「『あの人たちの生きざまが面白かった』と記憶に残ってくれたら」岡本幸江(制作統括)後編【「おんな城主 直虎」インタビュー】

2017年12月17日 / 20:50

-前編のインタビューでおっしゃっていた「テレビドラマは今を生きる人へのメッセージ」というお話からすると、狙い通りという感じでしょうか。

 日曜夜8時の大河という枠をお預かりする以上、子どもさんも含めて幅広く多くの方に愛される枠でなくてはならないと思っています。ただ、直虎という人は決してスーパーヒーローではありません。どんなにつたなくても、どんなに自分のできることが限られていても、自ら汗を流して、より良い時代や社会のために奮闘する主人公です。そういった姿に現役世代が共感してくださったというのは、非常に有り難く、うれしいことでした。

-働く人々という点では、戦国時代の農民の生活が丁寧に描写されていたことも特徴的でした。

 民衆史の研究が発達してきたおかげだと思います。30年前と比べても、新しく分かったことがかなりあります。例えば、ドラマの中にも借金に苦しむ百姓たちが、「徳政令を出してくれ」と訴える場面がありましたが、ただ虐げられるだけではない百姓の姿もその一つです。そういうとき、誰が首謀者か分からないよう、訴状には円形に名前を書いたそうです。そういうディテールが見えると、一生懸命に生きてきた人たちの息遣いみたいなものが感じられて、物語を作る上でも生活感が出るように思います。今まではそういう部分が分からなかったので、描けなかったのかもしれません。

-なるほど。

 あとは私事ですが、実家が林業をやっていたので、木が盗まれる話は、実は祖父の体験談なんです。昔は木材というのは相当お金になったらしく、山から盗伐されたことがあったそうです。森下さんとそんな思い出話をしていたら、龍雲党に盗伐されるという話(第19回)が出てきました(笑)。

-材木が登場した裏には、そんな事情があったのですね。

 小学生の頃には父に連れられて植林をしたこともありますが、木の成長には時間がかかるので、40年たってもまだまだ切れるようにはなりません。自分が生きている間には現金化できず、次の世代、その次の世代になってやっと商品になるという時間がかかるものなんです。そういう息の長いものであるという話も森下さんとしました。それが、小さなお子さんがいらっしゃる彼女自身の「次世代に何を残していくべきか」という問題意識とリンクしたのかもしれません。

-第47回でも「山の木が元に戻るまでに、何十年もかかります故な」という中野直之(矢本悠馬)のせりふがありましたが、物語には岡本さんご自身の思いも強く反映されているのですね。

 そう思います。とはいえ、最も強く反映されているのはやはり題材選びです。戦国時代に生きる人でありながら武将ではない、という一事をもってある程度、方向性は決まりますから。

-お話を伺っていると、このドラマは戦国時代の人々の息吹が感じられる作品として、末永く親しまれていくような気がします。

 そうなるといいですね。歴史的事実を知るためではなく、私たちがいまだに堺の町や町人の姿を描いた「黄金の日日」(78)を思い出すように、「あの人たちの生きざまが面白かったね」という形で記憶に残ってくれたらうれしいです。

(取材・文/井上健一)

柴咲コウ

  • 1
  • 2
 

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

【映画コラム】2月前半の公開映画から『ほどなく、お別れです』『クライム101』『ブゴニア』

映画2026年2月21日

『クライム101』(2月13日公開)  米西海岸線を走るハイウェー101号線上で、数百万ドルの宝石が消える強盗事件が多発。デービス(クリス・ヘムズワース)の4年間にも及ぶ犯行は完璧だったが、犯罪組織からの追跡や警察内部の陰謀、そしてルー刑事 … 続きを読む

【物語りの遺伝子 “忍者”を広めた講談・玉田家ストーリー】(12)道明寺天満宮と歴史の英雄たち ~野見宿禰、白太夫、そして道真~

舞台・ミュージカル2026年2月19日

 YouTubeもNetflixもない時代、人々を夢中にさせた“物語り”の芸があった——。“たまたま”講談界に入った四代目・玉田玉秀斎(たまだ・ぎょくしゅうさい)が、知られざる一門の歴史物語をたどります。     ▼相撲 … 続きを読む

小林聡美、名作ドラマ「岸辺のアルバム」 舞台化は「今の時代も共感できる」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2026年2月19日

 小林聡美が主演する舞台「岸辺のアルバム」が、4月3日から上演される。本作は、数々の名作ドラマを世に残した山田太一が原作・脚本を務め、1977年に放送された連続ドラマを舞台化。一見平和で平凡な中流家庭の崩壊と再生を描く。ドラマでは八千草薫が … 続きを読む

「豊臣兄弟!」第6回「兄弟の絆」 序盤の集大成となった小一郎必死の説得【大河ドラマコラム】

ドラマ2026年2月17日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「豊臣兄弟!」。戦国時代、主人公・豊臣秀長(=小一郎/仲野太賀)が、兄・秀吉(=藤吉郎/池松壮亮)を支え、兄弟で天下統一を成し遂げるまでの軌跡を描く物語は快調に進行中。2月15日に放送された第6回「兄弟の絆」 … 続きを読む

名取裕子「“ぜひ友近さんと”とお願いして」友近「名取さんとコンビでやっていきたい」2時間サスペンスを愛する2人が念願のW主演『テレビショッピングの女王 青池春香の事件チャンネル』【インタビュー】

映画2026年2月16日

-本作を経験して、2時間サスペンスの魅力をどのように感じましたか。 名取 普遍的な人間の心情を描きながらも、泣いて、笑って、手に汗握って、リラックスしながら見られるところが一番の魅力ですよね。「何番目に名前が出る俳優が犯人だ」とか、だいたい … 続きを読む

Willfriends

page top