【映画コラム】妻や母の存在の大きさを物語る『ぼくたちの家族』と『オー!ファーザー』

2014年5月24日 / 19:03

(C)2013「ぼくたちの家族」製作委員会

 今回はいずれも24日から公開された“家族”を描いた映画を紹介しよう。まずは前作『舟を編む』(13)が大好評を得た石井裕也監督作『ぼくたちの家族』から。

 会社を経営する夫と共に郊外の一軒家に住む妻。社会人となった長男は結婚し、大学生の次男は東京で一人暮らしを満喫している。このごく普通で幸せそうに見える家族にある日突然大きな変化が訪れる。妻に脳腫瘍が発見され、余命1週間が告げられたのだ。夫と息子たちはひたすら戸惑いうろたえる。やがて夫婦にはそれぞれ多額の借金があることも発覚し…。 

 見えっ張りで情けないがどこか憎めない父(長塚京三)、病のために時折童のようになる母(原田美枝子)、かつて引きこもりだったことを気に病む責任感の強い長男(妻夫木聡)、一見マイペースで軽薄な次男(池松壮亮)という役柄で、俳優たちが見事なアンサンブルを見せる。

 このバラバラな家族が妻=母の病をきっかけに“悪あがき”をしながら、やがて団結し再生していくのだが、深刻な状況にもかかわらず4人の姿にはどこか滑稽なところがある。そこが“泣かせ”を強調した難病物などとは一線を画し、家族のリアルな情景として映る。

 30歳の石井監督が、成熟した視点で家族を見詰め、見る者が登場人物の誰かに自分を重ね合わせるであろう普遍性を持った映画に仕上げたことに驚かされる。

 
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