エンターテインメント・ウェブマガジン
ギャンブル漬けで借金まみれのゴウ(沢田研二)は、妻の淑子(宮本信子)と娘の歩(寺島しのぶ)にも見放された駄目おやじ。そんなゴウにも、たった一つ愛してやまないものがあった。それは映画。行きつけの名画座の館主・テラシン(小林稔侍)とゴウは、かつて撮影所で働く仲間だった…。原田マハの小説を山田洋次監督が映画化した『キネマの神様』が8月6日(金)から全国公開される。本作で、若き日のゴウ役の菅田将暉と共に、若き日のテラシンを演じた野田洋次郎が、映画への思いや、山田監督について語った。
これまで僕は、自分では役者だとは思っていなかったのですが、山田組に参加して「そんな緩いことは言っていられない。参加したからには役者であるべきなんだ」と思いましたし、あの現場を経験したのだから、自分でも役者だと言っていいのかなという気持ちになれました。それぐらい、大きな出来事でした。監督を見ていると、物作りにおいて、妥協なんかしていてはいけないんだと思いましたし、最後の1秒まで頭の中で考え抜いて、自分の持てる力の全てを出し尽くす、ということに改めて気付かされました。監督が全力で、役者としての僕と向き合ってくださったのだと思います。
俳優が現場に入る何時間も前から、スタッフとの間で「こういう動きにしよう」「こういう撮り方にしよう」というのが、明確に作られていて、撮影の前夜や、撮影が終わった後も、監督がスタッフと話をされていたということも聞きました。また、監督は、撮影中も思いつくことが多いので、それに合わせて、皆が監督の言うことをどう実現させようかと考えるという、そんな情熱が詰まった現場でした。監督は、リアルを追求される方なので、「人間はこうするとこうなるんじゃないかな」「この人は、もっと口ごもったりするんじゃないかな」「そんなにすらすらと言葉が出てくるのかな」とか、その人間が、その場でどう生きているのかを考えることをとても大事にされる方でした。気付かされることがたくさんありました。
僕自身は、普段は物を作る側にいます。テラシンは「自分には才能はない」と言っていますが、才能がある人を見抜く力は誰よりも持っています。世の中には、そうした2種類の人が必要な気がします。何かを作り出せる人がいるとしたら、そこに気付いてあげられる人がセットで必要なんです。気付いてあげられる人は、作る人と同じぐらい大事な存在だと思います。その両方がいるから、アートやクリエーティブなことが進化してきたのだと思います。僕にも、高校時代に「おまえの歌はすごい」と言ってくれる人がいたから、「あー、そうなのかな」とか、「もう少し頑張ってみようかな」と思えたので、今回は、そういうことを感じました。テラシンのゴウへの確信がなければ、2人の関係性は全く違ったものになったと思います。だから、ゴウの発想する力をテラシンが全身全霊で愛していることを意識して伝えようと思いました。テラシンは、そういう役だったと思います。
みんなそうなんですかね。確かに、芽郁ちゃんはゴウを選ぶと思います。堅実に生きたい人はテラシンの場合もあるのかな。ただ、僕が女性側だとしても、やっぱりゴウを選びますね。
あれも、最初はレコードを掛けながら話をするというシーンだったんですが、撮影の途中で、監督が「野田くん、もし君の気持ちが乗るんだったら、一度ギターを弾きながらやってみるのはどうかね」と、ミュージシャンとしての僕を尊重しながら、おっしゃってくださったので、「分かりました」と。そこから曲を決めたのですが、それがとても難しい曲だったので、撮影が終わると、家に帰ってYouTubeなどを見ながら、2、3時間練習して…。頭がパンクしそうになりました(笑)。それも、せりふをしゃべりながら当然のように弾くのですから、「プロじゃなければ絶対にできないぞ」と。さらに、待ち時間のときに、和みにならないかと思ってBGM的なものを勝手に弾いていたら、監督が「それも弾こう」と(笑)。いいと思ったものはその場で採用していく、試していくという意味では、音楽的で即興性があって楽しかったです。
僕は作品に入ると音楽にしたくなるのですが、今回は監督への感謝の気持ちを伝えられたら、と思いました。それで撮影が終わって、しばらくたってから、亡くなった志村(けん)さんのこともあって、映画と現実の境界が分からなくなるような不思議な時間だったので、それを音楽にして残したいと思いました。そこから、「主題歌としてどうですか」とか、「菅田くんと一緒に歌ってみませんか」という提案があって、あのような形になりました。あの曲はやっぱりテラシンとゴウでなければ完成しない曲だったと思います。この映画の中で生きたあの2人が、一つの曲の中に存在するということに、大きな意味や価値があると思いました。あとは、菅田くんの持っている説得力は声でも変わらずに存在します。やっぱり稀有な存在だと思います。
舞台・ミュージカル2025年10月29日
本場ブロードウェイの舞台を中心に数々の傑作を映画館で楽しめる「松竹ブロードウェイシネマ」が、10月31日から「松竹ブロードウェイシネマ 2025秋」と題した連続上映を開催。トニー賞などを受賞した「エニシング・ゴーズ」「インディセント」「タ … 続きを読む
2025年10月28日
YouTubeもNetflixもない時代、人々を夢中にさせた“物語り”の芸があった——。“たまたま”講談界に入った四代目・玉田玉秀斎(たまだ・ぎょくしゅうさい)が、知られざる一門の歴史物語をたどります。 ▼それは漫画本だった 玉秀斎が小 … 続きを読む
ドラマ2025年10月27日
草なぎ剛主演の月10ドラマ「終幕のロンド -もう二度と、会えないあなたに-」(カンテレ・フジテレビ系/毎週月曜午後10時)。このドラマは、遺品整理人の鳥飼樹(草なぎ剛)が、遺品整理会社の仲間たちと共に、さまざまな事情を抱えた家族に寄り添い … 続きを読む
ドラマ2025年10月27日
勝っても笑わず、負けても怒らない。日曜劇場「ザ・ロイヤルファミリー」で沢村一樹が演じるのは、大手人材派遣会社を率いる敏腕経営者で、日本競馬界有数の馬主の一人、椎名善弘。冷静沈着で、どんな勝負にも動じない男だ。そんな椎名を演じるに当たり、本 … 続きを読む
映画2025年10月24日
10月24日公開の『恋に至る病』は、TikTokで話題になるなどティーンを中心に絶大な支持を集める斜線堂有紀のベストセラー小説を映画化した話題作だ。 内気な男子高校生・宮嶺望と学校中の人気者・寄河景。同じクラスになった2人は距離を縮めて … 続きを読む