「これで当たったら、また紅白の司会ができるかも(笑)」笑福亭鶴瓶(岩倉具視)【「西郷どん」インタビュー】

2018年8月12日 / 20:50

 公武合体を推し進めた実力者でありながら、朝廷を追われた今は粗末な家に蟄居(ちっきょ)し、生活のために夜な夜な自宅で賭場を開く異端の公家・岩倉具視。だが、西郷吉之助(鈴木亮平)や大久保一蔵(瑛太)らに協力し、やがて明治維新の立役者となる。そんな岩倉を怪演するのは、落語家、タレントのほか、俳優としても個性あふれる演技で活躍する笑福亭鶴瓶。仲のよい鈴木、瑛太らとのエピソードも交えて、撮影の舞台裏を面白おかしく語ってくれた。

岩倉具視役の笑福亭鶴瓶

-オファーを受けたときのお気持ちは?

 ある芝居を見に行ったとき、ロビーで中園(ミホ/脚本家)さんに会ったんですよ。バーッと走って来て、急に「岩倉具視、見つけた!」って(笑)。こっちは何にも分からんから「何のことやねん」と聞いたら、亮平と瑛太が出るということで、楽しそうなのでお引き受けしたんですけど。

-岩倉具視については、どんな印象をお持ちでしたか。

 「500円札の人」ぐらいですね。あとは、使節団としてヨーロッパに行ったとか、中学校で習う程度の知識で。

-実際に演じてみた感想は?

 悩みましたよ。ものすごく起伏の激しい人だったから、「こんなんでええの?」と。蟄居生活ということで、いつ朝廷に戻れるのかわからない上に、天子様からも見放されているという思いがあって、すごく荒れている。だけど一方では、吉之助とか大久保とか桂(小五郎/玉山鉄二)とか、いろんな人がやって来るから、外の人間は自分のことを見てくれているんだなという思いもあって…。だから、本当に起伏が激しくて。寺銭稼ぐために賭場も開いているし…。「そんな公家おるのかな?」と思ったけど、事実らしく、「ああ、こういう人なんやな」と思うようになってから、だんだんと面白くなってきました。

-この作品の岩倉の魅力は?

 公家の中では下級で押さえつけられているけど、悔しさもあるんですよね。せりふにもありますけど、「このままでは終わらへんで」という気持ちをずっと持っている。僕もそうですけど、自分がこのままでいいとは思わず、いつも向上する気持ちを持っているところが面白いなと。岩倉は蟄居生活の上に「ヤモリ」と呼ばれたりして、苦労している。そういうところから逃れたいという気持ちが、あれだけの出世につながったんでしょうね。

-第26回が初登場となりましたが、周囲からの反響は?

 何人か「よく似合っている」と言ってくれました。ただその後に、「悪役似合うなぁ」って(笑)。悪役だと思い込んでいるんですよ。だけど、悪役ではないでしょ? 今の日本があるのは、ちょっとは岩倉具視のおかげなのにねぇ…。

-第30回ではばくちのシーンがユニークでした。演じてみた感想は?

 演出の方からは「とにかく、吉之助が負けたら笑ってくれ」と言われたんです。ばくち賭けさせといて、負けたら笑うって…(苦笑)。そこだけ見ると、なんかおかしいじゃないですか。だから、「これでいいのか?」って、ずっと悩んでいました。演出の方が「良かった」と言ってくれたので、お任せしましたけど。その後、大久保と桂がもめて、斬り合いになりかかるわけですけど、そこはほとんどアドリブですよ。台本にも少しは書いてありましたけど、もっとはっきり「おまえら勝手に上がってきて、物騒なもの出すな」、「人の家で何してんねん」と。そうでしょ? 人の家で、そんな勝手に…(笑)。やり過ぎたかなと思いましたけど、OKが出たから、まあええかと。

-鈴木亮平さんと共演した感想は?

 亮平とはちょいちょい飲みに行ったりして、すごく仲いいので、なんか役に立てたらなと思っていたんです。でも、ボロカスに言うんですよ(笑)。あいつは人のせりふまで全部覚えていますからね。俺がちょっと間違ごうたら、すぐに分かるんです。途端に「ちゃんと覚えておいてくださいよ、大河ですよ!」って…。いつも怒られるんですよ。演出の方はOKしているのに。ちょっとぐらいかわいがってくれたらええのにね(笑)。まあ、でも、えらい言い合いしながらですけど、現場はそんなに緊迫もせず、楽しくやっています(笑)。

 
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