「監督からいきなり『肋木に足を掛けて…』と言われ、焦りました(笑)」杉本哲太(永井道明)【「いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~」インタビュー】

2019年5月12日 / 21:00

 日本初の駅伝の開催や後進の指導など、マラソンの普及に向けて精力的に活動する金栗四三(中村勘九郎)。その四三の恩師の一人が、東京高等師範学校で教授を務める永井道明だ。海外視察の経験を持ち、肋木(ろくぼく)を日本に導入するなど、体育の普及に尽力した功労者の一人でありながら、頑固で厳し過ぎる性格が災いし、周囲と衝突することもしばしば。そんな永井を、どこか憎めない人間味あふれる人物として演じているのが杉本哲太。撮影の舞台裏、演技に込めた思いなどを聞いた。

永井道明役の杉本哲太

-第18回で女子の体育教育を巡り、永井は愛弟子の二階堂トクヨ(寺島しのぶ)から「あなたはもう古い!」と一喝されてしまいましたね。

 トクヨさんは永井イズムを受け継いだ人ですから、「孤立していた戦いに、ようやく味方が…」と思っていたのですが…。悲しい展開が待っていました(苦笑)。ただ、演じている寺島しのぶさんとは、これまで何度も共演している仲。「龍馬伝」(10)でも兄妹役でしたし、今回も息はぴったりです。実は永井はトクヨさんにほれていたのでは…?とにおわせる場面もあるのですが、寺島さんのおかげで、厳しい永井の意外な一面がうまく出せたのではないでしょうか。

-劇中では女子スポーツにスポットが当たるようになってきましたが、永井は厳しい目を向けていますね。

 トクヨさんの授業の内容も生徒の服装も、自分の想像を超えていたので、永井が目をひんむいて怒っていましたね。しかも、可児(徳/古舘寬治)さんまで、とんでもないコスチュームでダンスを披露したので、さらに大変なことになり…(笑)。でも、そういうところが永井の見せ場なので、皆さんに楽しんでいただければうれしいです。

-そんな永井を演じる上で、心掛けていることは?

 いつも大声で怒鳴っている厳しい先生と見られていますが、実は着ている服は、生徒と同じ黒い学生服なんです。残っている本人の写真を見ても、満面の笑みで生徒たちと一緒に写っていたりする。そういうものを見ると、やはり生徒たちを愛していて、父親のような思いもあったんだろうなと。大声で怒鳴るのは、そういう気持ちの裏返しで、永井なりの不器用な愛情表現なんでしょうね。演じる上では、そういうことを意識しています。

-演じる上でモデルにしたような人はいますか。

 今の若い人が見たら、「こんな怖い先生、いないだろう」と思われるかもしれませんが、僕が中学生、高校生の頃は、体育の先生は基本的に厳しかったんです。大声で怒鳴られるのは当たり前でしたし…。そもそも、僕の父親がレスリング部のコーチをやっていて、体育会系の厳しい人でしたから。そういう意味では、モデルになる人は山ほどいます(笑)。

-永井は「ミスター・肋木」と呼ばれ、肋木を全国に普及させた人物ですが、実際に肋木をやってみた感想は?

 実は永井自身が肋木を実演する場面はそれほど多くないんです。とはいえ一応、ストレッチや柔軟体操をやって臨みました。一見、地味で簡単そうに見えますが、実際はかなり大変です。ぶら下がっているだけでも自分の体重が腕にかかってきて、ものすごく痛くなってくる。30秒もやったら限界です。ある日、食堂のシーンを撮影するとき、監督からいきなり「ここは肋木に足を掛けて、体幹を鍛えながら…」と言われたことがあり、かなり焦りました。僕としては「えーっ!」という感じです(笑)。事前に言ってくれれば、それなりに準備もできたんですけど、なんとかやり切りました(笑)。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

【週末映画コラム】91分で全てが解決する小気味よさ『バッド・デイ・ドライブ』/戦闘シーンと奇妙な夫婦関係を並行して描く『ナポレオン』

映画2023年12月1日

『バッド・デイ・ドライブ』(12月1日公開)    舞台はベルリン。車で子どもたちを学校に送り届けることになった金融ビジネスマンのマット(リーアム・ニーソン)のもとに「車に爆弾を仕掛けた。指示に従わなければ爆破する」という謎の着信 … 続きを読む

唐田えりか「宝物のような作品になりました」人生を諦めた女性の再生の物語に主演『朝がくるとむなしくなる』【インタビュー】

映画2023年11月28日

 12月1日から公開となる『朝がくるとむなしくなる』は、人生を諦めている若い女性が、元同級生との偶然の再会をきっかけに、自分らしさを取り戻していく姿を優しいまなざしで見つめた物語だ。仕事がうまくいかずに会社を辞め、コンビニでアルバイトしなが … 続きを読む

「いろんな仕掛けを考えながら演じていました」上野樹里、「今の時代にぴったりな映画だなと思いました」林遣都『隣人X -疑惑の彼女-』【インタビュー】

映画2023年11月27日

 ある日、日本は故郷を追われた惑星難民Xの受け入れを発表した。週刊誌記者の笹は、スクープを狙ってX疑惑のある良子に近づく。2人は少しずつ距離を縮めていき、やがて笹の中に本当の恋心が芽生えるが…。疑われる女と真実を探る記者を巡る異色のミステリ … 続きを読む

【週末映画コラム】関西にもひどい地域格差が…『翔んで埼玉~琵琶湖より愛をこめて~』/戦国版の「アウトレイジ」『首』

映画2023年11月24日

『翔んで埼玉~琵琶湖より愛をこめて~』(11月23日公開)  東京都民から迫害を受けていた埼玉県人は、麻実麗(GACKT)率いる埼玉解放戦線の活躍によって自由と平和を手に入れた。麗は「日本埼玉化計画」を推し進め、埼玉県人の心を一つにするため … 続きを読む

望海風斗が挑む、希代の悪女・イザボー 「必死に生き抜いて、戦い抜く女性を演じたい」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2023年11月24日

 望海風斗が主演、作・演出を末満健一が務める、新作オリジナルミュージカル「イザボー」が2024年1月15日から上演される。宝塚歌劇団 雪組トップスターとして活躍し、退団後は「ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル」や「DREAMGIRLS」な … 続きを読む

Willfriends

page top