「茶々役の竹内結子さんから『もうっ』って言われました」片桐且元(小林隆)【真田丸 インタビュー】

2016年10月9日 / 20:46

 NHKの大河ドラマ「真田丸」で、豊臣秀吉(小日向文世)の死後、徳川家康(内野聖陽)との交渉役になる豊臣家の重臣、片桐且元を演じている小林隆。常に板挟みの立場にあった片桐の苦悩の人生を語る。

 

片桐且元役の小林隆

片桐且元役の小林隆

-且元はどんな人物だと考えていますか。

 最初は坪内逍遥の「桐一葉」で描かれているイメージでした。三谷(幸喜)さんもそう言っていました。でも同時に「めちゃくちゃ情けなくても面白いよな」とも言っていたんです。どうもそっちにかじを切っちゃったようで(笑)。秀吉が石田三成(山本耕史)と共に北近江で見いだした人間なので、できる人ではあると思いますが、何をやっても裏目に出る“人生の間が悪い人”です。

-演じる上で悩みましたか。

 最初はね。史実と作家(三谷)との板挟み。これぞ究極の板挟みです(笑)。以前大阪城でのトークショーのときに、天守閣の館長さんからいきなり「且元を主人公にしてドラマができるぐらいすごい人なんです」って言われて、心の中で「ごめんなさい。僕のせいじゃないんですけど」と謝りました(笑)。

-でも小林さんが演じることで、視聴者は愛すべき人間だと感じられます。

 演じる上で「常に相手をおもんぱかる」ということをテーマにしました。だからどっちの意見も聞いて、よく理解する。話す時も言葉を尽くす。ばかが付くほどの正直者です。

-その実直さは、普段の小林さんにもあるものですか。

 たぶん、たぶんね。そこは三谷さん見越していますね。僕がやれば、たぶんそこまで書いても嫌らしくならないと考えたのだと思います。劇団(三谷主宰の東京サンシャインボーイズ)のころから情けない役をやっていましたから、懐かしい感じがありました。

-そんな且元は、豊臣家と徳川家康との交渉役になりますね。

 関ヶ原で多くの武将がいなくなり、孤軍奮闘します。釣り鐘に記してある文字の中に「徳川をのろい、豊臣の安泰を願う表現がある」という疑惑が浮上する方広寺鐘銘事件では家康に必死に弁明しますし、豊臣秀頼の処遇を巡って高度な政治的交渉もします。

-その過程が豊臣家には且元の裏切りと映ります。

 且元は「すべて殿下(秀吉)のために」という気持ち。殿下に頼まれた秀頼さま、茶々さまをお守りするという思いだったのでしょうが、暗殺される可能性まで出てきますからね。豊臣の足並みがそろわないのであれば、出ていくしかないという気持ちでしょう。茶々役の竹内結子さんには「もうっ」って言われるし、スタジオで会った長澤まさみさんからは「あっ、裏切る人だ」と言われちゃいました(笑)。秀頼のために三成と植えた桃と天守閣を見て「秀頼さまが立派に成長すればもう一回豊臣の世が来るかもしれない」と若君に託して城を去るーンでは、演じていてぐっときました。

-そんな豊臣家に対して家康はついに行動を起こします。

 大坂冬の陣のきっかけはひとえに且元のせいみたいになってきている(笑)。

-且元が大活躍する回があるそうですね。

 39のシーンのうち26のシーンに出てずっとしゃべっています(笑)。大坂の陣になだれ込む大事な回です。

-撮影はいかがですか。

 幼少時の秀頼を演じた子役の子がよく懐いてくれて、撮影が終わるとわーって抱き着いてきてくれるんですよ。それを見た監督は「(秀頼は)且元の子だったのか」って。新しい説が出てきました(笑)。

-ここ数年の三谷作品では重要な役への起用が目立ちます。三谷さんの愛情は感じますか。

 そうですねえ(笑)。今回、ちょっと買いかぶりすぎじゃないかと思うぐらい、難しいシーンを書いてくれるんです。「小林ならできる」と思ってくれているのかなとも思うし、その期待には応えなきゃなって思います。

-歴史好きとお見受けしますが、歴史上の人物で演じたいのは?

 それはないです。役を振られたい方ですね。「こんな役がきた」って喜びたいし、驚きたいですから。


特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

田中真弓「70歳、新人のつもりで頑張っています」憧れだった朝ドラレギュラー出演 連続テレビ小説「虎に翼」【インタビュー】

ドラマ2024年7月26日

 NHKで好評放送中の連続テレビ小説「虎に翼」。新潟地家裁三条支部に赴任し、娘・優未(竹澤咲子)と2人だけの暮らしに苦労する主人公・佐田寅子(伊藤沙莉)を助けるため、かつて花江(森田望智)の家で女中として働き、第7週で故郷の新潟に帰った稲が … 続きを読む

真彩希帆、憧れの「モーツァルト!」でコンスタンツェ役 「この作品を見に来て良かったと感じていただきたい」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2024年7月26日

 「才能が宿るのは肉体なのか?魂なのか?」という深遠なテーマをベースに、その高い音楽性と重層的な作劇で“人間モーツァルト”の35年の生涯に迫る、ミュージカル「モーツァルト!」が、8月19日から帝国劇場にて上演される。2002年の日本初演以来 … 続きを読む

【週末映画コラム】歴史の「if」を描いた2本『もしも徳川家康が総理大臣になったら』/『お隣さんはヒトラー?』

映画2024年7月26日

『もしも徳川家康が総理大臣になったら』(7月26日公開)  新型コロナウィルスがまん延した2020年。首相官邸でクラスターが発生し、総理大臣が急死した。かつてない危機に直面した政府は、最後の手段として、歴史上の偉人たちをAIホログラムで復活 … 続きを読む

鈴木梨央「特撮映画の魅力を実感しました」子役時代から活躍してきた若手俳優が、ファンタジー映画に主演『カミノフデ ~怪獣たちのいる島~』【インタビュー】

映画2024年7月25日

 高校生の時宮朱莉は、謎の男・穂積(斎藤工)と出会い、特殊美術造形家だった亡き祖父・時宮健三(佐野史郎)が制作を望んだ映画『神の筆』の世界に入り込んでしまう。怪獣ヤマタノオロチによって、その世界が危機にひんしていることを知った朱莉は、同級生 … 続きを読む

児玉すみれ、『怪盗グルーのミニオン超変身』で声優初挑戦「アグネスになりきれるのが楽しかった」【インタビュー】

映画2024年7月24日

 怪盗グルーとその相棒ミニオンたちが活躍する「怪盗グルー」シリーズの最新作『怪盗グルーのミニオン超変身』が7月19日から全国公開された。本作は、グルーとその家族に息子が生まれ、新たな町で身分を隠しながら奮闘する姿を描く。日本語吹替版で主人公 … 続きを読む

Willfriends

page top