毎熊克哉「桐島が最後に何で名乗ったのかも観客の皆さんが自由に想像してくれるんじゃないかと思いました」『「桐島です」』【インタビュー】 

2025年7月3日 / 08:00

 1970年代に起こった連続企業爆破事件の指名手配犯で、約半世紀におよぶ逃亡生活の末に病死した桐島聡の人生を、高橋伴明監督が映画化した『「桐島です」』が、7月4日から全国公開される。本作で主人公の桐島聡を演じた毎熊克哉に話を聞いた。

毎熊克哉【ヘアメーク:MARI(SPIELEN)/スタイリスト:カワサキ タカフミ】 (C)エンタメOVO

-桐島聡のことは知っていましたか。

 指名手配ポスターの桐島聡という名前と顔写真は無意識のうちに覚えていました。街中のどこかに貼ってあったのでインプットされていたんでしょうね。それで何かニヤっとしている青年という印象はありました。

-最初にこの映画のオファーがあった時はどんな気持ちでしたか。

 去年の1月に桐島聡を名乗る人物が亡くなったというニュースが流れてから、数カ月後にこの映画の話があったので随分早いなと思いました。僕は1987年生まれなので、事件のことも薄っすらと知っている程度で、後でちゃんと調べないと分かりませんでした。世間的にはテロリストで逃亡犯だった人物で、しかも話題になってから早い時期だったので大丈夫かなと思いましたが、高橋伴明監督から「毎熊でどうだ」というお話があったので、「絶対やりたいです」と二つ返事でお受けしました。

-脚本を読んでみてどんな印象でしたか。

 桐島は逃げ切ったのに、なぜ最後に自分の名前をわざわざ名乗ったのかという謎があるんですけど、それについての解釈の提示は脚本には全くなかったんです。けれども、脚本を読んでいく中で、桐島の持ってる優しさとか真面目さとか、そういうものが伝わってきて、とても哀愁を感じました。だから、みんながテロリストだと思っているこの男を自分が演じるとなった時に、すごくやりがいがありそうだなと思いました。でも、桐島がなぜ東アジア反日武装戦線の「さそり」に入って、その後の爆破事件に関わったのかは分からない。「彼はやらなそうなんだけどな」とずっと思っていましたけど、後半生で素性を明かさなかったことを考えると、どういう人物だったのかというのは結局誰にも分からないんです。だから分からないままだけど自分はどう演じようかと考えました。

-彼が逃亡中に何を考えどういう生活を送っていたのかは想像するしかありませんからね。

 そこが大きいですね。本当に情報が少ないので。写真にしても3、4枚ぐらいしか残っていない。有名な指名手配のポスターに使われていた顔写真と、50代の頃の写真と、あとは動画があったのでそれを頼りにしました。それに加えて、脚本に書かれた想像の世界の部分が大きいです。キーナ(北香那)という女性との話や、アパートの隣の男(甲本雅裕)とのエピソード。そういうフィクションの部分が自分としてはめちゃくちゃ面白くて。だから最後に何で名乗ったのかも観客の皆さんが自由に想像してくれるんじゃないかと思いました。

-確かにイマジネーションというか、こうだったんじゃないか、こうあってほしいとか、いろいろと想像ができますね。

 イマジネーションのきっかけになるというのがこの映画の最大の価値だと思います。この人がどういう人物だったのかを説明するのではなくそれを想像させる。僕もそうですけど、あの時代を知らない人たちがそれを想像したり、今だったら自分たちの武器って何なんだろうかとか、どんな武器なら人を傷つけずに主張を訴えられるのかとか、自分はただ見ているだけでいいのかとか、いろいろと想像をめぐらせることがすごく重要なのかなと思います。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

千賀健永、頭が良くてゲームが上手な弟に「かわいい復讐心はありました」【インタビュー】

ドラマ2025年7月7日

 トリンドル玲奈が主演するドラマ「レプリカ 元妻の復讐」が、7日23時6分からテレ東系で放送がスタートする。本作は原作・タナカトモ氏、作画・ひらいはっち氏による同名漫画を映像化。整形して別人として生きる主人公・伊藤すみれ(トリンドル)が、人 … 続きを読む

安田顕「水上くんの目に“本物”を感じた」水上恒司「安田さんのお芝居に強い影響を受けた」 世界が注目するサスペンスで初共演&ダブル主演「連続ドラマW 怪物」【インタビュー】

ドラマ2025年7月5日

 韓国の百想芸術大賞で作品賞、脚本賞、男性最優秀演技賞の3冠を達成した極上のサスペンス「怪物」。WOWOWが世界で初めてそのリメイクに挑んだ「連続ドラマW 怪物」(全10話)が、7月6日(日)午後10時から放送・配信スタート(第1話・第2話 … 続きを読む

TBS日曜劇場「19番目のカルテ」が7月13日スタート 新米医師・滝野みずき役の小芝風花が作品への思いを語った

ドラマ2025年7月5日

 7月13日(日)にスタートする、松本潤主演の日曜劇場「19番目のカルテ」(TBS 毎週日曜夜9時~9時54分)。原作は富士屋カツヒト氏による連載漫画「19番目のカルテ 徳重晃の問診」 (ゼノンコミックス/コアミックス)。脚本は、「コウノド … 続きを読む

南沙良「人間関係に悩む人たちに寄り添えたら」井樫彩監督「南さんは陽彩役にぴったり」期待の新鋭2人が挑んだ鮮烈な青春映画『愛されなくても別に』【インタビュー】

映画2025年7月4日

 第42 回吉川英治文学新人賞を受賞した武田綾乃の小説を原作にした鮮烈な青春映画『愛されなくても別に』が、7月4日公開となる。浪費家の母(河井青葉)に代わってアルバイトで生活を支えながら、奨学金で大学に通う主人公・宮田陽彩が、過酷な境遇を受 … 続きを読む

紅ゆずる、歌舞伎町の女王役に意欲「女王としてのたたずまいや圧倒的な存在感を作っていけたら」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年7月4日

 2019年に宝塚歌劇団を退団して以降、今も多方面で活躍を続ける紅ゆずる。7月13日から開幕する、ふぉ~ゆ~ meets 梅棒「Only 1,NOT No.1」では初めて全編ノン・バーバル(せりふなし)の作品に挑戦する。  物語の舞台は歌舞 … 続きを読む

Willfriends

page top