【インタビュー】『アンダー・ユア・ベッド』高良健吾、30代で迎えた変化 「キツくて嫌だった」ハードな役が「ご褒美」に

2019年7月16日 / 18:56

 『殺人鬼を飼う女』『呪怨』などの作家・大石圭の原作を基に、『バイロケーション』『氷菓』の安里麻里が監督を務めるミステリー映画『アンダー・ユア・ベッド』。さて、どんな話だろうと資料を手に取ると、「のぞいていたい。このままずっと―」のキャッチコピーとともに、ベッドの下にはいつくばって女性の足に目をやる、不気味な中に寂し気を漂わせた高良健吾の姿があった。その瞬間、これぞ高良の真骨頂!と思わずニヤリ…。本作主演を「ご褒美」と喜ぶ高良に、その胸中を聞いた。

高良健吾

 高良といえば、『蛇にピアス』『ソラニン』『横道世之介』『多十郎殉愛記』など、代表作は多ジャンルにわたるが、2年前、29歳のときのインタビューでは、10代後半から20代前半は「自殺」「犯す」「殺す」など暴力や死を伴う役が比較的多く、「キツくて嫌だった」と漏らしていた。一方で30代を目前にして、「同じような役に20代とは違うやり方で再挑戦したい」と意気込んでいた。

 そして30歳(撮影時)で迎えた本作は、11年前にたった一度だけ名前を呼んでくれた女性に執着する孤独な男の“狂気の愛”を描いた物語。男・三井直人は、彼女の家の近所に引っ越すだけではなく、自宅に侵入、監視、盗撮、盗聴を繰り返し、オムツまでして彼女のベッドの下で数時間を過ごすという、かなり“ヤバい”男。しかしその狂気は、幼い頃から存在感がなく、誰からも名前すら呼ばれたことがない寂しい過去に起因する…。

 自身も納得する「暗い」「ミステリアス」といったパブリックイメージにハマる役で、キャスティングの際、安里監督もプロデューサーも「これ以上の俳優はいない」と即決したという。もちろん、難役をこなす演技力も期待されてのことではあるが、高良は「役者なのでどういうイメージを持たれてもいいですけど、ストーカー役ですよね。複雑ですね…」と苦笑い。

 とはいえ、「30代最初の年にいろいろな役を頂いた中で、久しぶりに、苦しくてヒリヒリした痛みが伴う役がもらえたことはご褒美だと思いました。純粋に楽しかったです」と心の底からの笑顔も見せた。

 「キツくて嫌だった」ハードな役が、いつの間にか「ご褒美」に変わっていた。その理由を問うと、「若い頃は役に成り切ることで、その役が抱えている問題を自分の問題にし過ぎて、役がイエスと言えば、自分がノーと思っていてもイエスにしなきゃいけないと考えていたのでキツかったです。でも、僕は役に成り切るより、役として作品の中に存在したいので、そのためには役と自分の間にフィルターがあってもいいと思うようになりました」と返答。本作では、「役の問題を自分の問題にし過ぎず、一定の距離感を持って向き合えました」とうれしそうに話した。

 演じ方を変えようとしたきっかけは、お人好しの青年役で主演した6年前の映画『横道世之介』(13)までさかのぼる。試写を見たとき、高良は「この役はもうできない…」と感じると同時に、過去の作品のどのキャラクターも、身を削るような“成り切る”作業をしていたため、「二度とできないと思う役だらけで、それではいけない、身が持たない」と痛感したという。

 では、なぜそこまで自分を追い込んでいたのか? それは、「役者の寿命を短く考えていた」から。だが、「体力に限界があるスポーツ選手などと違い、役者は死ぬまで続けられるから、もっと長いスパンで考えていいと思ったときに気持ちが楽になりました」と打ち明けた。

 「20代のうちに何でもできるようにしないといけないとか、1~2年かけてできないことは諦めるしかないとか思っていたけど、5~10年かけてもいいし、20代でできないことは30代で、30代でできないことは40代でできるようになればいいと考えられるようになりました。白黒をつけたがる方だったけど、グレーゾーンを許せるようになったかな」と続ける。今回の変化は、『横道世之介』を発端に、約6年もの歳月をかけてようやく体現できたことなのだ。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

舘ひろし、西野七瀬「とにかく、西野くんに見下してもらいたいと思いました」『免許返納!?』【インタビュー】

映画2026年6月18日

 70歳の映画スターが免許返納をめぐる大騒動に巻き込まれていく姿を描いたコメディー『免許返納!?』が、6月19日から全国公開される。本作で、『免許がない!』(94)で演じた役と同名の俳優・南条弘をコミカルに演じた舘ひろしと、南条に振り回され … 続きを読む

山下美月が“かつてなく最高の主人公”に 「自分も成瀬あかりのような人間に近づきたい」舞台「成瀬は天下を取りにいく」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2026年6月16日

 舞台「成瀬は天下を取りにいく」が7月4日(土)から上演される。本屋大賞をはじめ数多くの文学賞を受賞し、主人公・成瀬あかりが全力で我が道を突き進む姿が読者を魅了した、シリーズ累計発行部数210万部を突破する大人気小説『成瀬あかりシリーズ』。 … 続きを読む

片山友希、MEGUMI「間違えても失敗しても、とにかく前に進み続けるということはお伝えできたかなと思います」『FUJIKO』【インタビュー】

映画2026年6月15日

 1970~80年代の静岡を舞台に、激動の時代を生きるシングルマザーが自らの生き方を模索しながら力強く歩んでいく姿を描いた、木村太一監督の『FUJIKO』が全国公開中だ。本作で主人公の富士子を演じた片山友希と、企画・プロデュースを担当し、出 … 続きを読む

舞台「キングダムII ―継承―」三浦宏規・高野洸・山本千尋・山口祐一郎、「死力を尽くさなければいけない」作品に再び挑む【インタビュー】

舞台・ミュージカル2026年6月12日

 累計発行部数1億2000万部を突破した、原泰久による大ヒット漫画を原作とした舞台の第2弾となる「キングダムII ―継承―」が、8月9日から上演される。本作は、苛烈な戦乱の中にある中国・春秋戦国時代を舞台に、戦災孤児の少年・信と、のちの始皇 … 続きを読む

「豊臣兄弟!」第22回「播磨大誤算」戦国の世の難しさを印象付けた播磨攻略戦【大河ドラマコラム】

ドラマ2026年6月11日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「豊臣兄弟!」。戦国時代、主人公・豊臣秀長(=小一郎/仲野太賀)が、兄・秀吉(池松壮亮)を支え、兄弟で天下統一を成し遂げるまでの軌跡を描く物語は快調に進行中。小一郎と秀吉が播磨攻略に難渋する様子を描いた6月7 … 続きを読む

page top