【インタビュー】舞台「この声をきみに~もう一つの物語~」尾上右近、演劇作品への挑戦が「自分にとって豊かな財産になっている」

2019年12月11日 / 16:56

 2017年に放送された、大森美香脚本によるNHKオリジナルドラマ「この声をきみに」がスピンオフとして舞台化される。竹野内豊が主演した同ドラマは、朗読教室を舞台に、現代に生きる大人たちの恋愛を描き、高い評価を得た。舞台版では、大森自らが脚本を新たに書き下ろし、ドラマで描かれた朗読教室を舞台に、新たな登場人物、エピソードでしっとりとしたラブストーリーをつむぐ。舞台版の主人公・岩瀬孝史を演じる尾上右近に、本作に懸ける意気込みを聞いた。

岩瀬孝史役の尾上右近

-本作は、NHK連続テレビ小説「あさが来た」や、2021年の大河ドラマ「青天を衝け」を手掛けるなど、多くの作品で知られる脚本家の大森美香さんが、舞台の脚本を書き下ろすことでも注目されています。まずは、本作への出演が決まった気持ちを聞かせてください。

 僕は歌舞伎の舞台を中心に活動する中で、歌舞伎以外の舞台にも挑戦する経験を積みたいと思っていたので、すてきな作品に巡り合えたらぜひ出演したいと思っていました。お話を頂いて、話題になった大森先生のドラマのスピンオフの舞台化という試みはとてもすてきなことだと思いましたし、舞台化されるに当たって、物語がどう変化するのかもとても楽しみで、ありがたいお話を頂けたと思っています。

-ドラマ版はご覧になりましたか。

 はい。コミュニケーションが重要なキーワードになっている作品だと思うので、舞台の方でも共通したテーマになってくるのかなと思っています。僕自身もコミュニケーションの重要性は日々感じていて、普段から人とのつながりを大事にしたいと思って過ごしていましたので、主人公の苦しみや、成長をとても楽しく、興味深く拝見させていただきました。

-いわゆる新劇(現代劇)への出演は「ウォター・バイ・ザ・スプーンフル~一杯の水、それは一歩を踏み出すための人生のレシピ~」に次いで、今回が2度目になりますね。

 そうですね。初めて新劇の舞台に立った前回は、立って話すことすらどう表現したらいいのか分からない、というところから始まりましたので、人生で得難い体験でした。その後、その経験を踏まえて映画やドラマなどにも出演させていただきましたが、そういった一つ一つの経験が積み重なり、こうしてまた新たな作品と、新たな自分に出会わせていただく機会を得たのだと思っています。

-新劇(現代劇)の難しさはどこに感じましたか。

 役を一から作るというところです。歌舞伎の場合は、歌舞伎という枠組みの中で役を組み合わせたり、引用したりする要素も強いので、一からその役を作ることは今まであまり経験したことがありませんでした。新劇では、自分が気持ちを形にすることが重要になると思うのですが、歌舞伎の場合は、逆に気持ちを形にコミットさせる。なので、演じる役がどういう人なのかを具体的に作っていく作業が難しいところでした。ただ、こういった経験をすることは、歌舞伎を務めるときにも強みになるし、自分の言うせりふに責任感を生むことにもつながるので、自分にとってとても豊かな財産になっています。

-新劇(現代劇)の稽古の仕方や、稽古場の雰囲気は歌舞伎とは全く違うものですか。

 歌舞伎の古典の場合、1カ月をかけてお稽古するということがまずないんです。なので、お稽古のペースというものからして違います。でも、(新劇の稽古は)自分には合っていると思っています。皆さんと作り上げていく時間は、僕にとってとても貴重で、悩む期間と猶予を共有させてもらっていると感じます。でも、どうしたらいいか悩むことは重要ですが、まず楽しむことがいい空気感を作ると思うので、今回は悩みつつ楽しんで稽古に臨みたいと思います。

-10月の「ラヴ・レターズ」では朗読も体験されました。本作は、朗読教室が舞台ということで、役作りの一助になっているのではないでしょうか。

 もちろん、「ラヴ・レターズ」の経験はとても素晴らしい経験です。ただ、今回演じる役は一般社会で生きている人の人間ドラマだと思います。登場人物が、形あるものを読み上げることでコミュニケーションを取る。コミュニケーションの重要性を再確認する場所として、朗読教室があるので、まずは人間ドラマをきちんと表現したいです。そして朗読劇の経験は朗読の際に万が一、生きてくれればもうけものという感じですかね(笑)。

-右近さんご自身は本を読むのは好きですか。

 好きです。思わぬ言葉との出会いがあったり、何となく日常の中で迷っていることの答えがあったり、本には巡り合わせを感じることが多くあります。もちろん、ネットで調べ物もしますが、ネットでは調べようと思ったことしか目にする機会がない。それ以外の事柄にも出会う機会があるのが本だと思います。だからこそ、本を読むのが大好きで、自分で考えるのではなく、考えさせられる時間を作ってくれるのが本だと思っています。

 
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