【インタビュー】『春待つ僕ら』平川雄一朗監督「若いキャストが頑張ってくれたおかげで、とても気持ちのいい映画になりました」

2018年12月14日 / 15:21

 あなしんの人気コミックを原作に、土屋太鳳、北村匠海、小関裕太、磯村勇斗、杉野遥亮、稲葉友という注目の若手俳優たちが集結した青春映画『春待つ僕ら』が12月14日から全国公開される。本作は、孤独な女子高生と、バスケットボールに情熱を燃やす男子高校生たちの恋と友情を描いた物語だ。メガホンを取ったのは、大ヒット作『ROOKIES -卒業-』(09)の平川雄一朗監督。公開を前に、作品に込めた思い、撮影の舞台裏を聞いた。

平川雄一朗監督

-オファーを受けたときの感想は?

 原作が僕の得意な少年漫画ではなく、少女漫画だったのでやや戸惑いました。ただ、台本を作る過程で改めて読んでみたら、「今を懸命に生きる若者の話」だと気付いたんです。その中に恋愛や友情の物語がある。そういう人の絆の話であれば、僕にもできるだろうと。

-映画化する上で大事にしたことは?

 この作品の登場人物たちは常に思い悩んでいます。思い悩むのは思春期の特権ですが、高校を卒業した後は悩まないのかといえば、そんなことはありませんよね。40過ぎの僕だって、日々悩んでいる。そんな「みんな背伸びして、頑張って生きているんだ」という雰囲気が映画全体から出せればと思っていました。

-映画は原作をうまく2時間にまとめていますが、主人公の美月(土屋太鳳)が作文コンクールに出場するエピソードは原作にはない部分です。この作文コンクールは、そういう思いの中から生まれたものでしょうか。

 そうですね。原作がまだ完結していないので、1本の映画としてどう決着させたらいいのか模索し、脚本の完成まで1年以上かかりました。その結果、生まれたのが作文コンクール。美月が独りぼっちになったきっかけは、作文を学校で笑われたこと。ならば、美月の成長を描くには、作文コンクール出場がふさわしいのではないかと。

-コンクールで美月が朗読する作文からは、前向きなメッセージが伝わってきます。その内容にもこだわられたのでしょうか。

 かなり試行錯誤しました。もともとは台本を基にした原稿を用意していましたが、それを読んだ太鳳ちゃんが「これは美月の思いだから、自分も考えたい」と。そこから太鳳ちゃんと僕の間で何回かやり取りをした結果、出来上がったのが劇中のものです。映画の中では短く編集されていますが、全部で原稿用紙5枚分。太鳳ちゃんも、「制服を着るのはこれが最後になるかもしれない。だから、これは私の卒業論文」という思いを込めて書いてくれました。

-気持ちのこもった土屋さんのお芝居も印象的でした。

 撮影のときは、僕も太鳳ちゃんも「いいものにしたい」という思いがあったので、「今は声の張りがなかった」、「気持ちが途切れた」と追究し、何回か撮り直しています。だから、あの場面にはものすごくたくさんの思いが詰まっています。

-美月と親しくなる永久(北村匠海)、恭介(磯村勇斗)、竜二(杉野遥亮)、瑠衣(稲葉友)というバスケ部の4人も重要な存在です。それぞれ役に関しては、どんなお話をされたのでしょうか。

 最初にイメージを伝えました。「磯村くんは花沢類(『花より男子』に登場するキャラクター)ね」みたいな感じで(笑)。面白かったのは、稲葉くん。「かわいい弟キャラ」という意味で、「君は(俳優の)志尊淳になれ」と言ったら、「えー!志尊ですか!?」と(笑)。ただ、彼らも原作のキャラクターが持っている魂を忘れずに、生きた人間としてきちんと演じようと必死にやってくれたので、あとは多少修正したぐらい。基本的にはそれぞれの持ち味を生かしました。

-浅倉永久役の北村匠海さんはいかがですか。

 北村くんには具体的なイメージは伝えませんでしたが、『君の膵臓をたべたい』(17)とは変えたかったので、「永久ってそうなのかな…?」と、ずっと問い掛けていました。北村くんは、静と動のバランスをきちんと計算して芝居を作れる人。そこに問いを投げ掛けると、また少し違うものが生まれてくる。それが永久の個性になればと思ったので。

 
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