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この作品をやる上で、自分が「三好」としてできることってなんだろうとも考えましたし、自分自身が家族との向き合い方について、小さい頃からコンプレックスを感じていることもあって、そこを乗り越えられなかったとしても、自分が何かアクションを起こして一つでも変わることができたら、それが全てこの作品の「三好」という役に投影できるかもしれないと思いました。そういった家族との向き合いの場を設けてというところが、一番心掛けたところというよりは、それが必然だったのかなという気持ちはあります。
厳しいというよりも、一つ一つのシーンに対して、細かく分析しながら考えていらっしゃいます。例えば、私は無意識だったのに、「何で今飲んだの」とか「何で今ここで触ったの」と聞かれました。監督の中では、「三好」にとってはそれが大きな意味があるから、みたいな演出をしてくださいました。そういう意味では、一つ一つの会話のコミュニケーションは、すごく多かったと思います。だから、監督が厳しくてしんどかったというよりも、「三好」という役との向き合い方や、自分の本心との向き合い方でいっぱいいっぱいになっていて、精神的にこんなにきつい現場はないというぐらいでした。でも、そうした中で、的確な、自分には見えなかった視点を教えてくれるような演出をずっとしてくださったので、とても学びになりました。
撮影中のことは、何が正解で、どこがうまくいって、どこがうまくいかなかったのかも、あまり覚えていません。作品として完成したものを見て、自分が携わっていないシーンがこういうふうになっていたのかという思いもありましたが、みんなで構築してきたことや、諦めないで探求していたことが間違っていなかったかなと、ちょっと希望が見える安心感みたいなものがありました。
今、私たちが生きている現実の世界とすごくリンクしていて、人の心をどういうふうに再現したり、表現したり、何を思って、何を生きがいにしたらいいのかということについて、本当にスタッフ、キャストの皆さんが魂を込めて作った作品なので、ぜひたくさんの方に見ていただいて、「自分自身って何だろう。自分は何を思っているのか」「自分はこれが大事だったんだ。これを大切にしていこう」みたいなことを見いだせるような映画になったらうれしいなと思います。
(取材・文・写真/田中雄二)
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