【インタビュー】「有村架純の撮休」有村架純「8通りの自分を演じることを心掛けました」 是枝裕和監督「有村さんはきちんと違うものを出している。さすがだなと思いました」

2020年3月20日 / 17:58

 朝ドラヒロインも務めた国民的女優・有村架純は、一体休日に何をしているのだろうか…? そんな誰もが気になる姿を、気鋭のクリエイターたちが妄想を膨らませて描き出す1話完結のオムニバスドラマが、3月20日からWOWOWでスタートする。その名も「有村架純の撮休」。ときには帰省して母と再会したり、ときには人間ドックへ行ってみたり…。全8話にそれぞれ違った顔を持つ人の有村架純が登場し、趣向を凝らしたユニークな物語が繰り広げられる。その中の2話を監督したのが、日本を代表する映画監督・是枝裕和。主演の有村と是枝監督に、作品の見どころを聞いた。 

是枝裕和監督(左)と有村架純(スタイリング:瀬川結美子/ヘアメイク:尾曲いずみ)

-有村さんは本作について「自分のお芝居について、ちょっと迷いや不安を感じ始めてきたときに、今回のお話を頂き、次の扉を開くきっかけになるかもしれないと思いました」とコメントされています。その意味を教えてください。

 有村 これまで、等身大の女性を演じる機会がとても多かったので、自分の中で「それぞれ、どう違いを出していけばいいんだろう?」という状態になっていたんです。「こういう役が続くと、もう出すものがないかも…」というほどで。そんなところにこのお話を頂き、「いろいろなことを試せるいい機会かもしれない」と思いました。「有村架純だけどそうでない人物を、いいバランスでどう演じるか」ということに挑戦してみてもいいかな…と。だから、なるべく8通りの自分を演じることを心掛けました。

-8通りの有村架純を演じる上で、役作りはどのように?

 有村 是枝さんの「ただいまの後に」(第1話)が、すごく自分に近かったので、それを軸に、他をどうするか考えていきました。それぞれ脚本を読んだ印象を基に、「これはこういう部分を出してみたらいいかな…?」と、なるべく自分の中に潜んでいるものを出すようにして。ただ、そこから離れ過ぎると、有村架純ではなく、別のキャラクターになってしまうので、行き過ぎないように気を付けました。そういう意味では、どの作品もどこかに私らしさは出ていると思います。

是枝 僕も2本やらせていただき、津野愛(7話監督・脚本)さんの現場ものぞかせてもらいましたが、「いかにも」といった演じ分けではない形で、きちんと違うものを出している。さすがだなと思いました。

-有村さんが是枝監督との2本で、印象に残っているシーンは?

有村 「ただいまの後に」(第話)は、久しぶりに帰省して母親と再会する話ですが、母親役の風吹(ジュン)さんとのやり取り全般がすごく好きです。親子とはいっても、離れて暮らしていると、見えないものがありますよね。だから、久しぶりに会うと、状況もいろいろ変わっている。そういうところは、すごく分かるな…と。たまに会うと、背中が小さく見える…みたいな経験は私にもありますから。1人の人間として向き合うことになった親子が、よそよそしい感じでお互いの状況を探り合うやりとりが、すごくリアルに感じられました。

-是枝監督が母娘の会話を撮るときに意識したことは?

是枝 有村さんが言ったように、母が違う生き物に見える瞬間があり、そこで関係や言葉遣いが変わってくる。そういう娘の目線の中に芽生えるイラつきやいたわり、さらにはその感情が自分に跳ね返ってきたときの戸惑い…みたいな微妙なものを、きちんと捉えたいと思っていました。

-是枝監督は、ご自身が監督された2本の中で、印象に残ったシーンは?

是枝 「ただいまの後に」の、有村さんと風吹さんの芝居は、撮っていて楽しかったです。特に印象的だったのが、けんかが始まって、台所にいる母親の背中を見ながら文句を言って近づいていくところ。画面の隅で切れる瞬間、有村さんが「ふんっ!」と鼻で笑ったんです。「ふんっ!」の最後には、もう本人が画面から消えているぐらいのタイミングで。その絶妙な感じが素晴らしくて(笑)。

有村 

是枝 「人間ドック」(第3話)は、病院のエコー室で再会した元カレの検査技師との会話が中心ですが、2人の距離感が変化していく様子を、なるべくいろいろな形で撮ろうと思っていました。ずっと検査用のベッドに横たわったままなので、シチュエーションは変わらない。でも、その中で恋愛ドラマとして、2人の距離感の変化を表現したいと。有村さんは期待通り、患者から女になる瞬間を表現してくれたと思います。ただ、あんなに長く人の“おへそ”を撮ったのは、初めてでしたけど(笑)。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

生駒里奈が語る俳優業への思い 「自分ではない瞬間が多ければ多いほど自分の人生が楽しい」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2024年11月20日

 ドラマ・映画・舞台と数多くの作品で活躍する生駒里奈が、ストーリー性のある演劇的な世界観をダンスとJ-POPで作り上げるダンスエンターテインメント集団「梅棒」の最新作、梅棒 19th GIFT「クリス、いってきマス!!!」に出演する。生駒に … 続きを読む

史上最年少!司法試験に合格 架空の設定ではないリアルな高校2年生がドラマ「モンスター」のプロデューサーと対談 ドラマ現場見学も

ドラマ2024年11月17日

 毎週月曜夜10時からカンテレ・フジテレビ系で放送している、ドラマ「モンスター」。趣里演じる主人公・神波亮子は、“高校3年生で司法試験に合格した”人物で、膨大な知識と弁護士として類いまれなる資質を持つ“モンスター弁護士”という設定。しかし今 … 続きを読む

八村倫太郎「俊さんに助けられました」、栁俊太郎「初主演とは思えない気遣いに感謝」 大ヒットWEBコミック原作のサスペンスホラーで初共演『他人は地獄だ』【インタビュー】

映画2024年11月15日

 韓国発の大ヒットWEBコミックを日本で映画化したサスペンスホラー『他人は地獄だ』が、11月15日から公開された。  地方から上京した青年ユウが暮らし始めたシェアハウス「方舟」。そこで出会ったのは、言葉遣いは丁寧だが、得体のしれない青年キリ … 続きを読む

「光る君へ」第四十三回「輝きののちに」若い世代と向き合うまひろと道長【大河ドラマコラム】

ドラマ2024年11月15日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「光る君へ」。11月10日に放送された第四十三回「輝きののちに」では、三条天皇(木村達成)の譲位問題を軸に、さまざまな人間模様が繰り広げられた。  病を患い、視力と聴力が衰えた三条天皇に、「お目も見えず、お耳 … 続きを読む

「ローマの共和制の問題点は、今の世界が直面している数々の問題と重なる部分が多い」『グラディエーターⅡ 英雄を呼ぶ声』コニー・ニールセン【インタビュー】

映画2024年11月15日

 古代ローマを舞台に、皇帝の後継者争いの陰謀に巻き込まれ、剣闘士(グラディエーター)として壮絶な戦いに身を投じる男の姿を描いたスペクタクルアクション『グラディエーター』。巨匠リドリー・スコットが監督し、アカデミー賞で作品賞や主演男優賞など5 … 続きを読む

Willfriends

page top