ドラマを支えるVFXの舞台裏は「日本では今までやってこなかったような新しい試み」尾上克郎(VFXスーパーバイザー)【「いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~」インタビュー】

2019年10月6日 / 21:00

-VFXを使ってリアリティーを高めているわけですね。

井上 それが今回、尾上さんにVFXスーパーバイザーをお願いした最大の理由になります。もともと僕は“いかにもCG”というツルっとした映像にはしたくないと考えていました。その上で、リアリティーは必要だけど、あまり作り込み過ぎず、ファンタジー的な要素もほしいと。

尾上 理屈や数字では伝えにくいものなので、井上さんと話し合いながら、「こんなことを考えているんだろうな」と、想像しながら、演出意図にだましだまし寄せていく感じで。

井上 そういう線引きの難しいあいまいなところから、相談しつつ、手探りでやってもらっています。間違いなく、VFXなしにはできなかった作品です。関東大震災後の東京や定期的に登場する日本橋の風景はミニチュアを併用したり、シベリア鉄道の車内は窓の外にLEDのパネルを置き、実際の風景を映して撮影したり…ということもやっています。

尾上 ふとしたことに違和感が出てしまうと、見ている方が物語に集中できなくなるので、そうならないように…ということを常に心掛けています。だいたい1話につき、5、6カットは頭を抱えるようなカットが出てきて、答えが出ないまま、後で何とか…とやっている感じです。先日、(脚本家の)宮藤官九郎さんから「いろいろ面倒くさいものを書いてすみません」と謝られました(笑)。

結城 今回のVFXが皆さんから評価いただけたのは、尾上さん自身が演出家としての目を持っていることが大きいと思います。普通、監督とVFXスーパーバイザーの関係では、どちらかというと技術的な面に絞った提案をするパターンが多いんです。でも、尾上さんの場合は、よりクリエーティブな点も踏まえた提言ができる。それが成功につながっているのではないかと。

尾上 最初にお話を聞いたときから、今までにない大変な作業になることは予想していました。でも、実際にやってみたら、予想以上で…。この年になって、こんなに“初めて尽くし”になるとは思っていませんでした(笑)。日々、勉強しながら…という状態で、日本では今までやってこなかったような新しい試みをさせていただいていることは間違いありません。

-第39回は満州が舞台になりますが、満州の風景もVFXで作っているそうですね。

尾上 満州は荒野にこつぜんと現れたという感じの不思議な街が多くて、中国の古い街にロシア人や日本人が入ってきたので、和洋中の風景が混在しています。ロシア正教風の尖塔があるかと思えば、中国語や日本語の看板が立っていたりと、雑多でわい雑な雰囲気もほしかったので、オープンセットで撮影した映像に、資料を見ながら塔を立てたり、空の色をそれらしい雰囲気に加工したりしています。ぜひ楽しみにしてください。

(取材・文/井上健一)

建設中の神宮外苑競技場

  • 1
  • 2
 

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

門脇麦、「芝居に対してすごく熱い」田中圭と夫婦役で5度目の共演 舞台「陽気な幽霊」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年4月2日

-ところで、門脇さんは映像作品でもご活躍されていますが、舞台に立たれることに対してはどのような思いがありますか。  気持ちの面では変わらないですが、舞台はカメラが寄ってくれるわけではないので、声や体の所作で伝えなければいけないと思います。映 … 続きを読む

今田美桜「『アンパンマン』のように、幅広い世代に愛される作品に」連続テレビ小説「あんぱん」いよいよスタート!【インタビュー】

ドラマ2025年4月1日

-高知県の「やなせたかし記念館 アンパンマンミュージアム」も訪問されたそうですね、  「アンパンマンミュージアム」には二度伺いました。どちらの日も親子連れでいっぱいで、改めて『アンパンマン』という作品が幅広い世代に愛されていることを知り、「 … 続きを読む

坂本昌行&増田貴久がミュージカルで初共演「笑顔になって、幸せになって帰っていただけたら」 ミュージカル「ホリデイ・イン」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年4月1日

-なるほど。では、坂本さんは増田さんのテッド、増田さんは坂本さんのジムについてはどんな印象がありますか。 坂本 テッドは一見すると自分の意見を押し通して歩んでいるように見えるけれども、実は周りを自然と幸せにしたり、勇気づけたりするタイプの役 … 続きを読む

藤原竜也が挑む「マクベス」 「1日1日、壁を突破することが目標」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年3月29日

-では、鋼太郎さんの演出の魅力はどこに感じていますか。  鋼太郎さんらしい的確に丁寧な演出をつけてもらえるので、われわれとしてはやりやすいです。尊敬していますし、シェークスピア作品の演出家としてこの方の右に出るものは今、日本にはいないんじゃ … 続きを読む

竈門炭治郎を演じる阪本奨悟が語る、舞台「鬼滅の刃」の魅力 「生身の人間が演じているからこそ、リアルに共感できる」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年3月28日

-炭治郎のどんなところに魅力を感じていますか。  優しいところです。言葉にするとすごく薄っぺらく感じますが、僕だったら自分の家族が殺されたら恨み殺してやると思ってしまうかもしれません。心が歪んでしまってもおかしくない状況なのに、炭治郎は純粋 … 続きを読む

Willfriends

page top