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日本のアニメーションの草創期を舞台にした「なつぞら」で、重要かつ、これまでの朝ドラにはなかった多彩な演出で視聴者を楽しませているアニメーションパート。 少女が森の動物たちと戯れるタイトルバックに始まり、初回の戦災孤児のなつたちが逃げまどう「東京大空襲」、なつの父が描いた家族の絵が動き出すさま、漫画映画『白蛇姫』『わんぱく牛若丸』など、さまざまなアニメーションを手掛けている制作チームの中で、アニメーション監修・キャストの作画指導などを務める舘野仁美、題字や絵画制作、タイトルバックなどの演出・原画・キャラクターデザインを務める刈谷仁美に、制作の裏話やアニメーション業界の知られざる現状を聞いた。
舘野 タイトルバックや、劇中のアニメーション、原画などの小道具の制作をはじめ、アニメーターを演じる役者がパラパラと原稿をめくる“指パラ”といった所作や、道具の扱い方などを指導しています。ほかにも、台本を読んで現実の現場との相違に関するアドバイスなどをさせていただいています。
舘野 直感です(笑)。彼女の目が大きくてキラキラしていて、元気で生命力があふれている姿や、素直だけど頑固さも持ち合わせているところなどはヒロインのなつ(広瀬すず)みたいですよね。アニメーターの素養は絵に出ると思っているので、あたかもなつが描いたようなアニメーションになれば、ドラマもさらにすてきになると思いました。
刈谷 まさか自分が朝ドラにかかわるとは夢にも思わず、本当に驚きました。ドラマの中でアニメを作る機会はあっても、アニメーターのドラマにアニメーターとして参加するなんて一生に一度のことでしょうから、これも何かの縁だと思って快諾しました。
刈谷 昔の絵は洗練されていてシンプルだけど、柔らかい中に立体感があったり、独特の品もあったりするので、それを当時のアニメーターの画集を見てまねをする努力をしています。ただ、絵の雰囲気をつかめても、自分が描くと、やはり今風になってしまうので苦労しています。
舘野 ディズニーアニメーションでは「一番すてきな字」として、『シンデレラ』や『白雪姫』などのタイトルにカリグラフィが使われているのですが、そこでカリグラフィには品格と風格があるという考え方にたどり着きました。普通にレタリングするよりも、アニメーションが題材のドラマにぴったり合うとも思いました。
刈谷 最初は明朝体(フォントの種類の一つ)で書いた「なつぞら」の周りに装飾を施しましたが、舘野さんに「『なつぞら』のフォントにしてほしい」「みんながびっくりするような“刈谷フォント”を目指すんだ」と駄目出しをされました。それでディズニーの要素を取り入れたりして今のフォントができました。タイトルが動く演出になるだろうという想定もあったので、派手にし過ぎず、かといって素朴になり過ぎないように注意しました。
舘野 広瀬さんは挑戦して獲得していく方です。やり方を少し教えると、自分なりに工夫しながら楽しそうに覚えていかれます。集中力がすごくて、どんなこともそうやってこなされるのかな?と思います。天才アニメーター猿渡竜男役の新名基浩さんは、最初の登場シーンにある線を引く動きは、こちらが驚くほどたくさん練習をされていました。本番ではシュッと自然にできて、猿渡の優秀な雰囲気が出ていました。
舘野 初回に関しては冒頭から3種類のアニメが差し込まれていて、実写ではないとの拒否反応を危惧しておりましたが、周囲の反応はよかったです。「アニメーターという存在を日の当たる場所に持ってきてくれてありがとう」と言ってくれた方もいました。でも、たいていは遠巻きで見守ってくださっている感じです。
刈谷 アニメーター仲間は、ライバルでもあるので、ひっそり裏で見ている感じです。
舘野 この仕事を目指す方は増えるでしょうけれど、アニメーション業界の待遇は昔からよくないです。なつが働いている東洋動画みたいな大手の会社でなければ生活は大変で、私も名の知れた会社に入りましたが、最初は家賃を払うだけでいっぱいいっぱいでした。今、「神」と呼ばれるようなアニメーターは極貧時代を乗り越えてきた方々です。だから、アニメーターの待遇改善は永遠のテーマです。日本が誇る文化として「ジャパニメーション」と言われていますが、それを生み出す人たちにお金がわたらず、一体、どこに消えているのか…という不思議は常にあります。アニメーターを目指す方が増えることで、今回こそ業界が変わるきっかけになることを願います。
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