おでん屋でのアドリブ歌唱は無念の「9割カット」、それでも朝ドラに注ぐ熱い思い 山口智子(岸川亜矢美)【「なつぞら」インタビュー】

2019年7月20日 / 08:30

 30年前、「純ちゃんの応援歌」で女優人生をスタートさせた山口智子にとって、朝ドラは特別なステージだ。「ご恩返しをしたい」と、ダンスシーンに挑戦したり、編集でカットされるのも承知の上で、おでん屋のカウンター内で“一人懐メロ歌謡祭”を繰り広げるなど、体当たりで岸川亜矢美役に挑む山口にその胸中を聞いた。

岸川亜矢美役の山口智子

-「純ちゃんの応援歌」以来およそ30年ぶりの朝ドラ出演ですね。

 30年ねぇ…。びっくりしちゃいますよね。お母さんのおなかに戻ってきたような安心感とともに、ビシッと本気で臨まなければという、背筋が伸びるような緊張感もあります。朝ドラは周りからの反響もすごくて、疎遠になっていた友達や、遠い親戚から連絡があって、絆を深めるのに役立たせていただいています(笑)。

-現場はどのような雰囲気ですか。

 若々しいキラキラしたエネルギーにあふれた皆さんに囲まれていますが、本気で根性を見せてぶつかってくる気迫と豊かな才能が素晴らしいです。初心に帰らなければ!と、改めて大きな刺激を頂ける毎日です。

-「ムーランルージュ新宿座」の元人気ダンサーで、今は、おでん屋「風車」のおかみの岸川亜矢美役ですが、演じていていかがでしょうか。

 生きる喜びを体で表現できる役を頂いたことが本当にうれしいです。エンターテインメントの世界に身を置き、踊ることで戦争でのつらい別れや苦労の中でも、強く生きる力を生み出してきました。今はおでん屋のカウンターが、亜矢美にとって人生の晴れ舞台という気持ちで演じています。パワー全開で周囲の人たちを巻き込んでいきたいです。

-歌ったり、踊ったり、小道具の楽器などを使われたりしていますが、アドリブですか。

 亜矢美は歌と踊りとともに生きている女性です。だから、現場では絶対に歌おうと決めて、当時はやっていた曲の中から、そのシーンの登場人物の気持ちを代弁するような歌詞の部分を抜き出して歌っています。でも時間の関係で約9割は編集でカットされています(笑)。カスタネットなどの、踊り心をくすぐる小道具もスタッフさんが置いてくださるので、取り入れて踊っています。

-カットは悔しいですね。世に出ている出ていないにかかわらず、これまでで楽曲とシーンがうまくハマった自信作を教えてください。

 なっちゃん(広瀬すず)が咲太郎(岡田将生)を探している回では、「どこにいるのか、リルを知らないか」と「上海帰りのリル」を歌いました。なっちゃんが北海道から上京したときは、なっちゃんの素朴さや富士子さん(松嶋菜々子)の母の思いを「リンゴかわいや~」に乗せて「リンゴの歌」を歌いました。皆さんのお耳に届くことはないでしょうが、「歌う亜矢美」を自分で楽しませていただいています(笑)。

-山口さんが20~30代の頃に本格的に学ばれたフラメンコも取り入れていますね。

 用意してくださる衣装もなぜかフラメンコ風の水玉模様だったり、ヒラヒラの飾りがついたものだったり、面白い服を集めてくださるので、私もついつい気分が盛り上がってしまいます(笑)フラメンコは、庶民の暮らしの中から生まれたもので、みんなで歌やギターや踊りで心を合わせて、共に人生の辛苦を乗り越えていこうというものです。まさにこのドラマと共通するテーマだと思います。

-母の顔も持つ亜矢美ですが、当初とは変化した咲太郎との親子関係が気になります。こうなることはご存じでしたか。

 亜矢美と咲太郎の関係がどうなるかも分からないまま撮影が始まったので、中盤、その関係性に微妙な変化が突如浮上してきて、「そうきたか!?」とびっくりしています。こんな複雑な関係性の役は初めてなので、とてもやりがいがあります(笑)。

 
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