【インタビュー】『輪違屋糸里 京女たちの幕末』藤野涼子「この作品は私にとって、学生から大人へと考え方が変わる第一歩になりました」

2018年12月14日 / 18:00

 『ソロモンの偽証』二部作(15)、連続テレビ小説「ひよっこ」(17)などで注目を集めた若手女優の藤野涼子が挑んだ初の時代劇『輪違屋糸里 京女たちの幕末』が、12月15日から有楽町スバル座ほか全国順次ロードショーとなる。原作はベストセラー作家・浅田次郎の『輪違屋糸里』。幕末の京都を舞台に、新選組の志士を愛した女たちの生きざまを端正な映像美とともにつづった本格派の時代劇だ。公開を前に、撮影の舞台裏、初めての時代劇で学んだことなどを語ってくれた。

主人公の糸里を演じた藤野涼子

-初めての時代劇ということですが、出演が決まったときの感想は?

 この作品のお話を頂いた時、私は16歳でした。加島(幹也)監督がデビュー作の『ソロモンの偽証』を見てくださり、私を主人公の糸里役にとオファーしてくださいました。最初は「話がしたい」ということでお会いし、高校生活や私生活のことをお話ししました。その後で「糸里を演じてほしい」と。まさか時代劇のお話を頂けるとは思っていなかったので驚きました。とてもうれしかったです。

-もともと、時代劇には興味があったのでしょうか。

 時代劇はもともと好きで、小学生の頃はよく「水戸黄門」を見てました。中学の頃は黒澤明監督の『七人の侍』(54)や『蜘蛛巣城』(57)などを見ていました。もともと、両親や周りの人からも「古風な顔だから、かつらや着物が似合うのでは?」とよく言われていました。そういうこともあり、女優の仕事を始めてから「時代劇に出演してみたい」という気持ちが強くありました。

-芯の強い糸里は、『ソロモンの偽証』で演じた役とも重なる部分がありますね。

 はい。ただ、最初に脚本を読んだときは、糸里はもっと大人びた、成熟した女性だと思っていました。しかし、それを加島監督にお話ししたら、「糸里は何も分かっていない、ただの恋する乙女。涼子ちゃんと同じ16歳の女の子だよ」とアドバイスを頂きました。それから、糸里との共通点を見つけやすくなりました。

-では、演じる上では心情的に自分と近い感じで?

 きっちゃん(吉栄/松井玲奈)と一緒にお団子を食べるシーンや、楽しそうに街中を走るシーンは、私自身とも重なりました。ただ、クライマックスでたんかを切るシーンは、糸里もとても成長していて、16歳の私には理解できないところもありました。

-そういう部分のお芝居は、どんなふうに作っていったのでしょうか。

 出演が決まったときは、初めての時代劇の上に、舞妓役ということで、私に主演が務まるか不安でした。そこで、撮影の2カ月前から加島監督とリハーサルを行ない、徐々に女の子から大人の女性へと変わっていく糸里の心情を、一つ一つ丁寧に教えていただきました。おかげで、糸里を演じきることができました。

-お芝居で苦労した点は?

 土方(歳三=溝端淳平)さんと川辺に座ってたあいもない話をするシーンが難しく、ものすごく苦労しました。今まで恋愛映画の経験がない上に、大人の男性を相手にすることになったとき、どうお芝居をすればいいのか分からず…、悩むうちに「溝端さんに触れたら、感情が動くかも」と気付き、「袖をつかんでもいいですか」とお願いしました。そうしたら、溝端さんから「そういうことをやると気持ちが動くから、どんどん取り入れた方がいいよ」とアドバイスを頂きました。そのアドバイスは、他の作品でも役立っています。

-加島監督だけでなく、溝端さんも含めて周りの方からいろいろなことを学んだということですか。

 所作に加えて、鼓を打ったり、三味線を弾いたりと、私にとっては全てが初めてのことばかり。しかし、スタッフの方には一から十まで丁寧に教えていただき、実績のある共演者の方からもいろいろなことを吸収させていただくことができました。『ソロモンの偽証』で共演させていただいた田畑智子さんがいらっしゃったことも、安心感につながりました。そういうアットホームな現場で糸里を演じさせていただけたことは、本当に幸せでした。

 
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