エンターテインメント・ウェブマガジン
尾崎豊、ブラッド・ピット、坂本龍馬。自分の名前を捨て、好きな女の子が好きな男に成り切り、10年間、一つの部屋でひそかに彼女を見守り続けた3人の男たち。だがある日、彼女に借金返済を迫る借金取りが彼らの前に現れたことから、平穏だった3人の日々は大きく揺り動かされていく…。話題のドラマ「バイプレイヤーズ」シリーズなどを手掛けた松居大悟が自ら監督・原作・脚本を務めた異色のラブストーリー『君が君で君だ』が7月7日から公開された。本作で“ブラピに成り切る男”を演じた満島真之介が、作品誕生の舞台裏を明かしてくれた。
全く共感できなかったです。かなり客観的に読みました。こんなに客観的にならないと読めない脚本もなかったぐらいで…。尾崎豊の…という話だったのに、全然違うじゃないかと。でもその一方で、今はものを作るとき、ターゲットを意識してその枠にハマるようなジャンルやテーマばかりを選びすぎて、衝撃的なものが全くといっていいほどない時代。そんな中で、こうやって自分の中に渦巻いている愛情みたいなものを表現する松居さんのやり方については、一理あるなと。
彼らはひたすら1人の女の子を見守っているわけですが、それを“ストーカー”と呼ぶかどうかは言い方の問題。正直、僕は相手が女の子でなくてもいいんじゃないかと思ったんです。人が人を愛するということでいえば、孤独死しそうなおじいちゃんを見守っている、でもよかったかもしれない。でも、それだと松居さんの作品ではないし、映画にもなりにくい。要するに、今まで何人もの哲学者が愛について語ってきたけれど、それぞれ違ったことを言っていて、正解はない。これもそういうものの一つじゃないかと。だから、僕自身は共感できないけど、一つの愛の形としてはあるのかもしれない。そう思いました。
まず、監督と話をしました。監督が生みだしたものなので、松居さんと共通認識を持たないと、それぞれが思う愛の表現が出てしまい、何だか分からなくなる。だから、まずは同じフィールドに立ちたいと思って、池松(壮亮/尾崎豊に成り切る男)くんと大倉(孝二/坂本龍馬に成り切る男)さんと僕と松居さんの4人で何度か話し合いをしました。
ざっくばらんなことです。僕らは「全然共感できないな…」と思っていることに対して、松居さんは「いや、これは普通じゃない?」と言ったり…。そういうお互いの違いを認め合う作業を経て、映画に対する愛が生まれていきました。その後に、僕らが見守るヒロイン役のキム・コッピちゃんも加わって何日かリハーサルをやり、向かうべき場所に一筋の光が見えるぐらいまで準備をして。それから撮影に入りました。変に自分1人で考え込んで、「これはストーカーなのか?」みたいなディテールを追い駆けると正解はない。だから、みんなで歩いたあの時間は、僕にとってとても重要でした。
かなりやりました。深い話も出たので、台本もどんどん変わっていきました。リハーサルでも、3人の10年の関係性についていろいろな話が出たり…。松居監督も、舞台でずっとやってきて、ようやく映画になった題材だったので、台本を手放すのが早かった。全部自分の中にあるから。そうすると、リハーサルを真剣に見てくれるわけです。おかげで、料理をするような感じで、「この隠し味入れた方がいいね」みたいなアイデアをみんなで出し合うことができて、チームが一つになっていった。それも大きかったです。
恐らく、松居さん自身の作品の作り方の原点が舞台だからでしょう。その中で何度も松居さんと組んできた池松くんがリーダー格でいるという3人の関係性も、とてもバランスが良かった。
内容に共感は、やっぱりできませんでした。だけど、一理ある。つまり、女の子がどうとかいうことは別にして、彼らのその思いというのは、どこにあるんだろうと。そういうことを感じたので、逆に自分に問い掛けたんです。「僕は僕自身の思いで生きているのか?どうなんだ?」と。そこで尾崎豊の歌が入ってくる。「僕が僕であるために、勝ち続けなきゃならない」。だから「彼らは勝ち続けられたのか?実は負け犬だったんじゃないのか?」「でも、こうして続けていることで勝ちを見出しているかもしれない…」と。
映画2025年10月30日
『孤狼の血』で知られる柚月裕子の同名小説を映画化。昭和から平成へと続く激動の時代を背景に、謎に包まれた天才棋士・上条桂介(坂口健太郎)の光と闇を描いたヒューマンミステリー『盤上の向日葵』(配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント/松 … 続きを読む
ドラマ2025年10月30日
timeleszの橋本将生が主演するドラマ「ひと夏の共犯者」(テレ東系)が毎週金曜24時12分から放送中だ。本作は“推しのアイドル”片桐澪と夢のような共同生活を送る主人公の大学生・岩井巧巳(橋本)が、澪の中にいるもう1つの人格・眞希に翻弄 … 続きを読む
映画2025年10月30日
呉勝浩の同名ベストセラー小説を映画化したリアルタイムミステリー『爆弾』が10月31日から全国公開される。東京のどこかに“爆発予定の爆弾”が仕掛けられたという前代未聞の事態の中、取調室での攻防と都内各地での爆弾捜索の行方を同時進行で描き出す … 続きを読む
舞台・ミュージカル2025年10月29日
本場ブロードウェイの舞台を中心に数々の傑作を映画館で楽しめる「松竹ブロードウェイシネマ」が、10月31日から「松竹ブロードウェイシネマ 2025秋」と題した連続上映を開催。トニー賞などを受賞した「エニシング・ゴーズ」「インディセント」「タ … 続きを読む
2025年10月28日
YouTubeもNetflixもない時代、人々を夢中にさせた“物語り”の芸があった——。“たまたま”講談界に入った四代目・玉田玉秀斎(たまだ・ぎょくしゅうさい)が、知られざる一門の歴史物語をたどります。 ▼それは漫画本だった 玉秀斎が小 … 続きを読む