【インタビュー】『坂道のアポロン』三木孝浩監督「知念侑李くんと中川大志くんのセッションが素晴らしく、『この感動をきちんと映画にしなければ』という使命感があふれてきました」

2018年9月18日 / 12:00

-2人の演技力のたまものですね。

 本当に素晴らしかったです。2人で練習していく中から「ここで目線を合わせれば、タイミングを合わせているように見えるから、リアルに見えるよね」みたいなことを、自分たちできちんとつかんでいくんです。若さってすごいな…と。

-2人は以前も共演したことがあるそうですが、そういう関係性が生きたのでしょうか。

 そうですね。それがなければ、ここまでできるようにはならなかったと思います。そういう関係性があるとは知らずにキャスティングしていましたが、その意味では、やっぱりご縁があったんだなと。

-三木監督は本作の他に『ソラニン』(10)や『くちびるに歌を』(15)など、音楽映画を幾つも手掛けていますが、音楽映画に特別な思いはありますか。

 単純に音楽映画が好きなんです。普段、他の映画を撮っていると、「ちゃんと感動してもらえるかな」とか、「心に残ってもらえるだろうか」と不安になる瞬間がいっぱいあります。だけど、音楽映画は音楽の強度があるおかげで、自分の作品でありながら、自分が心動かされることがあるんです。だから、すごくやりやすいし、安心して見ていられる。いい音楽であればあるほど、何回見ても心動かされる。音楽映画はそういう力を持っています。だから、お話を頂くと「ぜひやらせてください」と言ってしまいます(笑)。

-この映画が今まで手掛けてきた音楽映画と異なる点は?

 圧倒的に難易度が高かったです。今までやってきた作品は、ロックバンドとか合唱とか吹奏楽という、ある程度決まった形をプレーするもの。だけど、ジャズの魅力はやっぱりセッション。だから、その場で出たアドリブ感を、アドリブでない形で撮らなければいけない。レコーディングしたプロのミュージシャンですら、「アドリブなので、同じことはできません」と言う音源を完璧にマスターして演奏しなければいけない。圧倒的に難しいことを俳優に要求しなければいけないんだなと、後になって気付きました。でも、2人が頑張ってくれたおかげで、うそをつかずに撮影できたのは、本当にうれしかったです。

-そのあたりもDVDの見どころでしょうか。

 そうですね。特典映像にはセッション場面をマルチアングルで収録しています。知念くんと中川くんはもちろん、ディーン・フジオカさんや中村梅雀さんの演奏もすごくすてきです。時間の都合で心を鬼にしてカットした分、特典映像に収録しています。本編に出せなかった映像がたくさん収録してあって見どころたっぷりなので、ぜひご覧ください。

(取材・文・写真/井上健一)

(C)2018 映画『坂道のアポロン』製作委員会 (C)2008 小玉ユキ/小学館

  • 1
  • 2
 

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

高橋克典「これは吉良の物語でもあるのだと感じていただけるような芝居をしたい」 堤幸彦「『忠臣蔵』は、演劇的に言えば1丁目1番地的な作品」 舞台「忠臣蔵」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年12月10日

-堤さんと高橋さんは高橋さんのドラマデビュー作以来のタッグと聞いています。堤さんは高橋さんの吉良上野介にどのような期待を寄せていますか。 堤 ぴったりだと思いますよ。生き馬の目を抜く芸能界で酸いも甘いも知り尽くしていますから。デビューの瞬間 … 続きを読む

生田斗真が驚きの一人二役!「最初から決まっていたわけではありません」制作統括・藤並英樹氏が明かす舞台裏【大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」インタビュー】

ドラマ2025年12月8日

-治済に対する仇討ちのため、対立関係にあった蔦重と松平定信(井上祐貴)がタッグを組む展開にも驚かされると同時に、思わず胸が熱くなりました。 藤並 白河藩に戻った後の定信は、それまでとは打って変わって、大田南畝や山東京伝に本を書かせているんで … 続きを読む

板垣李光人「最初から、戦争を考えて見るのではなく、実際に見て感じたことを広めていっていただければ、それが一番うれしいです」『ペリリュー ―楽園のゲルニカ―』【インタビュー】

映画2025年12月5日

-戦場で、田丸が絵や漫画を描くことにどのような意味があったと思いますか。  功績係に任命された田丸には、もちろん何かを書き記すという使命感もあったでしょうが、いつ自分や仲間が命を落とすか分からない状況の中で、自分の世界の中で向き合えるものが … 続きを読む

【物語りの遺伝子 “忍者”を広めた講談・玉田家ストーリー】(8)百年ぶりの復活へ 四代目が掲げた三つの大願

舞台・ミュージカル2025年12月4日

 YouTubeもNetflixもない時代、人々を夢中にさせた“物語り”の芸があった——。“たまたま”講談界に入った四代目・玉田玉秀斎(たまだ・ぎょくしゅうさい)が、知られざる一門の歴史物語をたどります。    2016年に四代目・玉田玉秀 … 続きを読む

多部未華子「学びの多い現場でした」DV被害者役に挑んだヒューマンミステリー「連続ドラマW シャドウワーク」【インタビュー】

ドラマ2025年12月1日

  -雰囲気のいい現場だったようですね。  中でもしのぶさんは、「これはこういうことなのかな?」といった感じで、積極的に質問をされるんです。その上、「私、緊張しちゃう」などと、ご自身の気持ちを織り交ぜながら現場にいてくださるので、私も質問が … 続きを読む

Willfriends

page top