【インタビュー】映画『カツベン!』周防正行監督、成田凌 「これが映画の始まりなんだ、ということを、意識して見てほしいです」

2019年12月11日 / 10:00

 今からおよそ100年前の日本。活動写真と呼ばれ、まだモノクロでサイレントだった映画をより楽しむため、楽士の奏でる音楽に合わせて、自らの語りや説明で映画を彩った活動弁士(通称カツベン)がいた。弁士に憧れる若き青年を主人公に、映画黎明(れいめい)期の群像を描いた『カツベン!』が12月13日から公開される。本作の周防正行監督と、主人公の染谷俊太郎を演じた成田凌に話を聞いた。

周防正行監督(左)と成田凌

-なぜ今、活動弁士を主人公にした時代劇を撮ろうと考えたのでしょうか。

周防 今回は初めて自分の企画ではないものを映画化しました。『それでもボクはやってない』から僕の映画の助監督をしてくれていた片島章三さんに、5、6年前かな、「脚本を書いたので読んで意見を聞かせてほしい」と渡されました。僕は学生時代に、小津安二郎監督の『大人の見る繪本 生れてはみたけれど』(32)など、サイレント映画はたくさん見ましたが、音が無くても素晴らしい映画はたくさんあったので、「別に弁士も音楽も要らないじゃないか」とずっと思ってきました。
 ところが、片島さんの脚本を読んで、サイレント映画をサイレントのままで見ていた人なんてどこにもいなかったことに気付きました。欧米では音楽の生演奏が付いていたし、日本では生演奏に活動弁士の説明も加わっていた。だとすると、当時の日本の映画監督は、映画が上映されるときに、弁士の説明と音楽があることを前提として映画を撮っていたわけです。つまり、本来サイレント映画は弁士の説明と音楽があって見るのが正しいのではないか、ということです。それで、彼らが映画監督にどんな影響を与えたのか、という意味でも、僕自身が彼らについて考えてみたいと思ったんです。

-なるほど。

周防 なおかつ、なぜタイミングとして今なのかというと、映画の定義が変わってきているからです。フランスのリュミエール兄弟が映画の父と言われる理由は、フィルムで撮って、それをスクリーンに投影して、不特定多数の人と一緒に見ることを発明したからです。でも、今はフィルムではなくデジタル撮影で、配信という形で、家でスマホの画面を一人で見るのも映画です。まあ、これを映画とは呼ばせないという人もいますが(笑)。だからこそ、日本で映画がどう始まったのかを今撮らないと、誰もそれを知らなくなってしまう。活動弁士のことなんて誰も知らないのではまずいと。自らの反省の意味も込めて、ぜひ、活動弁士の存在を多くの人に知ってほしいと思ったんです。

-成田さんは、その活動弁士を演じたわけです。もちろん未知の存在だったと思いますが、いかがでしたか。

成田 僕も一生懸命練習しましたが、改めて、昔も今も、活動弁士をやられている方を心から尊敬します。また、当時、僕が生きていたら、やっていたのかな、とは考えました。でも、成田家は代々それほど裕福ではないので、多分やっていないと思います(笑)。今回は「こういうキャラクターにしよう」という考えはあまりなくて、ただ「カツベンが好き」という気持ちでその場にいればいいと思い、ニュートラルで、フラットな気持ちで臨みました。すると、僕の中でカツベンは普通のことになりました。

-笑いを取るべきドタバタのシーンは、サイレント映画のスラップスティック(ドタバタ)コメディーを意識したように見えましたが。

周防 (チャールズ・)チャップリンや(バスター・)キートンなどの無声映画を意識して撮りました。例えば、たんすのシーンは、活動写真のアクションの面白さと、この映画の世界観を象徴するものとして、どうしても撮りたかったので、美術さんに無理を言って作ってもらいました。サイレント映画の魅力を皆さんに伝えたいという思いが強くありました。

-そうした動きは、今のものとは異質ですが、演じる苦労はありましたか。

成田 それほど意識はしていなくて、無意識にやっていました。監督からも「もっと大きな動きを」とか「もっと大げさに」という指示は全くありませんでした。

周防 皆さんが脚本を読んだり、僕の言葉を聞いて、理解して、あえて大きな動きでやってくれたんだろうと思います。

成田 そういう空気感は現場にも流れていて、例えば、(映画館主役の)竹中直人さんの温度感をこちらでキャッチしながらやることもありました。

-追っ掛けのシーンでは、刑事役の竹野内豊さんの動きがとてもスラップスティックなものに見えました。

周防 竹野内さんは、いきなり追い掛けのシーンから撮影に入ったんですが、そのときに、特に指示はしていないのに、「うわ、こんなふうに動いてくれるんだ」と驚きました。なので、もうこの線で作ってしまおうと。僕が竹野内さんの芝居に共感して、そこにいろんなアイデアを足していきました。

 
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