女でもないという感覚になっています。

-伊呂波太夫は主人公の光秀とも今後関わっていきますが、長谷川博己さんと共演した感想は?

 頼れる人です。以前ご一緒したときも頼らせていただきましたが、今回も…です(笑)。頼りがいがあるので、芝居だけでなく、何かと助けてもらっていますし。私はたまにポンと行って芝居をするだけなので、皆さんと過ごす時間は少ないのですが、そんなときでも現場に居やすくしていただいたり…。そういう面でも、長谷川さんには助けられています。

-駒役の門脇麦さんと共演した感想は?

 目力がすごい。吸い込まれそうな目をしていますよね。にらめっこをしたら、多分、私が負けるでしょう(笑)。駒と伊呂波太夫は、かつて一緒に過ごした時期があるという設定ですが、お芝居のときに目を見ていると、確かに、守りたくなる身内のような雰囲気があるな…と。そんなふうに感じます。

-これまで撮影した中で、楽しかったシーンは?

 駆け引きがあるシーンは楽しいです。頼まれたり、仕掛けてみたり…。第十三回の帰蝶とのシーンなども楽しかったです。逆に、普段のときの方が、伊呂波をどのように見せたらいいのか分からなくなります。駆け引きをしている場面は、企んだような顔をすればいいのですが、普通のときはどんな顔をしたらいいのかと。そっちの方が、気持ちの面で大変です。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

DAIGO「クリスマス気分を盛り上げてくれる作品なので、『パーシーのクリスマス急行』にぜひ乗車してください」『映画 きかんしゃトーマス サンタをさがせ!パーシーのクリスマス急行』【インタビュー】

映画2025年12月12日

 イギリスで最初の原作絵本が誕生してから80周年を迎えた人気児童向けアニメ「きかんしゃトーマス」の劇場版『映画 きかんしゃトーマス サンタをさがせ!パーシーのクリスマス急行』が12月12日から全国公開された。シリーズ初のクリスマスムービーと … 続きを読む

高橋克典「これは吉良の物語でもあるのだと感じていただけるような芝居をしたい」 堤幸彦「『忠臣蔵』は、演劇的に言えば1丁目1番地的な作品」 舞台「忠臣蔵」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年12月10日

 元禄時代に実際に起こった仇(あだ)討ちを題材に歌舞伎などで取り上げられて以来、何度もドラマ化、映画化、舞台化されてきた屈指の名作「忠臣蔵」が、上川隆也主演、堤幸彦演出によって舞台化される。今回、吉良上野介を演じるのは、高橋克典。高橋はデビ … 続きを読む

生田斗真が驚きの一人二役!「最初から決まっていたわけではありません」制作統括・藤並英樹氏が明かす舞台裏【大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」インタビュー】

ドラマ2025年12月8日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」。“江戸のメディア王”と呼ばれた“蔦重”こと蔦屋重三郎(横浜流星)の波乱万丈の生涯を描く物語は、まもなくクライマックスを迎える。謎の絵師“写楽”が、蔦重の下で歌麿(染谷将太)ら当 … 続きを読む

板垣李光人「最初から、戦争を考えて見るのではなく、実際に見て感じたことを広めていっていただければ、それが一番うれしいです」『ペリリュー ―楽園のゲルニカ―』【インタビュー】

映画2025年12月5日

 戦争がもたらす狂気を圧倒的なリアリティーで描き、第46回日本漫画家協会優秀賞を受賞した武田一義の戦争漫画をアニメーション映画化した『ペリリュー ―楽園のゲルニカ―』が12月5日から全国公開された。太平洋戦争末期、激戦が繰り広げられたペリリ … 続きを読む

【物語りの遺伝子 “忍者”を広めた講談・玉田家ストーリー】(8)百年ぶりの復活へ 四代目が掲げた三つの大願

舞台・ミュージカル2025年12月4日

 YouTubeもNetflixもない時代、人々を夢中にさせた“物語り”の芸があった——。“たまたま”講談界に入った四代目・玉田玉秀斎(たまだ・ぎょくしゅうさい)が、知られざる一門の歴史物語をたどります。    2016年に四代目・玉田玉秀 … 続きを読む

Willfriends

page top