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1936(昭和11)年のベルリンオリンピックで、日本代表としてマラソンに出場した朝鮮出身の孫基偵選手が、金栗四三(中村勘九郎)以来の悲願だった金メダルを獲得。このとき、孫選手と3位の南昇竜選手が履いていたのが、金栗が東京のハリマヤ製作所の主・黒坂辛作と共に開発したマラソン用の足袋だった。そのハリマヤには、新たに増野りく(杉咲花)や小松勝(仲野太賀)が訪れるようになり、新しい時代を迎えつつある。長きにわたって日本のマラソンを支えてきた黒坂辛作役の三宅弘城が、撮影の舞台裏を語ってくれた。
辛作さんにとっては、喜びもひとしおだったに違いありません。自分が作った足袋を履いた選手が金メダルを取ると言う、金栗さん以来の悲願がかなったわけですから。「日本人だろうが、朝鮮人だろうが、ドイツ人だろうが、アメリカ人だろうが、俺の作った足袋を履いて走った選手はちゃんと応援するし、勝ったらうれしい」というせりふに、その気持ちが表れています。僕も、今まで描かれてきたオリンピックの場面の中で、一番感動しました。
辛作さんは、ハリマヤに来る人にしか会いませんが、いろいろな人が集まってくるので、ハリマヤちょっとした憩いの場や公民館のような場所になっていますよね。今では辛作さんも年を取った分、以前ほどの勢いはなくなり、落ち着いた感じになってきました。いずれにしても自分より若い人たちなので、親心のようなものは、金栗さんがいたときから変わっていません。ただ、小松勝に関しては、金栗さんの弟子なので信用しつつも、「またちょっと違うタイプのおかしなやつが来たぞ」とは思ったんでしょうね(笑)。
感慨深かったです。辛作さん、長生きしていろいろなものを見ているんだな…と。ずっと足袋しか置いていなかった店の様相も、大きく変わっていたので、だいぶ時間がたっていることを実感しました。まるで歴史の生き証人になった気分です(笑)。
典型的な下町の職人ですよね。本当は優しいんだけれど、照れ屋な性格が邪魔して、口の利き方が乱暴になったり…。僕も13年ほど東京の葛飾区で暮らし、ああいう“べらんめえ調”のおじさんたちの中で多感な時期を過ごしたので、とても共感できます。自分の仕事にプライドを持っている職人という点では、僕も似た部分がありますし。役者としても、監督や演出家からのオーダーに対して、「できない」とは言いたくないんですよね。極力、注文には応えたいし、無理な場合でもなんとか近づけるように、頭をひねってお芝居を考えることもありますから。そういうところは、辛作さんにも通じるなと。
とても心のある役者さんです。一緒にやっていると、お芝居に感動させられたり、こっちを乗せてくれたりするので、楽しいです。撮影のときは何度かリハーサルを繰り返しますが、本番になるとそれ以上のすごいものを見せてくれますし…。舞台では、同じことを何度も繰り返さなければならないので、それに合わせた芝居を探っていくことになりますが、映像の場合、本番は一発勝負。歌舞伎の経験が長い勘九郎さんも、そういう映像の特徴を理解して、思う存分、楽しんでいるような気がします。
「この人、こんなにすごかったっけ…!?」と(笑)。田畑役にぴったりですが、せりふを覚えるとき、台本を声に出して読まないという話を聞き、改めて感心しました。阿部くんも宮藤(官九郎/脚本家)さんも、お互いのことをよく分かっている。だから、宮藤さんは阿部くんがこう演じるだろうと思って台本を書き、それを阿部くんが越えてくるという、ものすごいバトルが2人の間で繰り広げられているのではないでしょうか。
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